健康コラム

no.154
テーマ:「グルテンフリー」
2019年12月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

摂ることで体に不調をきたす人もいることから、摂らない方がよいとの声が、徐々に高まりつつある“小麦”(もちろん賛否両論はありますが…)。

それに伴い、よく聞くようになった言葉、“グルテンフリー”。
どのような意味かご存知ですか?

今回は、トレンドとなりつつあるグルテンフリーについてお話しします。
【1】“グルテンフリー”ってなに?
欧米を中心に海外ではスタンダードな食事のひとつとして認められてきている“グルテンフリー”。

国内でも聞くようになった“グルテンフリー”ですが、正しい意味を知らず、糖質制限と混同されている方も多いです。

グルテンフリーは、元々は自己免疫疾患である「セリアック病※」の改善を目的に生まれ、グルテンの入ったものを一切食べないようにする食事療法です。

※セリアック病:小麦や大麦、ライ麦に含まれるタンパク質のグルテンに対する遺伝性の不耐症を言います。
セリアック病では、小腸の粘膜に特徴的な変化を起こし、吸収不良が生じます。
簡単に言うと、グルテンによって小腸がダメージを受け、栄養が吸収できなくなる病気です。


ではなぜ、疾患のない人もグルテンフリーを実践するのかというと…

小麦を継続して摂取することで、健康な人でも上記のように小腸の粘膜に変化を起こし、腸の健康を阻害してしまうと言われているからです。
それによって様々な悩み(だるさ・下痢・胃の調子が悪い・頭がすっきりしないなど)が出てきます。

グルテンフリーにすることで、それらの悩みが解決すると言われているので、近年日本でも少しずつではありますが、広まりつつあります。
【2】すべての小麦製品がだめ?
グルテンが入っているものを除ける食事法なので、基本的に小麦が入っているものはすべてだめです。

すぐにわかるものは除けやすいですが、表示をきちんと確認しないとわからないものも多いです。


★目で見てわかる小麦製品
・麺類(うどん・パスタ・そうめん・そば※ など)
※十割そばはそば粉100%ですが、打ち粉に小麦を使っていたり、茹でる際に他のそば(二八そばなど)と共通の鍋でゆがいていたりすることがあるので注意しましょう。

・お菓子類(ケーキ・クッキー・まんじゅうなど)
 
・パンやピザ 

・揚げ物(天ぷら・フライなど)

・粉もの(お好み焼き・たこ焼きなど)

 
★えっ!これにも?!見た目ではわからない小麦製品
・調味料(醤油・穀物酢)

・飲み物(ビール・麦茶※)
※麦茶までは除ける必要はないとの考えもあります。

・カレーやシチューのルゥ


その他、ギョウザの皮やワンタン、麩などは小麦粉から出来ていますが、見逃しやすいのでご注意を!
【3】今話題のグルテンフリー食材とは?
グルテンフリー志向の高まりで、グルテンの入っていないお菓子も作られています。
その中で一番多いのが米粉を使ったお菓子。
しかし、米粉なので、もちっと重たくなってしまうことや、翌日にはパサついて硬くなってしまうといった欠点があります。

あくまで個人の感想ですが、時間が経つとお世辞にもおいしいとは言えません…。


最近、そんな米粉の欠点を補う新たなグルテンフリー食材として、古来穀物の『ソルガムキビ』が注目されています。

ソルガムキビが注目される理由は、様々なグルテンフリー食材がある中で、製粉すると一番小麦粉に近いと言われているためです。
さらに、以下のような小麦粉よりも優れたところもあります。

●エネルギーは低いがタンパク質は多い(小麦や米と比較すると)
●難消化性でんぷんや食物繊維が豊富
●鉄やカルシウム、マグネシウムがまんべんなく含まれる
●給油率が6割なので油を吸いにくく、サクサクした食感の料理が作れる


日本では“きび”というと、きびだんごしか思いつかないという人も多いですが、最近は、少しずつグルテンフリーのパンやお菓子にソルガムキビを使っているものも出てきています。

管理栄養士の独り言でも触れますが、スポーツ栄養学会に行った際に、ソルガムキビを使ったお弁当をいただきました。
ごはんに混ぜて炊いたり、粉にしてムニエルの衣に使われていたり、粒のまま具材と混ぜて和え物にしていたり…
他の食材の邪魔をすることもなく、また、クセもなくおいしかったです。

なかでも驚いたのが、お弁当と一緒にいただいたソルガムキビと米粉を使ったクッキー!!

お世辞抜きで初めてグルテンフリーのお菓子をおいしいと思いました。

まだまだ全国的に少ないですが、ソルガムキビを使ったお菓子やパンを作っているお店もありますので、興味がある方は調べて、行ってみてください。

きびなど雑穀について詳しく知りたい方はこちら!
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
ここまでグルテンフリーについてお話ししましたが、私は、「全員が絶対グルテンフリーにすべき!!」とは思っていません。

グルテンフリーを知るきっかけになったのは、テニスのジョコビッチ選手の本ですが、彼も絶対その食事にすべきとまでは書いていなかったかと思います(うろ覚えですが…)。

今夏に参加したスポーツ栄養学会でも、グルテンフリーについて取り上げられていて、スポーツを行っている人(運動不足解消レベルからアスリートまで含む)の4割以上がグルテンフリーを実践しているというアンケート結果もありました。

また、ロンドンオリンピック、リオデジャネイロオリンピックともに、
もっとグルテンフリーの食事を充実させてもらえるとありがたかったとの声もあったようです。

研究や論文となっているものはほぼなく、あくまで個人の体感なので、今後の研究次第で、どのようになっていくかわからない部分はありますが、世の中の流れとしては、グルテンフリーにしている人が増えてきているのは事実ですし、来夏には東京オリンピックも控えているので、グルテンフリー熱はさらに高まると予想されます。

その食事法の良し悪しにかかわらず、グルテンフリーの食事を望んでいる人は多いので、管理栄養士としては、良い点・悪い点も含め、どちらからの立場でも話せるように正しい知識を持つようにはしたいと日々考えています。

この健康コラムを機に、私自身も軽いグルテンフリー(と呼んでいいレベルかもわかりませんが…)に取り組んでいて、パンや麺類、お菓子などは極力食べないようにしています。
調味料などはそのまま使っています。

グルテンフリーの効果かプラセボ効果か、体が楽な気も…笑
よろしければみなさんもひとまずお試しください!!
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