健康コラム

no.86
テーマ:「ロコモティブシンドローム」
2014年4月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

年齢を重ねても背筋を“シャキッ”と伸ばして“スタスタ”と歩く人は若々しく見えますね!

「最近背筋が丸くなってきた」「疲れやすくなった」「膝が痛む」

このように感じたら身体を支える筋肉や骨、関節が弱くなっているのかもしれません。

突然ですがチェックしてみましょう。

□片足で立った状態で靴下が履けない
□家の中でつまずいたり、すべったりする
□階段を上がるのに手すりが必要である 
□力をつかう家事が困難である
□2kg程度の買い物をして持ち帰るのが困難である
□15分くらい続けて歩くことができない
□横断歩道を青信号で渡りきれない

当てはまる項目があった方はロコモティブシンドローム予備軍かも・・・

自分はまだ若いからと安心せずに今から備えていきましょう!
【1】ロコモティブシンドロームとは
運動器が衰え、暮らしの中の自立度が低下している状態を「ロコモティブシンドローム※以下ロコモと略称(運動器症候群)」と言います。

運動器とは、身体の動きに関わる骨・筋肉・関節・神経などの身体を動かすために必要な組織や器官のことです。

骨・筋肉・関節・神経は全て連動して動き、どれか1つでもうまく機能しなくなると体をスムーズに動かすことができません。

運動器は年齢とともに衰え、自分でも気付かないうちにロコモになっている人が多くいるとされています。
以下の項目に心当たりのある方は要注意です。

○運動習慣のない生活
○痩せすぎ・肥満
○体のメンテナンス不足(腰痛・膝痛などの放置)
○便利な生活環境による活動量の低下
○怪我

これらの状態を放置しておくと、知らず知らずのうちに骨粗鬆症、変形性脊椎症といった重篤な症状に移行し、要支援・要介護のリスクも高くなってしまいます。

日本人の平均寿命は平成24年[2012年]の厚生労働省の簡易生命表によると、男性79.94歳、女性86.41歳です。
“平均寿命”と“健康寿命”の違いをご存知ですか?

・平均寿命:0歳児が平均してあと何年生きられるかを示したもの
・健康寿命:健康で自立した日常生活を送ることのできる期間

現在、平均寿命と健康寿命には10年程差があると言われています。
これは、10年程日常生活に支障のある「不健康な期間」を過ごしていると言うことです。

コモ予防の目的は不健康な期間を短くし、“健康寿命”を伸ばすことです。長い人生を最後まで自分の力で生活していくためにも今からロコモを予防していきましょう。

詳しくはこちらの健康コラムをご参照ください。
【2】筋力アップでロコモ予防
骨がもろくなり骨折などが起こると、要支援・要介護のリスクが高くなるためロコモ予防として骨の強化が重要視されていますが、骨や関節などを支える筋肉を鍛え、筋力アップを図ることでもロコモのリスクを減らす効果が期待できます。

[筋肉の役割]
・体を動かす
・骨や関節を支える
・循環器機能、呼吸器機能、消化器機能などの維持

このように筋肉は、身体の中でも重要な働きを担っています。
筋肉が衰えると活動が制限され、運動量も減少します。
さらに関節や骨の負担も増加するため様々な影響が連鎖的に起こります。

・運動不足による肥満
・膝、腰など関節の痛み
・骨粗鬆症
・骨折
・変形性脊椎症など
        
これらの症状の原因には筋肉量・筋力の低下も関わっています。
筋肉量・筋力は20~30代をピークに減少していきますが、トレーニングを行い、適切な栄養補給をすれば80歳でも成果が出ると言われています。

なぜなら筋肉は、新陳代謝(細胞の入れ替わり)が活発なため骨や関節などに比べるとトレーニングの効果が現れやすい組織だからです。

けれども、筋力が落ちてきたなと感じる前に運動習慣を身につけ、今ある筋肉量・筋力を減らさないことが大切です。
【3】ロコモ予防のための運動・食事
ロコモを予防するためにも今ある筋量・筋力を維持・強化していくことが大切です。
そのためにも、適度な運動と食事が欠かせません。

<運動>
大事だとわかっていてもいざやろうと思うとなかなか難しいものです。
下記に示す簡単な運動を日常生活の中に取り入れることでも効果が期待できます。
どれか1つでもできそうなことを今日から始めていきましょう。
そして大切なのはそれを続けることです。

~日常生活に取り入れると良い10項目~
○自転車や徒歩で通勤する
○エレベーターやエスカレーターではなく階段を使う
○掃除や洗濯はきびきびと行う
○家事の合間やテレビを見ながらストレッチをする
○仕事の休憩時間に散歩する
○いつもより遠くのスーパーまで歩いて買い物に行く
○近所の公園や運動施設を利用する
○地域のスポーツイベントに参加する
○休日には家族や友人と外出を楽しむ
○歩幅を広くして、速く歩く

<食事>
筋肉の合成に特に役立つ栄養素をご紹介します。

[たんぱく質]
筋肉の合成には、たんぱく質の摂取が必須です。
→肉・魚・卵・乳製品・大豆製品など

[ビタミンB6]
たんぱく質の代謝をサポートし、筋肉の合成を促進します。
→マグロの赤身・かつお・赤ピーマン・バナナ・キャベツ・納豆・さつまいも・くるみなど

これらの食品を積極的に食事に取り入れていきましょう。

ところで、たんぱく質にも“質の良し悪し”があることをご存知ですか??
“質の良し悪し”は摂取したたんぱく質が、体内で無駄なく効率良く利用されるかどうかで図られます。

たんぱく質はアミノ酸という物質で構成されており、人間の体は20種類のアミノ酸からできています。
中でも体内では合成できず、食品から摂取しなければならないアミノ酸を【必須アミノ酸】と言います。

 <必須アミノ酸9種類>
■メチオニン
■フェニルアラニン
■リジン
■ヒスチジン
■トリプトファン
■ロイシン
■イソロイシン
■バリン
■スレオニン

必須アミノ酸のバランスを『アミノ酸スコア』と言い、これがたんぱく質の“質の良し悪し”を決める指標です。

現在では、体内で効率良く使われる必須アミノ酸のバランスがわかっています。

アミノ酸スコアは100を満点とし、アミノ酸スコアが100に近いものほど質が良いとされています。

[アミノ酸スコアが高い食品(90~100)]
肉や魚、卵、乳製品、大豆製品など

[アミノ酸スコアが低い食品(40~70)]
精白米、薄力粉、そばなど

食事を摂るとき、アミノ酸スコアが低い食品と高い食品を組み合わせることでアミノ酸スコアを上げることができます。
アミノ酸スコアが高いほど、摂取したたんぱく質は体内で効率良く利用されます。

そのためにも、食事は主食・主菜・副菜を揃え、様々な食品をバランス良く組み合わせてとることが大切です。
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
『3日坊主』・・飽きっぽく長続きしないこと、やると決めて立てた目標が3日坊主で終わってしまったという経験が誰にでもあるのではないでしょうか。

継続することはとても難しいですが「何事もコツコツ続けること」これに限ります。

今からおよそ50年後には、2.5人に1人が65歳以上、4人に1人が75歳以上だと言われています。

人生90年の時代ですからできるだけ長く健康でいるためにも細く・長く続けていける自分なりの健康法を見つけていきましょう。
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