健康コラム

no.51
テーマ:「ストレス」
2011年5月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

若葉が萌え、さわやかな5月に入りました。
連休を過ぎたあたりから話題にのぼるのが5月病。
新学期や入社、転勤など、環境が大きく変わる時期がすぎ、そろそろ緊張がほぐれてくる頃ですが、新しい環境にうまく適応できなかったり、適応しようと頑張りすぎた結果、無気力で勉強や仕事に身が入らない、抑うつ気分が続く、寝起きが悪くなる、食欲がない、疲れやすいなど、この時期から上記のような症状が現れてくることを5月病と呼んでいます。
5月病は、いわゆる俗名。正式な病名ではなく、決められた定義や概念はありません。
今月は、5月病など精神面の健康「ストレス」に関するお話です。
【1】ストレスって?
5月病の原因の一つに「ストレス」が挙げられます。

日常に広く浸透し、頻繁に使われる「ストレス」という言葉。

改めて意味を問われると、適切に答えるのが案外むずかしくありませんか?

「ストレス」は、もともと物理学の分野などで“外部からの力によって生じた歪み”を意味する言葉として使われていました。

医学の分野で「ストレス」という言葉が使われるようになったのは、今から75年前の1936年。

カナダ人の生理学者ハンス・セリエ(H.Selye)博士は、体外から加えられた有害な要因(刺激)によって体に生じた歪みとそれに対する体の防衛(適応)反応を「ストレス」、そして、歪みの原因となる刺激を「ストレッサー」と定義付けました。

しかし、日常では単に緊張することを「ストレス」と言ったり、「ストレッサー」も「ストレス」という言葉と同じように使われています。

また、最近では医師などの専門家でも「ストレス」も「ストレッサー」も特に区別せずに使って説明する人が多いようです。


そのような「ストレス」。

簡単にいうと「心身の歪み」です。

スポンジに例えると、スポンジを指で押すと、凹みます。

この凹みや凹みを起こす力が、「ストレス」です。


私たちの心身も、人間関係や仕事のトラブル、悩み、不安といった刺激によって歪むのです。

時間がたてば凹んだスポンジが元に戻るように、私たちは「ストレス」によってダメージを受けても休息をとれば、ホメオスタシス(生体恒常性)という正常な状態に戻ろうとする体の働きによって、たいていは回復します。


ところが、心身の適応能力をはるかに越えるような刺激を受け続けると、体調不良やストレス関連疾患の発症につながってくるのです。

私たちは、日常生活の中で様々なストレスを受けています。

ストレスには、小さなものから大きなものまで色々あります。

隣人の犬が吠えてうるさい、いつもの電車に乗り遅れた、飲食店の従業員の愛想が悪かった等の些細な事から就職や退職、結婚や離婚、出産や死別など、人生の転機となるような大きな出来事まで。

私たちの意志とは関係なく、自然環境、社会環境は常に変化していきます。

自分ではどうにもならないこともあるでしょう。

生きている限りストレスは続きますし、残念ながらストレスをなくすことはできません。

だからこそ、ストレスを取り除くことよりも、ストレスの影響が強くなりすぎないように、自分をコントロールして、いかにストレスと上手く付き合っていくかが大切になってきます。
【2】思い込みがストレスを増大させる?!
ストレスの感じ方には個人差があります。

例えば、スポーツ。

好きな人には楽しくてプラスのものですが、嫌いな人にとってはマイナスもの、ストレスです。

同じ事柄でも受け止める人によって、大きく異なってきます。

一般的に、真面目で神経質、完璧主義、内向的で感情を抑制してしまいがちな人ほどストレスの影響を受けやすいと言われています。

しかし、そのような人でもストレスを自覚してペースダウンしたり、意識的に休息をとるように心掛けていれば、大事に至らずに済みます。

では、ストレスと上手く付き合うにはどうしたら良いか、まずは、ストレスへの考え方について。

行動傾向と同じように、考え方にも癖があるものです。

「どうして自分だけが・・・」と、怒りや挫折感を感じたことはありませんか?

実際は大したことでもないのに重く考え過ぎていたり、勝手な思い込みがストレスになっている場合も多いのです。


具体的には、下記の思い込みなどが挙げられます。

●「白か黒か」の思い込み: 「好きか嫌いか」「成功か失敗か」など両極端に分けて考えてしまう人は、許容範囲が狭くなり、自分を追い込んでしまいがちです。

物事にはあいまいな状態もあれば、「ほどほどに」ということもあります。


●「~すべき」の思い込み: 物事を断定して考えてしまうと、それに反している人には怒りを感じてしまったり、自分の基準に執着しすぎてしまい、選択肢が少なくなってしまいます。


●「一事が万事」の思い込み:一つの事を見れば、他のすべてのことを推察できる、こともありますが、一事が万事でないことも沢山あります。

新たに何かをはじめる時に「いつも失敗するから・・・」といった思い込みは禁物です。

何事もはじめから完璧にこなせる人は、ほとんどいません。

初めての挑戦であれば、8割もできれば上出来です。

勝手な思い込み避けるため、自分の考え方の癖を知り、多角的に物事を見る習慣をつけましょう。
【3】休息の3つの“R”
ストレスは、気付かない間にも蓄積していきます。

物事への集中力も限られており、さほど長くはありません。

がむしゃらに頑張るよりも、適度に休みをとり、気持ちに余裕を持って取り組む方が、結局は大きな成果を得ることも多いのです。


【ストレスへ対処法・休息編[3つのR]】


①Rest(レスト・休息):適度な休憩と睡眠 

仕事のオンとオフの区切りをはっきりつけて、心身を休ませる日をつくりましょう。

また、毎日の十分な睡眠時間の確保が難しくても、就寝前の食事を避けたり、適度に体を動かすことで眠りの質を高めることができます。


②Refresh(リフレッシュ・気晴らし):適度な息抜き、自分の時間を持つ

勉強や仕事の合い間なら、気分転換にコーヒーを飲んだり、週末であれば、何か好きなことに打ち込むこともおすすめです。

人それぞれですが、ドライブするとか、好きな音楽を聴くとか、ショッピングに出かけたり、あるいは映画を見に行くのも良いでしょう。

非日常的な環境に身を置き、日々の生活から意識をそらすことで、ストレスからの解放感を得られやすくなります。


③Relax(リラックス・くつろぎ):ゆったりとした時間を持つ

家族との団らんや気心の知れた友人との語らいなどで、緊張を解きほぐす時間を持ちましょう。

ペットと遊ぶ、ガーデニングを楽しむなど、動物や植物と触れあうことも良いでしょう。

仕事の休憩中であれば、静かな場所でゆっくり深呼吸を行うと気持ちが穏やかになるでしょう。
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
ストレスは、心身に悪い影響を与える有害なものとして扱われがちですが、必ずしもそうとは限りません。

ノルマ、目標、夢、といった事柄もストレスの一種ですが、これらのストレスには、やる気や勇気をもたらすなど、良い刺激を与えてくれるという側面もあります。

例えば、学校のクラブ活動に試合が無かったら、目標もなく、励みになりません。

試合があるからこそ練習に熱が入ります。

もし、私たちの気持ちを奮い立たせたり、挑戦しようという意欲を起こさせるような刺激(ストレス)がなければ、私たちの生活は退屈極まりないものになるに違いありません。

適度なストレスが生活に張りを与え、生き甲斐を感じさせてくれることから、“ストレスは人生のスパイス”と称した人もいます。


心身の歪みの原因となる過剰なストレス(STRESS)は、前述の事柄や、

 S : Sports  (スポーツ)
 T : Travel (旅行)
 R : Recreation(娯楽)
 E : Eat   (食べる)
 S : Sleep  (寝る)
 S : Smile (笑う)

で発散して、ストレスと上手に付き合っていきたいですね。
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