健康コラム

no.76
テーマ:「風疹」
2013年6月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

先月は急に暑くなったり、寒くなったり・・・。
寒暖の差が厳しい毎日でしたね。

さて、今回のテーマは『風疹』です。

昨年から地域的に流行の兆しがありましたが、今年風疹にかかった人は、すでに昨年1年間の3倍を超え、過去5年間で最多となっています。

例年のピークを迎える夏前にかけては特に注意が必要です。
【1】大人にも怖い風疹
風疹は、風疹ウイルスの飛沫(だ液のしぶきなど)によって感染します。

ウイルスに感染してから、体に症状が出るまでの期間はおよそ2~3週間で、発熱や発疹、リンパ節の腫れなどがあらわれます。

風疹と聞くと、「子どもの病気」といったイメージを持たれるかも知れませんが、近年は大人が感染するケースが増えています。

今回の流行は患者の大半が男性で、年代別では20~40代の男性、20代の女性に多いのが特徴です。

一般に子どもの感染では、比較的症状が軽くすむと言われますが、大人では発熱や発疹が長引いたり、関節に強い痛みを伴うなど症状が重くなりやすいようです。

特に、妊娠中(特に妊娠初期)の女性が感染すると、『先天性風疹症候群』によって、目や耳、心臓などに障害を持った赤ちゃんが生まれる可能性があると言われています。

風疹にかかった人のなかには、症状が出ないまま抗体(※)が出来る(不顕性感染)人も15~30%程度いるようです。

知らない間に感染して、他の人や妊婦さんにうつしていた・・・。
なんて事もあるかもしれません。

他人事だと安易に考えるのは禁物です。

※抗体とは人の体で作られ、細菌やウイルスと闘い、体を守ってくれる物質のことです。その働きを免疫と言います。
【2】大流行の原因は?
なぜ今、風疹の感染が拡大しているのでしょうか。

それには風疹の予防接種の変遷が大きく関わっています。

現在は予防接種の効果を高めるために、1歳と小学校就学前の男女は計2回の接種が国から推奨されていますが、かつて、風疹の予防接種は『先天性風疹症候群』の予防として、中学生の女子のみを対象に行われていました。

その後、平成6年の予防接種法の改正によって、集団接種から男女とも個人の任意で予防接種を受ける形に変更されました。

そのため、昭和54年4月2日生まれ~平成2年4月1日生まれの人は接種率が低かったり、1回の接種では抗体が不十分な人も多いのです。

特に34歳以上の男性は集団接種の対象でなかったことから、抗体を持たない人が多いと言われています。

<各年代別の接種状況>
●昭和37年4月2日から昭和54年4月1日生まれの方
中学生の女子のみを対象に集団接種が実施されていたため、この年代の男性は予防接種を受ける機会がありませんでした。

●昭和54年4月2日から昭和62年10月1日生まれの方
集団接種から、任意での接種に変わり、各自で医療機関に出向かないといけなかったため、男女とも接種率が低いことが指摘されています。
 
●昭和62年10月2日から平成2年4月1日生まれの方
男女とも幼児期に予防接種を受ける機会があったはずですが、受けていない人もいるようです。

風疹のより詳しい内容については以下のサイトもご参考ください。
【3】予防接種をした人も注意!
これまで予防接種を一度受けると、抗体の働きが一生続くと考えられていましたが、なかには受けても十分に抗体が作れない人や、接種後に年数が経過することで、抗体が弱くなるケースもあるそうです。

過去に風疹にかかった人や、すでに抗体を持っている人が再度予防接種を受けても差し支えありません。

全国的な大流行を受け、予防接種の費用を助成する自治体も増えてきました。
実施の状況や対象者については、各自治体のホームページや専門機関などでご確認ください。

風疹は、感染した人のくしゃみや咳などによってうつります。

予防接種に加えて、手洗い・うがいを心がけることが大切です。
また、日頃から規則正しい食生活・生活習慣を意識し、免疫も整えておきましょう。

免疫についてはこちらの健康コラムもご参考ください。
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
結核や麻疹などに続き、今回の風疹・・・。

「もう流行らないだろう」と思われていたものが、再び流行することが増えているように思います。

感染症が大流行すると、改めて予防接種の有難さを実感しますね。

今回の風疹の流行は20~40代と、働き盛り・子育て世代に感染が広がっていることで、妊婦さんへの感染も増加しています。

「それでも注射だけはいや!」という人もひょっとしたらいるかもしれません。

けれど、もし自分や自分の家族が妊娠していたら・・・。

妊婦さんは風疹の予防接種を受けることはできません。

生まれてくる赤ちゃんを『先天性風疹症候群』から守るためには、お母さんだけでなく、ご家族や職場の人など、周囲の人も予防に努めることが重要です。

また、「以前に受けたような気がする」と思っていても、実際には風疹の予防接種ではなかった・・・という人も少なくありません。

一度、皆様も予防接種の記録を確認されてはいかがでしょうか。
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