健康コラム

no.54
テーマ:「心臓」
2011年8月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

震災による電力需給への対応のため、消費電力の節約、節電ムードが高まっていますが、連日の猛暑に加え、節電を意識し過ぎるあまり、今年の夏は、熱中症とみられる症状を訴えて病院に搬送される方が相次いでいるようです。
節電も熱中症で倒れては、本末転倒。
体調を崩さない程度の節電が大切ですね。
それはさておき、8月10日は、何の日かご存知ですか?
「810」は「ハート」と読み取れることから、日本心臓財団が、心臓病(循環器疾病)に関する正しい知識の普及と啓発を目的として8月10日を「健康ハート(心臓)の日」と定めました。
今月は、ハート、「心臓」についてのお話です。
【1】心臓のいろいろ
▼心臓はどこに?
通常、心臓は左胸にあると思われがちですが、左胸というよりは、左右にある肺の間に挟まれているため、胸の真ん中からやや左寄りに位置しています。
 
▼心臓の大きさは?
大人の心臓で、だいたい握りこぶしほどの大きさです。
重さは、250~300g、グレープフルーツ約1個分相当です。
 
▼心臓の形は?
ラグビーボールの上部3分の1を切り取って、下部を少しとがらせたような形で、内部は、左右それぞれ心房、心室に分かれています。

▼心臓は何からできている?
心臓の大部分は、力強い収縮を行うために心筋と呼ばれる筋肉からできています。

▼心臓のはたらきは?
私たちは、生きていくために、肺から取り込んだ酸素や、消化器から消化吸収した栄養素などを必要とします。
そして、体内で生じた老廃物を体外に排出しなければなりません。

これらの酸素や栄養素、老廃物を体内で運搬するのが血液で、その血液が通る管が血管、血液を循環させるポンプのような役割を担っているのが心臓です。

血液循環は、心臓が規則正しく、絶えることなく、収縮(心臓から血液を全身へ送り出す)と拡張(肺や全身を循環してきた血液を受けとる)を繰り返すことで、成り立っています。
 
※心臓の位置、大きさ、形には個人差があります。
【2】心臓と日本人の死因
データ(平成19年人口動態統計)によると、日本人の死因は、がん、心臓病(心疾患)、脳卒中(脳血管疾患)の順で、この3つが全体のほぼ6割を占め、心臓病が第2位です。

心臓病といっても、色々な種類と原因があります。

死因に挙がる心臓病の大半は、動脈硬化が誘因となって発症する心筋梗塞と狭心症です。

動脈硬化とは、動脈(血管)が老化し、弾力性が失われて硬くなったり、血管内にコレステロールなどが沈着して血管が狭くなった状態をいいます。

そのような状態は、血液循環を妨げてしまうため、心臓へ大きな負担をかけてしまいます。

心臓病を誘発する動脈硬化は、誰でも年齢とともに進んでしまうものですが、同じ年齢であっても、血管の健康状態には個人差があります。

それは、加齢の他に「高血圧」「高血糖」「脂質異常(高脂血症)」「ストレス」「喫煙」といった生活習慣(病)が、動脈硬化の進行を早める危険因子になるからです。

少しでも心臓へ負担を減らすため、生活習慣を見直しましょう。
【3】心臓にやさしい生活習慣を
毎日を健康に過ごすためのポイントは、『一無二少三多(イチムニショウサンタ)』です。

これは、日本生活習慣病予防協会が提唱している健康標語の一つで、6つの健康習慣を表しています。

心臓の健康維持にも共通しています。具体的には、


『一無』:禁煙(無煙)

◆禁煙(無煙)
たばこは、あらゆる生活習慣病のリスクを高めます。
また、たばこを吸う本人だけでなく、受動喫煙によって、周囲の人の健康も害してしまいます。
ストレス発散方法をたばこ以外に見つけましょう。


『二少』:少食・少酒

◆少食
暴飲暴食は、余分な脂肪分や糖分を体内に蓄積させ、肥満のもとになります。
食事は、腹八分目を心がけ、栄養バランスに気をつけて、主食・主菜・副菜・(汁物)の組み合わせを基本に、規則正しく、偏食せず、よく噛んで食べましょう。
    
◆少酒
アルコールはほどほどに。
飲み過ぎは、病気のもとです。1日の適量を守り、1週間に2日は休肝日を設けましょう。 
  

『三多』:多動・多休・多接

◆多動
激しい運動でなくても、ウォーキングやストレッチ体操などの適度な運動は、健康づくりに欠かせません。
運動は、無理せず自分に合ったペースで行い、日常生活の中でも、なるべく体を動かすようにしましょう。
※現在、治療中のご病気や、気になられる症状がある場合には、必ず医師に相談ください。

◆多休
睡眠時間の理想は7~8時間といわれています。
また、1か月に6日以上は仕事をしない休日をつくり、心と体をしっかり休めましょう。

◆多接
社会活動や趣味などを通じて、多くの人、事、物に接する機会を持ちましょう。
様々なふれあいは、生活にハリを与えてくれますし、ストレス発散にもつながります。
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
私たちの体は、何らかの原因によって組織や臓器などが損傷を受けたとしても、元に戻る“再生”という能力を兼ね備えています。

例えば、軽いやけどなら、水ぶくれになってしまっても、その下から新しい皮膚ができ、気がつけば治っています。

臓器では、肝臓も再生します。

仮に、肝臓の一部の摘出手術を受けたとしても、肝臓の30%ほどが残っていれば、元の大きさにまで戻ることが知られています。

しかし、残念なことに一度損傷してしまうと、元に戻ることのむずかしい組織もあります。

それは、脳や脊髄を構成する神経細胞や、心臓を構成する心筋細胞などです。

今日を機に『一無二少三多』で示す6つの健康習慣を意識して、たった1つしかない自分の心臓を大切にしていきましょう。
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