健康コラム

no.81
テーマ:「平均寿命と健康寿命」
2013年11月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

朝晩が冷え込み、冬の訪れを感じる今日この頃です。

寒いとついつい外出がおっくうになりがちな時季ですが、北風に負けず元気一杯、健康に過ごしたいものですね。

今月は“健康に年齢を重ね、いつまでも元気に過ごすため”のお話です。
【1】日本人の平均寿命の昔と今
さて、皆さんは日本人の平均寿命をご存知ですか?

日本は世界有数の長寿国。
毎年、平均寿命の調査結果が発表されるたびに日本人の平均寿命が延びたと話題になります。

かつて(明治42~大正2年[1909~1913年])日本人の平均寿命は、男性42.80歳、女性44.30歳でした。

現在は、平成24年[2012年]の厚生労働省の簡易生命表によると、男性79.94歳、女性86.41歳。

約100年間で平均寿命が2倍近くも延びていて、その約7割の延びは、戦後(昭和20年[1945年])以降に集中しています。

日本人の寿命が延びた理由には、乳幼児の死亡率の減少、衛生環境の改善、医療技術の進歩、医療制度の充実、食生活の改善など様々なことが挙げられます。

食生活では、戦前は穀物中心で炭水化物の摂取量の高い食生活から戦後、経済発展とともに一般的に肉類や油脂、果物も食べる食生活に変化しました。

適度に欧米化した食生活が、栄養状態を改善や日本人の平均寿命を延ばした一因ともいわれています。

ところが、その一方で欧米化しすぎた食生活は、日本人の脂質の摂取量を増加させ、米や野菜の摂取量の減少など栄養バランスを乱す、肥満や糖尿病など生活習慣病の増加を招きました。

さらに、高齢になるほど生活習慣病の発症率は高まるため、近年では、これに起因して寝たきりや認知症になる高齢者の増加も深刻になっています。
【2】健康寿命って??
平均寿命まで誕生日を迎えることができれば健康かというと、必ずしもそうとは限りません。

50~60歳代の方でも、病気で入院中・療養中の方、病気の後遺症から1人で生活することが困難な方、中には認知症が出られている方など様々です。

そこで「健康寿命」が鍵となります。

健康寿命とは、平均寿命から日常生活を大きく損ねる病気・けが・要介護など不健康な期間を差し引いた期間のこと、“健康体で自立した生活を送ることができる期間”のことを指します。

平成22年[2010年]の報告によると、健康寿命と平均寿命には、男性は9.13年、女性は12.68年も年数に差があります。

つまり、健康寿命と平均寿命に差があるということは、不健康な期間があることを示しています。

年齢を重ねると体に色々な不具合が出てくるのは仕方のないことですが、たとえ平均寿命が毎年延びていたとしても寝たきりのまま残りの人生を過ごす生活はさびしいものです。

延びた分の寿命も健康な生活を送るには、「健康寿命」も延ばさなければなりません。次項では、健康寿命を延ばす生活習慣についてご紹介します。
【3】健康寿命を延ばそう!!
ポイントは『モグモグ・テクテク・ニコニコ・カミカミ・ドキドキ』です。

■モグモグ
→栄養バランスの良い食事を摂りましょう。
特にミネラルの亜鉛は、免疫機能の強化や活性酸素の除去、記憶力の維持といった働きに関わっていて、老化予防に必要不可欠です。
また、野菜や果物などに多く含まれる“ファイトケミカル”もおすすめです。

■テクテク
→歩くことなど適度な全身運動を心がけましょう。
全身運動は、基礎体力の向上、足腰の強化、肥満・動脈硬化の予防に役立ちます。
四季を感じながらのんびり歩くとストレス解消にもつながります。
※何らかの疾患がある場合には、運動をはじめる前に必ずかかりつけの医師へご確認ください。

■ニコニコ
→よく笑いましょう。
“笑いは副作用の無いクスリ”といわれ、ストレス発散、免疫機能のアップ、自律神経の安定などに働きます。
最近では、笑いはがん予防に関係していることが明らかになってきました。

■カミカミ
→よく噛んでゆっくり食事をとりましょう。
消化吸収を助け、胃腸への負担をやわらげます。
誤嚥(ごえん)を予防し、食べ過ぎ、肥満を防止します。

また、よく噛むことで脳へ流れる血液量が増え、脳を刺激するため、脳の発達や老化予防にもつながります。
さらに、免疫機能を高めることも知られています。

■ドキドキ
→ハリのある生活を送りましょう
映画を見たり、美しい風景を見たり、感動は脳の前頭葉に良い刺激を与えます。
年齢を重ねても、お化粧やおしゃれを楽しみましょう。
身だしなみへの配慮は、生活のハリを保つために大切です。
趣味やボランティアを通じての人と人とのつながり、仲間づくりも良い刺激となります。
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
前項以外にも健康寿命を延ばすポイントとして、『一読、十笑、百吸、千字、万歩』もおすすめです。

これは、幕末から明治にかけての漢学者中島撫山の教えの1つです。
『モグモグ・テクテク・ニコニコ・カミカミ・ドキドキ』と重なる部分もありますが、『一読・十笑・百吸・千字・万歩』は下記の内容を示しています。

一読
→1日に1度は少し堅めの文章を読みましょう。
おすすめは新聞の社説です。
社説くらいなら10分ほどあれば読めますし、苦痛にはならない程度の量だと思います。
読書は知識の修得はもちろんですが、脳の活性化や認知症の予防にもなります。

十笑
→1日に少なくとも10回は大笑いするようにしましょう。
   
百吸
→1日に少なくとも100回は深呼吸しましょう。深呼吸は神経の高ぶりを治め、筋肉の緊張をほぐし、心身を整えてくれます。

千字
→1日に1000字は文字を書きましょう。
日記や手紙がおすすめです。
文章を書くには頭を使わなくてはなりませんし、手は第2の脳といわれ、手先を使う作業は認知症予防に役立ちます。

万歩
→1日に10000歩は歩きましょう。
足は第2の心臓ともいわれ、歩くことで下肢にたまっている血液を心臓に戻りやすくし、血行改善やむくみ予防をサポートします。
さらに、肥満の予防と治療、ストレス解消、骨粗しょう症の予防にも働きます。

寒さに負けず、いつまでも若々しく元気に人生を送るため、さっそく今日からはじめてみませんか?
【コラムの無断転載は禁止させていただいております】