健康コラム

no.57
テーマ:「環境と健康」
2011年11月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

朝晩の風は冷たく、こたつが恋しい季節となりました。
今年の冬は、夏の電力不足の影響から「節電・省エネ」ムードが続きそうです。
「節電・省エネ」への関心は、震災をきっかけに高まりましたが、地球の温暖化、水質や土壌の汚染、食糧問題など、様々な環境問題への対策として、震災以前から「節電・省エネ」は言われていました。
とはいえ、体まで「省エネ」にする必要はありません。
寒いから家にこもって、お菓子をつまみながら、こたつでゴロゴロ。
運動量が少なくなれば、食べた分のエネルギー(カロリー)は、消費されずにそのまま脂肪となって体に蓄積してしまいます。
そこで、今回はエネルギーつながりで、環境と健康についてのお話です。
【1】生活環境の変化と私たちの健康
私たちの生活は、飛行機や自動車などの交通手段の発達、電化製品の進歩、産業や流通の拡大、様々な技術開発によって、ずいぶん快適になりました。

飲食店やコンビニエンスストア等で、いつでも手軽に食事が摂れ、海外の食べ物まで簡単に手に入ります。

半世紀前と比べると、最小限の活動量で生活ができ、便利すぎるくらいです。

しかし、その代償として、体を動かす機会は減りました。

不規則な食生活が広がり、栄養バランスも乱れたことで生活習慣病やアレルギーなどの病気が増えてきたことが指摘されています。

また、空気や水など自然環境を汚し、貴重な資源をむだ使いしてきたことも忘れてはいけません。

次項では、健康にも環境にもやさしい生活のポイントをお伝えいたします。
【2】まずは、身近なことから
■早寝早起きを

○体に:1日24時間であるのに対して、ヒトの体内時計は25時間。

放っておくと1時間ずつ誤差が生じてしまいますが、朝の光には、その誤差を調整し、体内のリズムを整える作用があります。

それに加えてもう一つ、朝の光には、心を穏やかにする「セロトニン」というホルモンの働きを高め、精神面の健康を維持する作用が知られています。

○環境に: 夜中に起きている時間を少しでも減らすだけで、電気エネルギーと電気代を節約できます。


■自動車通勤の人は、電車・徒歩・自転車の利用を

○体に:運動不足の解消に有効です。

体重60㎏の人であれば、30分の早歩きで、約120kcalのエネルギーを消費できます(小さめの茶碗でごはん軽く1杯程度)。

○環境に:二酸化炭素を排出する交通・運輸手段には、貨物用自動車(営業用トラックなど)、鉄道、船舶、航空、バス、タクシー、自家用乗用車(家庭の自動車)などがあります。

交通・運輸手段の中で、二酸化炭素排出量の約9割を占めるのが自動車。

自動車のうちの半分を自家用乗用車(家庭の自動車)が占めています。

同じ交通手段でも、鉄道なら二酸化炭素排出量は、自家用乗用車(家庭の自動車)の約1/8※ですみます。

※1人を1km運ぶのに排出する二酸化炭素量を比較した場合


■ぞうきんで床掃除、ハウスダスト対策にも

○体に:昔ながらのぞうきんがけは、足腰をはじめ全身を使う運動です。

掃除機だと舞い上がってしまうハウスダストも、ぬれぞうきんなら一掃できます。

○環境に:ぞうきんやほうきなど、日本にはすぐれた掃除道具が沢山あります。

電気エネルギーの節約になり、大気汚染や騒音の心配もありません。
【3】食事でもエコライフ
次に、食事についてです。

●料理には旬の食材を用いて、季節感を意識しましょう
 
海外など遠くの産地でとれた農産物は、店頭に並ぶまでに、輸送に伴う多くのエネルギーを必要とします。

近くのものを選ぶことで、輸送時に排出される二酸化炭素の削減につながります。また、旬の食材は新鮮で栄養価が高く、冬は体を温め、夏は冷やすなど時季に合った作用を持っています。

ここ数年、その地域で生産されたものをその地域で消費すること、「地産地消」が注目されています。

「地産地消」には、前述した特長の他に、地域の農業や経済活動の活発化、食糧自給率の向上など、様々な効果が期待されています。


●肥料には生ごみを利用して、ベランダで菜園はいかがですか

家庭の生ごみは、全国で年間1000万トンにのぼるといわれます。

生ごみを分解して堆肥をつくる家庭用生ごみ処理機(コンポスター)が販売されています。

自治体によっては、コンポスターの貸し出しを行っているようです。

コンポスターを使えば、生ごみを減らし、生ごみを処理するためのエネルギーの省力化や、生ごみの再利用化につながります。

また、家庭菜園なら農薬の心配もなく、安心して野菜が食べられます。

育てて食べる楽しみも味わえ、お子様であれば、自分で育てた野菜を食べることで、好き嫌いの克服にも役立ち、一石二鳥です。


●調理器具や調理方法を見直しましょう
 
鉄製のフライパンは、熱の回りが良く、チャーハンや野菜炒めなどを高温・短時間で仕上げることができ、ガスや電気の使用量が抑えられます。

寒い日に体が温まる料理といえば、煮込み料理。

長時間コトコト煮込むため、一見「節電・省エネ」には不向きに思えますが、“保温調理”をすれば、少しのエネルギーで簡単に作ることができます。

“保温調理”とは、加熱・沸騰させた鍋を火から下ろして新聞紙やバスタオル、毛布で多重にくるんで保温し、余熱を利用して料理を仕上げる方法です。

他にも、お鍋を火にかける前には、水滴を拭いておくと、水滴を蒸発させるための余分なエネルギーを使わなくてすみます。


●健康・環境のため、腹八分目を心がけましょう

ついつい料理を作りすぎてしまうという方は、買い物は、空腹時でなく、食後に行きましょう。

買いすぎを防げます。

多すぎる料理は、捨てれば生ごみを増やし、無理して食べれば、食べすぎて脂肪を増やしてしまいます。

「もうすこし食べたいな」というときには、食後にお茶を飲むようにすると、満腹感を得やすくなります。
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
環境分野で初めてのノーベル平和賞受賞者で、「もったいない」という日本語を世界に広めた、ケニアの環境活動家ワンガリ・マータイさんが9月末にお亡くなりになりました。

この「もったいない」は、ごみを減らし、循環型社会を作っていくためのキーワードである3R、Reduce(減らす)、Reuse(再利用)、Recycle(再資源化)の意味を含んでいます。

さらに、「もったいない」という言葉には、命の大切さや、かけがえのない地球資源に対する敬意や愛などの意思Respect(尊敬の念)が込められています。

そして、ワンガリ・マータイさんは、おっしゃっていたそうです。『Reduce(減らす)、Reuse(再利用)、Recycle(再資源化)、Respect(尊敬の念)を たった一言で表す言葉は他に見つからなかった、「もったいない」という言葉を知って感銘を受けた』と。

日本人は、元来自然の恵みに感謝し、自然・人・物を大切に丁寧に扱いながら、生かしきることを美徳とし、暮らしてきました。

環境問題は沢山あります。改善のために必要なのは、私たち一人ひとりの毎日の心がけです。

本当に必要なものは何かを考えながら、環境にも人(健康)にもやさしい毎日を過ごしていきたいですね。
【コラムの無断転載は禁止させていただいております】