健康コラム

no.30
テーマ:「熱中症」
2009年8月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

夏真っ盛り。バカンス気分も高まるこの季節。
毎年ニュースになる1つに「熱中症」があります。

「クラブの合宿中に男子生徒が熱中症で重体」「海辺でバーベキューをしていた会社員が熱中症で倒れた」…。

毎年のことだけに、熱中症の認知度は高いように感じられますが、皆さんは「熱中症」の原因や予防方法をご存知ですか?

熱中症対策を万全にして、暑い夏を乗り切りましょう!!
【1】熱中症?なぜ、起こる??
熱中症という漢字には、読んで字のとおり、「熱に中る」という意味を持っています。

熱中症とは「暑熱環境によって生じる身体の適応障害」の総称です。
例えば、脱水症状も熱中症の症状の1つです。

高温・多湿の環境下で、水分を補給せずに長時間スポーツや作業を続けると、体温が上がり、脱水症状を来たしてしまいます。
さらに、高体温から多臓器不全を併発し、命にかかわる危険性もあります。

熱中症の発症には、ヒトの体温調節の機能が関係しています。
健康な成人であれば、体温は、わきの下で35.5~36.5度。

極度の低温環境になれば、私達は凍死してしまいますし、逆に、高温になれば、うつ熱を来たして死んでしまいます。

そのため、体内で熱が発生すると、その熱を体外へ放散し、寒いときには、体内の熱を逃がさないようにし、体の熱産生と熱放散の熱量のバランスをうまくとって、体温を一定に保ち、体の機能を維持しています。

暑いときには、血管が太くなり、たくさんの血液を流すことによって、皮膚の表面温度を上げます。
そして、汗をかくことによって、皮膚から外に熱をどんどん放散し、体に熱がたまらないように調節しています。

「汗をかく」ことや、体内での「血流量の変化」が、体温調節につながっています。

手を濡らして、うちわであおいでみてください。
ヒヤッと冷たい感じがしますよね。この効果です。

熱放散は、体温よりも気温が低ければ、皮膚から熱が空気中へ移りやすく、体温の上昇を抑えることが容易にできます。

しかし、気温が体温より高くなると、空気中への熱の放散がむずかしくなってしまうのです。

日本特有の真夏日によくあるような、気温が高いだけでなく、湿度が75%以上になると、汗をかいても流れ落ちるばかりで、蒸発しにくくなり、発汗による体温調節が上手くいかなくなってしまうのです。

高温多湿の環境下でも、体は熱放散しようと血液量を増やしますが、さらに、体温が上昇した場合、十分な水分補給がなければ、発汗は促進され、体の水分量が極端に減ってしまいます。

そうすると、体は、心臓や脳が一定の血液量を保持しようとして、血管を収縮させてしまうので、再び、熱放散ができなくなってしまいます。

熱中症は、こうして体温調節する機能がコントロールを失い、体温がグングン上昇してしまうことで起こってくる機能障害です。
【2】熱中症の種類とその対処法
①熱失神 ②熱けいれん ③熱疲労 ④熱射病

熱中症は、ほぼ4種類に分類されます。
その症状の特徴・主な原因とその対処法をご紹介いたします。

①熱失神
体が熱を下げようとして、血管が広がって血圧が低下し、脳への血流量が減少している状態となり、めまい、失神、顔面蒼白、頻脈などを起こします。
対処法 ⇒涼しい場所で、衣服をゆるめ安静にさせます。

②熱けいれん
多量の発汗により塩分と水分が減少し、水だけを補給した場合に、足や腕、腹部といった筋肉にけいれんを起こします。
対処法 ⇒体を冷やし、生理食塩水(0.9%)を補給しましょう。
 
③熱疲労
発汗による脱水により、頭痛、めまい、吐き気、だるさを起こします。
対処法 ⇒塩分と糖分を含んでいる飲み物、例えばスポーツドリンクを補給しましょう。

④熱射病 (重症)
体温調節が出来なくなり、高体温で意識障害(反応が鈍い、意識がもうろうとする)、運動障害(転倒する、ふらつく、突然座り込む)を起こします。
対処法 ⇒意識障害が見られる場合は急いで体を冷やし病院へ。
熱中症は重症になると死に至ることもあり、救急車を手配する必要があります。
【3】日常生活での注意事項
①体調管理をしっかりと、体調の変化を敏感に察知しましょう。

真夏は熱帯夜などで睡眠不足になりやすくなります。
寝不足ではありませんか?冷たいものを摂り過ぎて下痢をしていませんか??

熱帯夜には、エアコンを上手に利用して、十分な睡眠の確保も大切です。
下痢の場合は脱水症状になりやすくなりますので、注意が必要です。

②水分補給はこまめに摂りましょう。

暑い日には、知らず知らずの間にじわじわと汗をかいています。
活動強度に関わらず、こまめに水分を補給しましょう。

乳幼児の場合は、自分から喉の渇きを訴えられず、脱水症状を起こしてしまうこともあります。
また、高齢になるほど、体内に含まれる水分の割合が少なくなり、加えて代謝が落ちるため、発汗による体温調節機能が鈍り、喉の渇きも感じにくくなります。

高齢者の熱中症の半数以上は、自宅などの屋内で起きています。
喉の渇きを感じていなくても、エアコンのない場所では、水分を30分ごとに、こまめに摂りましょう。

ビールなどのアルコール類、カフェインを含むお茶やコーヒーは利尿作用があり、尿量を増やし、体内の水分を排泄を促進してしまうので、水分補給には適しません。
 
③服装に工夫し、暑さを避けましょう。  

服装は通気性の良い素材、吸汗・速乾素材のものを選びましょう。
黒色系は輻射熱を吸収して熱くなってしまいます。
熱を吸収しにくい白系統のものがお勧めです。

外出の際は、日陰を選んで歩いたり、帽子や日傘を利用しましょう。

屋内の暑さを避ける工夫としては、すだれやカーテンを利用して直射日光を防ぎ、風通しを良くしたり、扇風機やエアコンを利用しましょう。 

④暑い時期のスポーツはなるべく涼しい時間帯を選びましょう。

暑さに慣れるまでは、短時間で軽めの運動からはじめましょう。
休憩、水分補給を頻繁に行い、体調不良時、肥満傾向の人や体力のない人は、無理をしない・させないことが大切です。
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
熱中症といえば、「真夏の炎天下に起こるもの」と思っていました。

実は、炎天下ばかりだけでなく、室内で静かに過ごしていても、熱中症は起こることがあります。

実際、高齢者の方が室内で熱中症になって倒れていたというニュースも少なくありません。

エアコンが体を冷やしてしまったり、屋外と室内の温度差から冷房病(※)を引き起こしてしまったりと、よくないイメージがあるのも確かですが、体にわるいから、地球に優しいエコだからと、我慢強く暑い室内で過ごしていたら、かえって、熱中症の危険性を高めてしまっていることもあるのです。

今回ご紹介したような注意事項にも気をつけて、元気に暑い夏を乗り切りましょう!!

※冷房病に関してはこちらをご参照ください。
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