健康コラム

no.139
テーマ:「続・食育」
2018年9月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

3ヶ月前、食育月間ということで、食育についてお話ししました。

その際にもお伝えしていましたが、行政の食育セミナーに参加してきました。

普段、話す立場として様々な場所に行く機会があり、行く場所にもよりますが、初歩の初歩からお話しした方が、理解を得やすいと感じることもあります。

今回、聞く立場として参加することで、どのような内容がみなさんに理解されやすいかを学びました。

そのような体験(話す立場・聞く立場)をふまえ、今回は、私が考える本当に基本的なところの“食育”をしようと思います。
(知っている話ばかりになった場合は申し訳ございません…)
【1】私たちの体って何から出来ている?
私たちの体って何から出来ているのでしょうか。

筋肉や水分(血液)、骨…など様々な答えが出るかと思います。

すべて正解ですが、私たちの体の構成要素の最小単位は「細胞」です。

私たちの体はすべて細胞から出来ています。
(約60~100兆個もの細胞から出来ていると言われています。)

こどもはもちろん、大人になっても一部を除いて、細胞は毎日少しずつ生まれ変わっています。

細胞の生まれ変わる日数をみてみると…

肌:約1ヶ月 骨:約5ヶ月

例えば骨をみてみると、骨の細胞は約5か月で生まれ変わります。
しかし、すべての細胞が一斉に生まれ変わる訳ではないので、骨自体は、およそ3~5年ですべて入れ替わると言われています。
(3~5年前の骨は、体の中にはいません!!)

大人になると見た目はほぼ変わりませんが、体内は日々生まれ変わっています。

この細胞のもとになるものは、口から入れるものだけです。
(当たり前ではありますが…)

では、毎日食事に気を使い、バランスよく食べている人と、気にせず好きなものばかり(お菓子や脂っこいもの、炭酸ジュースなど・・・)食べている人のどちらがよいでしょうか。

言うまでもなく、バランスよく食べる人の方がよいとおわかりですよね。

私たち自身の体のために、普段の食事を適当に食べるのではなく、バランスよく食べることの大切さを感じていただければと思います。

誰のためでもなく、自分のために!です。
【2】1つの栄養素をたくさん摂り過ぎても…
日々私たちは様々な食材から栄養素を摂取しています。
たくさん量を食べているから安心ではなく、栄養バランスに気をつけて食べる必要があるということは、先ほどの話でわかっていただけたかと思います。

さて、栄養素の概念をお話しする時には、「桶の図」を用いてお話しします。
図を見るとわかっていただきやすいので、よろしければ「ドベネックの桶」で検索してみてください。

ドベネックの桶の概念を言葉で説明すると、桶は何枚もの板を合わせて作られていますが、桶に水をためる場合、どんなにたくさん水を入れても桶の板の長さがそれぞれ違う場合、一番短い板のところまでしか水はたまらず、それ以上はあふれてしまうというものです。

栄養の話に置き換えると、1枚ずつの板が「各栄養素」です。
他の板を長くしても(決まった栄養素だけをたくさん摂っても)、1枚短い板(必要量よりも足りていない栄養素)があるだけで、そこまでしか水がたまらず、それ以上は流れ出てしまう(体内でそこまでしか利用できない)ので、長い板(たくさん摂った栄養素)が無駄になってしまいます。

※実際には、栄養素によっては〇対〇の割合で摂らないといけないなどもありますが、基本的な考えは、このドベネックの桶で説明できます。

そのようなところからも好きなものだけ摂るのではなく、バランスよく食事を摂る大切さを感じていただければと思います。
【3】主食・主菜・副菜とまごはやさしい
先ほどから何度も出てくる「バランス」。
バランスのよい食事とは一体どのようなものでしょうか。

また、バランスよく食べることは大切だとわかっていても、何を食べればよいのかわからないという方もおられるかもしれません。

説明すると…
◎主食…ごはんやパン、麺類など(主にエネルギーのもとになる食品)
(炭水化物)

◎主菜…魚や肉、卵や豆腐(主に体をつくるもとになる食品)
(たんぱく質)

◎副菜…野菜やきのこ、いもや海藻類(主に体の調子を整えるもとになる食品)
(ビタミン・ミネラル)

となります。

普段の食事を振り返ってみていかがでしたでしょうか。
主食・主菜・副菜はそろっていましたか。

これらを中心に、汁物(たんぱく質・ミネラルなど)、果物(ビタミンC・炭水化物)、乳製品(カルシウム)をプラスすることで、バランスのよい食事に近づきます。

ただし、いくら主食・主菜・副菜がそろっていても、毎回同じメニューではいけません。

なぜかというと、1つの食材からは決まった栄養素しか摂ることが出来ないためです。
(世間でいくらよい食材と言われていても、1つの食材ですべての栄養素を満たすことは出来ません。)

そのような理由から、様々な食材を使うことが大切です。

そこで出てくるのが「ま・ご・は(わ)・や・さ・し・い」です。

これは医学博士の吉村裕之先生が提唱されているバランスのよい食事の覚え方です。

目安は1日ですべてを摂ることと言われていますが、いきなりハードルを高くすると、嫌になる方もいらっしゃるので、まずは自分の出来る範囲(3日や1週間)ですべての食材を食べるところからはじめてみましょう。

「ま」豆類(豆腐、納豆、味噌など)

「ご」ごま

「は」わかめ(わかめ、昆布、もずくなどの海藻類)

「や」野菜

「さ」魚(魚を食べるとっかかりであれば、ちりめんじゃこなどでも)

「し」しいたけ(えのき、しめじ、まいたけなどのきのこ類)

「い」いも類(じゃがいも、さつまいも、里芋など)

※度々聞かれることとして、量はどれくらい摂ればいい?があります。
食材により異なりますし、またすべてを〇g食べましょうと言われるとみなさん続けるのが嫌になってしまいますので、まずは摂ったか摂っていないかで考えるようにしましょう。

卵や肉類のメニューが多いご家庭も昔に比べて多くなっていると思いますので、普段の食事に「まごはやさしい」を加えて、バランスのよい食事を目指しましょう。
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
冒頭でも少し触れましたが、先日、行政の食育セミナーに参加してきました。

「健康的な体重を維持するには」という講話と「初夏の旬野菜を使った献立」の調理実習の2本立てでした。

参加者は20代から80代まで幅広い年代の方がそろっていました。
(20代は私だけで少しさみしかったですが…)
今回は女性だけでしたが、男性が参加されることもあるようです。

初めに講話を聞き、その後調理する献立の説明を受け、適当にグループに分かれ、実際に調理をしました。

講話は堅苦しい話ではなく、食事や間食の摂り方、運動などを通して健康的な体重を維持するにはどうすればよいかを簡単に説明されていました。

◎食事について
各食材の量を〇gと数字で話すだけでなく、手のひらにのる量(片手・両手分など)で表現されており、聞いていてわかりやすかったです。

◎運動について
あそこの〇〇公園で歩いてみるとか・・・など、その地域のことを織り交ぜて話されていたので、聞く立場の人が実際に行動に移しやすいと感じました。

内容はもちろんですが、「話し方」も自分が話す際の参考にしようと思いました。

調理実習では、手を動かしながらも、様々な年齢の方と、料理や食材のこと、自分たち自身のことなどをそれぞれが話し、先生から学ぶだけでなく、一緒に料理をしながら、お互いになにげない食育をたくさんしてきました。
(この前もお話ししましたが、やはりなにげない食育が一番意味のあるものではないかと思います。)

ご年配の方も和気あいあいと楽しそうにされていたのがとても印象的で、知らないことを知れてよかったとおっしゃっていました。

いくつになっても勉強とはよく言いますが、毎日食欲を満たすために適当に食べるだけではなく、“食”についても日々勉強することが大切だと改めて感じる機会になりました。

私の話を聞いてくださった方も、知らないことを知れてよかったと笑顔になっていただくことが出来るように日々頑張ろうと思います。
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