健康コラム

no.124
テーマ:「和菓子」
2017年6月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

安定した気候の春が過ぎ去り、まもなく、多くの地域で梅雨がやって来ます…。

梅雨の時期は、むしむしとした暑さを感じますよね。
そんな暑い時期には、水ようかんなどの冷たい和菓子はいかがでしょうか。

実は、6月には“和菓子の日”があります。平安時代、848(承和15・嘉祥元)年の6月16日に仁明天皇(にんみょうてんのう)が、御神託に基づき、「16」にちなんだお菓子を神前に供え、疫病を祓い、健康招福を祈願し、元号をあらためました。

その後、厄除け・健康招福をかねて、6月16日に和菓子を食べる文化が長き(明治時代頃まで)にわたり続いてきました。

そのような歴史を踏まえ、6月16日に“和菓子の日”が制定されました。

今回は、“和菓子の日”にちなみ、「和菓子」についてお話しします。
【1】和菓子とは ~カステラって和菓子?洋菓子?~
さて「カステラ」は和菓子でしょうか、洋菓子でしょうか。
そもそも和菓子とは何でしょうか。
聞かれると分かるようで、分からないですよね。

現在、日本のお菓子は、多種多様で何万種類もあると言われています。

お菓子は、日本に伝わってきた時代などから、「和菓子」「洋菓子」に分類されます。
日本古来のものや、概ね江戸時代までに日本に入ってきたものを「和菓子」、それ以降、日本に入ってきたものを「洋菓子」と区別するようです。

また和菓子は、水分含有量の違いから、「生菓子」「半生菓子」「干菓子」、さらには、原料や製造方法の違いによっても細かく分類されています。

●生菓子
餅物(おはぎ・柏餅など)、蒸し物(じょうよまんじゅう・かるかんなど)、焼き物(どら焼き・カステラなど)、揚げ物(あんドーナツなど)、流し物(ようかん・みずようかんなど)、練り物(ねりきり、ぎゅうひなど)


●半生菓子
あん物、岡物(最中など)、焼き物、流し物(ようかんなど)、練り物(ぎゅうひなど)
 

●干菓子
打ち物(落雁など)、焼き物(ボーロなど)、揚げ物(かりんとうなど)など


餅など材料による分類もあれば、焼き物など製法による分類もあります。
また、同じ焼き物でも分類が分かれるなど、多岐にわたっていることが分かります。

今回ご紹介した和菓子は、よく知られているものだけですので、気になられた方は、他の和菓子も調べてみてください。

ちなみに、カステラは、織田信長や豊臣秀吉などが生きていた時代(安土桃山時代)に日本に伝来したお菓子ですので、洋風な感じもしますが、「和菓子」と分類されています。
【2】“和菓子はたくさん食べても太らない?”
世間で言われる“和菓子はたくさん食べても太らない”
さて、本当でしょうか?

和菓子は油脂を使うことはあまりなく、カロリーも洋菓子に比べて低いため、太らないと思い、一度にたくさん食べる方もいらっしゃるかと思います。

もちろん、間違いではない部分もあります。
和菓子は、脂肪分が非常に少ないため、洋菓子に比べて低カロリーです。
また、小豆には便秘予防に関わる食物繊維や抗酸化作用のあるポリフェノールも多く含まれています。
このようなことから、“和菓子はたくさん食べても太らない”という言葉が生まれたのでしょう。

しかし、血糖値の観点からみると、少し異なります。
和菓子は、たんぱく質(乳製品など)や脂質(油脂類など)が少なく、食物繊維もものにより含まれますが、糖質が主となっています。
糖質(主に砂糖)が多いため、和菓子は、血糖値を急激に大きく上昇させてしまい、それに伴い、インスリン(※)が大量に分泌されます。
※血糖値を下げるホルモン

そのため、血糖値の下降がはやく、空腹感が出やすくなるので、満足感を得るために、次の食事をいつも以上に多く食べてしまうことにつながります。

さらに、インスリンには、過剰な血糖を脂肪に変えて、蓄える働きがあるので、体に脂肪がつきやすくなってしまいます。

血糖値の急激な上昇を防ぎ、緩やかな上昇、下降をする方が、空腹感が出にくくなり、また、インスリンも過剰に分泌されないため、血糖値の観点からみると、食事と食事の間に何か間食をした方がよいとは考えられます。
 
このことから「和菓子」「洋菓子」を問わず、食事の間に適度な間食をすることで、ドカ食いを防ぎ、1日トータルの食事量が減り、太りにくくなるとは考えられますが、“和菓子はたくさん食べても太らない”とは言うことができないように思います。

和菓子はたくさん食べてもよいものだと思い、和菓子を食べ過ぎたり、逆に、我慢のしすぎでストレスを感じ、発散するために別のものをドカ食いをすると肥満に繋がりますので、我慢しすぎず、日々の楽しみや気分転換程度に少量食べることをおすすめします。

※現在、糖尿病などで治療中・療養中の方は、かかりつけの医師など専門職にもご相談の上、間食を摂るようにしてください。

※血糖・糖質に関することについてはこちらもご参照ください。
【3】和菓子「水無月」
日本クリニックの本社がある京都では、夏越の祓(※)のひとつとして、6月30日を中心に、6月に「水無月」という和菓子を食べる風習があります。

※行事自体は、伝統行事であり、全国各地の神社で行われています。
6月の晦日(みそか)に半年間の罪やけがれを祓い、その後の半年も無病息災でいられるように祈願するものです。

「水無月」の形は、氷をかたどっています。
形の由来は下記の通りです。

宮中では旧暦6月1日に「氷の節句」が行われていました。
冬にでき、氷室(ひむろ※)に保存しておいた氷を口にし、夏を健康に過ごせるよう祈ったそうです。
庶民は、その貴重な氷を食べることが出来なかったため、氷をかたどった三角形の外郎(ういろう)に厄除けの小豆をのせた和菓子が作られました。

※天然の氷を夏まで保存しておくためのむろ。山かげや地中に穴をあけ、草などで覆ったもの。

現在でも、京都ではとてもポピュラーなものであり、6月になると、多くのスーパーや和菓子屋さんに「水無月」が並びます。

その土地ならではのものですので、この時期に京都にお越しの際は、ぜひともご賞味ください。
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
先ほどお話しした「水無月」ですが、私は京都にずっと住んでいるため、他の地域にはないということを知らずに20数年過ごしてきました。

以前、6月にコンビニに行った際に、「水無月」とほぼ同じ製品が「ういろう」と書いて売っていました。
その時は少し疑問に思いましたが、すぐに忘れてしまいました。
その後、たまたま他県の友達(大阪や兵庫)と和菓子の話をする機会があり、「水無月」が地域限定のものだったと知りました。

京都という土地柄もあり、古いものを大切に思う文化があるためか、わが家では、毎年「水無月」を食べることが定番となっています。

「水無月」からは、少し離れますが、最近は、伝統行事や行事食について知らない子が多くなっていると聞きます。
例えば、おせち料理を知らない子や、おはぎはいつ食べるものかなど…。

日本古来の行事だけでなく、全国各地に「水無月」のようなその土地ならではの食や文化があると思うので、小さな子にもこのようなことを伝えることが出来ればなぁ…と日々考えています。

このメルマガを読んで、和菓子について詳しくなるだけでなく、みなさんのお住まいの土地ならではの伝統的な食や文化について今一度、考えていただく機会になればうれしいです。
その際、食べ過ぎにはご注意くださいね。
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