健康コラム

no.71
テーマ:「血糖」
2013年1月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

新年のご挨拶を申しあげます。
2013年も、月刊ニックリ健康コラムをよろしくお願いいたします。

さて、クリスマスや忘年会、お正月、新年会などとイベントが続き、外食や飲酒の機会も多くなる時季ですね。

思いっきり食べて飲んだその後には、体重増加や各検査数値上昇の心配が待っている・・・という人も多いかもしれません。

冬は、体重だけでなく、血糖やコレステロール、中性脂肪、血圧などのコントロールが難しくなる季節としても知られています。

今回は、「血糖」に注目してお話します。
【1】検査項目のアレコレ
私たちが食事からとった糖質は、腸から吸収され、ブドウ糖(グルコース)として血液中に入ります。

この血液中のブドウ糖のことを「血糖」と呼び、その濃度を表す数値が「血糖値」です。

血糖値は、正常な人の場合でも1日の中で変動があり、特に食事の影響を大きく受けています。

食事をとって血糖値が上がれば、すい臓からインスリンというホルモンを分泌させて血糖値を下げ、逆に血糖値が下がれば、グルカゴンなどのホルモンが働いて血糖値を上げようとします。

このように、私たちの体には、血糖値を一定に保とうとする働きが備わっていますが、インスリンが不足したり、正常に働かなくなったりすると、血糖値の高い状態が続いてしまいます。

これが、糖尿病のサインです。

そしてもう1つ、血糖に関係する検査で重要な項目があります。
「HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)」です。

HbA1cとは、赤血球の中にあるヘモグロビンと血液中のブドウ糖が結合したもので、血糖値が高くなると、HbA1cの数値も高くなります。

1度結合したヘモグロビンとブドウ糖は、赤血球の寿命である約120日間はそのままの状態で存在します。

血糖値が食事や運動などによって短時間で変動するのに対し、HbA1cは、過去約1~2ヶ月の長期血糖コントロールの指標となります。

つまり、検査前だけ食事や運動に気をつけて血糖値を下げたとしても、HbA1cの数値を見れば不摂生がバレてしまう・・・なんてこともあるわけですね。
【2】冬の血糖値
個人差はあると思いますが、冬は血糖のコントロールが難しい季節だと言われています。

理由としては、食事量や飲酒量が増えること、運動量が減少することなどが考えられます。

また、寒さによる影響や季節変動なども関係しているのではないかと考えられているようです。

血糖値が高い(=血液中のブドウ糖が多い)状態が続くと、血液は粘って流れにくくなります。
ひどくなると、動脈硬化や末梢血管障害などの原因にもなります。

冬は、寒さの影響もあって血圧が高くなりやすく、心筋梗塞や脳梗塞など血管系のトラブルも多くなる季節です。

そこに高血糖も重なると、さらにリスクが高まってしまいますね。

血糖コンロトールの基本であるバランスのとれたの食事や適度な運動などに気をつけ、寒い冬を乗りきりましょう!

※冬と血圧の関係についてはこちらもご参照ください。
【3】血糖コントロールのポイント
◎食べすぎに注意しましょう
冬は本能的に食欲が増進する季節だと言われています。
家の中にいる時間が長いため、ついつい間食も多くなりがちです。
自分が何をどのくらい食べたのか意識するようにしましょう。
食べたものを記録しておくのも1つの方法ですね。

◎よく噛んでゆっくり食べましょう
早食いは、血糖値を急激に上昇させてしまうので気をつけましょう。
また、よく噛むことで脳内の満腹中枢が刺激され、満腹感を感じやすくなります。

◎糖質の種類に気をつけましょう
穀類やいも類に含まれるでんぷんは、砂糖などと比べると吸収も血糖値の上昇も比較的ゆるやかであることが知られています。
また、同じ糖質でも、精製してあるもの(白米、白砂糖など)より精製度の低いのもの(玄米、黒砂糖など)を選ぶとよいでしょう。

◎ミネラルやビタミンを積極的にとりましょう
ミネラルやビタミンなどの微量栄養素は、血糖コントロールや代謝アップのために欠かせません。
食事制限をするとさらに不足しやすくなるため、注意しましょう。

◎食物繊維を積極的にとりましょう
食物繊維には、血糖値の上昇をゆるやかにする作用が知られています。
野菜や海藻、きのこ、こんにゃくなどは、食物繊維が豊富で、しかも食べ応え(噛み応え)のある食材です。
このような食材を含むメニューから先に食べ始めるのもおすすめです。

◎体を動かすことを意識しましょう
どうしても運動不足になりがちなこの時季。
血糖コントロールには、ウォーキングなどの有酸素運動がおすすめですが、ストレッチや体操、エクササイズなど、家の中でも出来ることはたくさんあります。

◎喫煙や飲酒を控えましょう
喫煙は、血管を収縮させ、血流を悪化させてしまいます。
お酒には糖質が多く含まれているものもありますし、一緒に食べるおつまみによって血糖値が上昇してしまうことも・・・。

◎疲れやストレスをためないようにしましょう
体や心にストレスがかかると、血糖値を上昇させるホルモンが分泌されたり、インスリンの利用効率が悪くなることなどが知られています。
冬の寒さも、体にとってストレスになりますので気をつけましょう。
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
皆さん、昨年HbA1cの表記方法が変更になったことをご存知でしょうか。

従来、日本では「JDS」という独自の値が使用されてきましたが、昨年4月から国際標準の「NGSP」が正式な値として採用されるようになりました。

「NGSP」の値は、「JDS」よりも約0.4%高くなるので、それに伴って糖尿病の診断基準や血糖コントロールの評価指標も変更されました。

血糖コントロールの状態が悪くなったと勘違いをしたり、検査基準が甘くなったと誤解することのないようにしなければなりませんね。

ややこしいことに、病院や診療所での日常診療では2012年4月から「NGSP」が基本となっているようですが、特定健診・特定保健指導では2013年3月まで「JDS」が使用されることになっています。

検査結果には、「HbA1c(NGSP)」「HbA1c(JDS)」といったふうに、どちらの数値なのかが明記されているようです。

自分の検査結果が「JDS」なのか「NGSP」なのかをしっかり確認し、正しい健康管理に努めましょう。

※気になる症状がある場合には専門の医療機関へご相談ください。現在治療を受けている場合には受診機関の指示に従いましょう。
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