健康コラム

no.83
テーマ:「和食」
2014年1月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

明けましておめでとうございます。
2014年も月刊ニックリ健康コラムをよろしくお願いいたします。

2013年「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されました。

世界文化遺産に登録された富士山とともにますます世界に日本をアピールすることができますね。

長寿国として知られる日本を支えてきたもののひとつに伝統的な食生活があります。

普段何気なく食べている和食ですが、和食ってすごいんですよ。
【1】和食の優れた栄養バランス
PFC比をご存知ですか??

PはProtein(たんぱく質)
FはFat(脂質)
CはCarbohydrate(炭水化物)です。

この3つの栄養素のことを“3大栄養素”と言い、エネルギーの比率をPFC比と言います。

1日のエネルギー摂取配分は、下記の割合が望ましいとされています。
○たんぱく質エネルギー:15~20%
○脂質エネルギー   :20~25%
○炭水化物エネルギー :55~60%

米を中心に、肉や魚、野菜、海藻類、きのこ類、豆類、芋類など多彩な食材を摂取することができる和食はこのPFC比が整いやすく、栄養バランスのとれた食事として世界でも注目されています。

PFC比のバランスが絶妙だったのが、乳・乳製品や肉類を食べる割合が増加し始めた1980年代の一般家庭の食事だそうです。

日本が長寿国であることも和食の栄養バランスの良さを表していますね。

現在は、動物性脂質を多く含む食品(乳・乳製品、肉類など)を摂りすぎる傾向があり、様々な問題点も指摘されていますが・・・・。
【2】ご飯をおいしく食べるための工夫
とんかつ、カレーライス、コロッケ、肉じゃがは、海外の文化を取り入れて日本風に工夫された和食です。

大人も子供も大好きなご飯のおかずとして食卓に登場します。

1980年代の食事の栄養バランスが優れていると言われるようになったのも、魚介や野菜、海藻類、豆類中心の粗食といえる食生活に、乳・乳製品や肉類を取り入れた洋風のメニューが加わるようになったためです。

一汁三菜(いちじゅうさんさい)というのを聞かれたことがあるかと思います。

これはご飯の他に汁と3品の菜(おかず)の組み合わせのことです。
もとは、鎌倉時代禅寺で“質素倹約”を指す言葉でした。

《ご飯》
一汁三菜に欠かせないのが主食のご飯です。
現代では、動物性脂質やたんぱく質からもしっかりとエネルギーを摂ることができますが、乳・乳製品や肉類などを食べる習慣がなかった時代は、ご飯が貴重なエネルギー源でした。
主食のご飯を食べるために、副食(汁やおかず)の調理方法も発達しました。

《汁》
大豆を原料とした味噌を使う味噌汁は、大切なたんぱく源であり、毒消しや、消化を良くする力があると考えられていたそうです。

「日本人はよく汁を飲む、まるで汁を飲まなければご飯を食べられないようだ」さかのぼりますが、400年程前(江戸時代初期)のポルトガル人の記録に残るほど、昔から汁なしで食事は成り立たなかったようです。

《菜(おかず)》
春夏秋冬、その季節でしか味わえない食材を使い、あの手この手を使って試行錯誤した結果、焼く、煮る、茹でる、蒸す、和える、揚げるなどさまざまな調理法が発達しました。

同じ食材でも調理法が変われば別の料理になり、色々な組み合わせで食卓を彩ることができます。

中でも自然に恵まれた日本だからできる調理法として「茹でる」があります。
おひたしを作るときに、小松菜やほうれん草をたっぷりのお湯で湯がいたあと、歯触りを良くするためや、灰汁(あく)抜きのために一度水で洗う、といった調理法は、水が美味しく豊富にある日本だからできる世界でもめずらしい独特の調理法です。

一汁三菜の基本は主食であるご飯を食べることです。

主食を基本として、副食(汁、おかず)に使う食材や、料理、調理方法などを工夫し、海外の文化をうまく取り入れてきた結果、栄養バランスに優れた理想的な食文化ができあがりました。
【3】和食のおいしさを支える『だし』
『だし』は汁物や煮物など多くの料理に欠かせない味のベースです。

西洋料理、中華料理に使われるだしは、野菜や肉、魚からだしをとりますが、食材を長時間煮込んでいるのでだしに使った食材の味が強くでているのが特徴です。

対して日本のだしの大きな特徴は、昆布やかつおをそのまま使うのではなく、乾燥や薫煙(くんえん)など、だし専用に加工したものを使用していることです。

さらに、うま味成分を多く含む食材を用いて、短時間でうま味を引き出し、料理に使う食材の味を引き立てることにあります。

うま味成分として代表的なものは、

○昆布のグルタミン酸
○鰹のイノシン酸
○しいたけのグアニル酸などです。

これらは単独でとるよりも、
昆布だし(グルタミン酸)+鰹だし(イノシン酸)
昆布だし(グルタミン酸)+しいたけだし(グアニル酸)

というように組み合わせることで飛躍的にうま味が強くなることが知られています。
この組み合わせは洋食や中華のだしにも見られます。

セロリ、玉ねぎ、人参(グルタミン酸)+肉(イノシン酸)
長ネギ、しょうが(グルタミン酸)+鶏肉、帆立貝柱(イノシン酸)

さらにうま味は適度な塩分によって増強されます。
『いい塩加減』とは、塩によってうま味がピークに達した状態のことです。

5つの基本味として、甘味・酸味・塩味・苦味・うま味があります。

中でもうま味は、100年ほど前に昆布のだしの研究を始めた日本人科学者によって昆布だしの主成分がグルタミン酸であることが発見され、『うま味』と名づけられました。

うま味が、独立した基本味《Umami》として世界で公式に認められたのは、1985年のことです。

これをきっかけに世界の有名シェフが日本料理のだしやうま味に注目し始め、和食ブームが起こったとも言われています。
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
祖父母が農家をしていた私の家の朝食は和食中心でした。

けれども、私の母も兄も朝はパンを食べていたので、家の古米がなかなか減らないことを気にした祖母が、末っ子の私に「ご飯を食べなさい」「せっかく苦労して作ったのに、ご飯を食べないならおばあちゃんもう作らなーい!」としきりに言うので、小さいながら使命感を感じてご飯を食べていました。

大きくなって一人暮らしを始めたら「絶対朝食はパンにしよう」と思っていましたが、今でも朝食は白いご飯と味噌汁です。

一度身につけた食習慣はなかなか変えることができないんですね。

小さい頃から規則正しい食習慣を身につけることって大切だなと思います。
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