健康コラム

no.63
テーマ:「子宮がん」
2012年6月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

新緑のまぶしい、さわやかな季節になりました。

この時期、学校や会社で一斉に行われるものといえば「健康診断」ではないでしょうか。

検査項目は、対象者の年齢や性別、職種などによって異なりますが、女性特有の検査項目の一つに「子宮がん」があります。

女性にとって子宮は、妊娠・出産の時だけでなく、毎月の生理でも関わりのある器官です。

今月は、女性の一生に密接した器官、子宮の「子宮がん」について注目します。
【1】子宮がんには種類がある
一般的な子宮がん検診では、下記の検査が行われています。

・問診……生理の状態や妊娠・出産歴などを聞かれます。
・内診……内診台に上がり、医師が子宮頸部(子宮の入り口)や子宮の状態を診察し、出血の有無など異常がないかを調べます。
・細胞診…子宮頸部の表面の細胞を採取し、細胞が良性か悪性かを顕微鏡で調べます。
・医師が必要と認めた場合には、子宮体部(胎児の宿る部分)の細胞診も行われます。子宮体部の細胞診は、子宮内膜の細胞を採取します。

※子宮がんの検診内容は、検診を提供する機関によって多少異なる場合があります。

子宮がんは、がんが発生する部位によって、子宮体部(胎児の宿る部分)の内膜にできる「子宮体がん」と子宮頸部(子宮の入り口)にできる「子宮頸がん」に分類されます。

子宮がん検診というと、両方のがんについて検査を行なうように聞こえますが、正確には「子宮頸がん検診」です。

「子宮体がん」と「子宮頸がん」では、発生部位や検査方法の他に発生原因、好発年齢、症状、治療内容などに違いがあります。

次項から、それぞれの子宮がんの特徴を見ていきましょう。
【2】子宮体がんについて
「子宮体がん」は40歳代から増えはじめ、子宮体がんと診断される人の多くは、閉経前後の50~60歳代です。

発症には、女性ホルモンのバランスが関わっているといわれ、閉経した人、妊娠・出産経験がない、または少ない人、ホルモン補充療法を受けている人は、発症リスクが高いようです。

肥満体型の人や高血圧、糖尿病の人も発症しやすく、食生活の欧米化(動物性脂肪の過剰摂取)との関係が指摘されていて、子宮体がんを発症する人は、以前に比べ増えてきています。

主な自覚症状としては、不正出血があげられますが、子宮体がんの初期では自覚症状が出ない人もいます。

自覚症状がなくても、40歳を過ぎたら年に一度は定期健診を受け、健康状態をチェックしましょう。
【3】子宮頸がんについて
子宮頸がんの好発年齢は40歳代ですが、近年は、若い女性(20~30歳代)の発症が急増しています。

子宮頸がんの原因は、発がん性のヒトパピローマウイルス※への感染です。(※HPV:HumanPapillomavirus、以下HPVと表記)
HPVは性交によって感染します。

聞き慣れないウイルスですが、性交経験のある女性であれば、誰でも感染しうる、ごくありふれたウイルスです。

感染しても多くの場合は、風邪を引いた時と同じように、体の免疫機能によってHPVは自然に排除されます。
感染してすぐに自覚症状が現れたり、必ず発がんするわけではありません。

ところが、HPVが排除されずに、年齢や免疫機能など何らかの影響よって、感染した状態が長期化してしまうことがあります。

そうすると、感染から年月を経て、前がん状態(がん化する前の状態)から、がんへと進行することがわかっています。
感染からがん化するまでには、数年~数十年以上がかかります。

子宮頸がんの初期は、自覚症状がほとんどありませんが、子宮頸がんは発がんするまでの期間が長いため、定期的に検診を受けていれば、前がん状態で発見することができ、がんが進行してから見つかることはほとんどないようです。

日本では、2009年12月から子宮頸がんの予防ワクチンが、一般の医療機関で接種できるようになりました。

このワクチンは、子宮頸がんの原因として最も多く報告されている2種類の発がん性のHPV(16型と18型)の感染を防ぐワクチンです。

その他の型の発がん性のHPVによる子宮頸がんの予防や、すでに感染しているHPVを排除したり、子宮頸部の前がん状態やがん細胞を治療する効果はありません。

そのため、ワクチンを接種していても、必ず子宮頸がん検診を受けることが大切です。

※検診やワクチンの接種に、費用の助成を行なっている自治体があります。詳しくはお住まいの自治体へお問い合わせください。
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
今月は、健康診断の検査項目の一つ「子宮がん」について注目しましたが、健康診断は男女問わず、学校保健法や労働安全衛生法など各種法律で規定され、受けることが義務付けられています。

「面倒だな」といった後ろ向きな気持ちで受ける人も多いかもしれません。
しかし、健康診断自体は無料でも、毎月高い健康保険料をお給料から支払っていて、そこから莫大な医療費が賄われていることを忘れていませんか。

せっかくの機会です。
健康診断の目的・内容をしっかりと把握して、きちんと受け、健康管理に役立てましょう。

そして、もしもの結果が出た場合には、至急(子宮)専門機関に。
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