健康コラム

no.136
テーマ:「食育」
2018年6月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

食育基本法が2005(平成17)年6月に制定されてから、早13年。

“食育”と聞いても、「なにそれ?」「聞いたことない…」
という方は、少なくなったことでしょう。

さて、6月は「食育月間」です。

食育基本法が6月に制定されたことなどにより、6月に決まったそうです。

今回は「食育」についてお話ししたいと思います。
【1】食育とは?
「食育」という言葉を聞く機会も多いと思いますが、そもそも「食育」とはどのような意味でしょうか。

食育基本法の中には、以下のような記載があります。

『子どもたちが豊かな人間性をはぐくみ、生きる力を身に付けていくためには、何よりも「食」が重要である。
今、改めて、食育を生きる上での基本であって、知育、徳育及び体育の基礎となるべきものと位置付けるとともに、様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てる食育を推進することが求められている。

もとより、食育はあらゆる世代の国民に必要なものであるが、子どもたちに対する食育は、心身の成長及び人格の形成に大きな影響を及ぼし、生涯にわたって健全な心と身体を培い豊かな人間性をはぐくんでいく基礎となるものである。』


簡単に言うと、「食育」とは、ただ食欲を満たすために適当に食べるのではなく、1人1人が食について正しい考えを持ち、行動するための知識を得ること、また、そのような判断が出来る人を育てるということでしょうか。


さて、この食育という言葉、実は、食育基本法とともに出来た新語ではなく、昔からあった言葉です。ご存知でしたか。

1898(明治31)年、石塚左玄(いしづかさげん)が、『通俗食物養生法』の中で、初めて食育という言葉を用いて食の大切さを謳っています。

また、1903(明治36)年には、村井弦斎(むらいげんさい)が『食道楽』という本を出版しています。
この中にも食育が登場します。

この時代には、食に関する知識を得る大切さを教えることが子育てやしつけの基本にあったと言われています。

その後、時代の流れの中で、第二次世界大戦から高度経済成長期、バブル経済期などを経るまでは、食について学ぶことが重要視されなくなっていました。

しかし、1990年代後半から、再び「食育」が注目されてきました。

その背景としては、家庭での食事形態の変化により、子どもに正しい食が提供されなくなりつつあったこと、食の欧米化による影響もあるのか肥満や糖尿病が増えてきたことなどが挙げられます。

また、海外からのスローフード(※1)やロハス(※2)などの新たな考えが入ってきたことも注目される要因のひとつとなっています。


このように再度注目が集まる「食育」。
食育の概念を知ったところで、正しい食事についてみていきましょう。


※1 ファストフードの健康へのマイナスの影響や食文化・食生活を見直すために作られた言葉。
食生活や食文化を本来の自然なものへ戻していこうという運動で、イタリアで1980年代後半に始まった。現在160か国以上で行われている。
  
※2 Lifestyles of Health and Sustainability の頭文字をとった略語 LOHAS
健康と環境、持続可能な社会生活を心がける生活スタイルを言う。
【2】正しい食事を再確認しよう
正しい食事といっても、最近は“カロリー制限食”“糖質制限食”など様々な食事法があります。

子どもは様々な食材をバランスよく食べることが大切ですが、医学は日進月歩であり、今の段階では、特に大人には一概にどのような食事が正しいとは言えないところがあります。
しかしながら、あくまで正しい食事の基本は、暴飲暴食を避け、様々な食材をバランスよく摂っていただくことだと思います。

食事の環境の面で言うと、最近では、正しい食器の位置、お箸の向きすら分からない人が多くいて、ビックリした経験がありますので、ご存知かと思いますが、正しい配膳についてお話しします。


~正しい配膳について~
◎向かって左側にごはん茶碗、右側に汁物の器

◎右奥(汁物の奥)にメインとなるおかず(主菜)を置く

◎左奥(ごはんの奥)にメインでない野菜やきのこなどのおかず(副菜)
 (もう1つ副菜があればごはんと汁物、主菜と副菜のそれぞれの間に置く)

◎箸は太い方が右側で先の細い方を左側にして置く

イメージはサイコロの4の目のような配膳の仕方です。
副菜が2つある場合は、2つ目の副菜を中央に配膳するので、サイコロの5の目のようなイメージです。
※左利きの方だと箸の置く向きが反対です。

もちろん、いつもこのようにして食べておられますよね。

外食に行って出てきた食器の配置がおかしかったこともありましたので、そのようなところからの食育も必要なのではないかと思いました。


食事法に関しては様々なことが言われており、離乳期の食育がその後の好ましい食べ方に影響するとの研究結果もあるようです。

また、子どもの頃に味付けの濃い市販品を食べ過ぎると、それに慣れてしまい、細かい味の違いが分からなくなるとも言われています。

そのようなことをふまえ、子どもには、素材の味を活かした食事、
上記の正しい食事の仕方などを教えることが大切です。
そのためには、大人の私たちが正しい食育を受けることが必要です。
【3】食育を学ぶ場って?
さて、子どもへの食育は家庭だけでなく、幼稚園や小学校などもありますが、大人が学ぶことが出来る場はどこにあるのでしょうか。

季節の料理や行事食などは、料理教室等でも学ぶことは出来ますが、費用の面でちょっと…という方もおられるかもしれません。

そのような方は一度お住まいの自治体の案内をご確認ください。

自治体主催のテーマ別の食育講座や、食育を推進する立場になる食育指導員の養成講座などもあるかと思います。

料金はかかりますが、料理教室に通うほどはかかりません。

親子で参加のものだけでなく、料理初心者の方でも参加できるものもあります。

また、食育指導員は、養成講座を経た後、実際に就学前の子どもや小学生、大人に食育をするようです(調べたのは京都市ですが同様の取り組みは各自治体に存在)。

食育について興味を持たれた方は、第一歩としてお住まいの自治体のホームページをご確認いただくか、自治体にお問い合わせください。

私も自治体の取り組みについて詳しいことは知らなかったので、この機会に調べてみました。
参加できるものがあったので、実際に今度体験してきます。
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
生まれて早20数年。
小さい頃から“食育”という言葉で教えられたことはありませんでしたが、母は、いろんな料理やお菓子を作ってくれていました。
その影響か、私も料理やお菓子作りが好きで、今こうして、食に関する仕事をしています。

また、「嫌いなものでも食べないといけない」「お箸はちゃんと持ちなさい」など当たり前のことをきちんと教えてくれていたことで、何でも好き嫌いなく食べ、お箸の持ち方を褒められる大人に育ちました。

最近の食育は、行政主導で行われたり、企業のPR活動の一環で行われることが多くなったように感じられます。

もちろんそれ自体は悪いことではありませんし、食に触れる場が多くなるのは良いことですが、そこに任せきりにするのではなく、それぞれの家庭で、素材の味を教えること、季節ごとやその土地ならではの料理の話をするといった何気ない食育も大切ではないかなと思います。

例えば・・・

●食事をしながら、その日の食事の食材当てクイズをする
●季節ごとの食事を楽しむ(おせち料理やひなまつり、七夕など)
●一緒にお菓子作りや料理を作る
【いちから作るのが大変であれば、市販のケーキ(パンコーナーにあるロールケーキでも可)に生クリームを塗ってブッシュドノエルをつくるなど】など

上記は一例ですが、出来ることはたくさんあります。
(働く女性が増えているので、大変なこともあるとは思いますが…)

また、どれも子どもと一緒に行うことで、そこから様々な食の会話が広がるかと思います。

私自身は母にいろいろしてもらっていたので、その時は何も思っていませんでしたが、大人になって褒められることが多く嬉しく思っています。
(なかでも巻き寿司を巻けること、巻き方がきれいと褒められたのが一番嬉しかったです。)

そのため、将来もし自分が母になった時には、食について様々なことを日常生活の中から教えていこうと考えています。

みなさんも今一度“食”について日々の生活を振り返っていただく機会になればと思います。
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