健康コラム

no.93
テーマ:「歯周病」
2014年11月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

朝晩が冷え込み、冬の訪れを感じる季節になりました。

今月、11月8日は、“いい歯の日”です。
いい(11)歯(8)の語呂合わせから日本歯科医師会によって制定されました。

今月は歯について、中でも『歯周病』について注目します。
【1】別名はサイレント・ディジーズ
健康な歯ぐきはうすいピンク色で、弾力があって引きしまっています。
歯と歯の間に歯ぐきが入り込み、歯みがきでは出血することのない状態です。

歯周病は、歯と歯ぐきの間にたまった歯垢(プラーク)の中の歯周病菌という細菌によって起こる感染症です。

歯垢(プラーク)とは、歯の表面につく、白いねばねばしたもので、この中に細菌がすみついています。

歯周病は、歯ぐきの腫れや出血からはじまり、放っておくと、歯を支える骨(歯槽骨)が溶けて、歯がぐらつきはじめ、最終的には歯が抜け落ちてしまうこともあります。

歯周病になると、一般的に下記のような症状があらわれます。
・朝起きたときに口の中がねばつく
・食べ物が歯の間によくはさまる
・歯ぐきが腫れ、うずくことがある
・口臭がきつくなる
・歯みがきのときに出血する
・かたいものを噛むと出血する
・歯ぐきが赤黒くなり、ぶよぶよして、押すと血や膿が出る
・ぐらぐらした歯がある

ところが、歯周病の初期では、上記のような自覚症状はほとんど見られません。
そのため、気がついたときには、歯周病がずいぶん進行していたということが多いことから、”サイレント・ディジーズ(静かに進行する病気)”とも呼ばれます。
【2】歯周病と健康の複雑な関係?!
単に歯の病気として思われがちな歯周病ですが、歯を失えば、噛みづらくなって、噛む力が衰えるため、胃腸への負担は増大、消化吸収も悪くなります。

食べられるものも限られてくるため、十分な栄養が摂れなくなってしまいます。

栄養不足になれば、体全体の働きが低下し、免疫機能も弱まり、歯周病だけでなく、様々な病気に感染しやすくなります。

そして、最近では、歯周病が生活習慣病や骨粗鬆症、認知症など全身の様々なところに影響したり、関連し合っていることがわかってきました。

○糖尿病
糖尿病では、血液中にあふれ出した糖によって血液循環が悪くなり、進行すると、網膜症、腎症、神経障害、足病変(壊疽<えそ>)、動脈硬化など合併症を引き起こすことが知られています。

歯周病は“第6の合併症”ともいわれ、糖尿病になると、歯ぐきの血行循環も悪化するため、歯ぐきに炎症が起こりやすくなります。
そうすると、歯周病の引き金や歯周病の悪化につながる恐れがあります。

○心疾患(狭心症・心筋梗塞など)
歯周病の炎症が悪化すると、歯周病菌や歯周病菌の出す毒素が血液中に入り込み、血管内で炎症を起こして、血栓(血のかたまり)をつくります。

こうしてできた血栓は、動脈硬化を促進させ、心臓の血管が狭くなってくると狭心症の原因に、つまってしまうと心筋梗塞の原因になります。
また、心臓の弁に歯周病菌が付着すると、心内膜炎という心臓病を引き起こす可能性があります。

○骨粗鬆症
骨粗鬆症では、歯を支える歯槽骨の骨密度にも影響が出てくるため、歯周病の悪化につながってしまいます。

特に、閉経後の女性は、女性ホルモンの分泌量の低下によって骨粗鬆症の発症率が高まることから、注意が必要です。

○認知症
認知症には、脳の血管が何らかの障害を受けて起こる脳血管性のものと、何らかの原因で脳が委縮するアルツハイマー型の2種類があります。

血液中に入り込んだ歯周病菌は、血液を介して全身をめぐるため、心臓周辺の血管だけでなく、脳の血管にも影響を及ぼします。
歯周病を予防することは、動脈硬化の予防につながり、脳血管性の認知症のリスクを減らすことにもなります。

また、噛むことと脳の活性化には密接な関係性があるとされますが、これは、噛むとその刺激が脳へと伝わり、学習能力に深く関わる神経伝達物質のアセチルコリンが増えるためだといわれています。
そして、このアセチルコリンの減少は、アルツハイマー型認知症の一因として考えられています。

ある調査によると、残存歯数が少ない人ほど、脳の委縮が進んでいたという報告があるそうです。
さらに、その調査では、アルツハイマー型認知症の人は、健康な人に比べ、残存歯数が少なかったという結果も出ていました。

○早産・胎児の低体重
妊娠中は、つわりで口腔内のケアがむずかしくなったり、ホルモンバランスの関係で歯ぐきに炎症が起こりやすくなるため、虫歯や歯周病になる人が多くなります。

また、妊娠中に歯周病になると、血液中に入った歯周病菌が子宮や胎盤の収縮時期を早めてしまい、早産や低体重児の出産のリスクが高まると考えられています。
【3】歯周病を予防する
歯周病の予防には、歯周病菌のすみかとなる歯垢(プラーク)をためないことが大切です。

また、歯周病の直接の原因は“歯周病菌”ですが、健康状態が悪いと、歯周病菌が繁殖しやすくなります。
下記の生活習慣を心がけ、歯周病を予防しましょう。

○間食を控えましょう
間食が減れば、食べ物のカスが歯につく機会も減ります。

○よく噛んで食事を食べましょう
よく噛むと、唾液の分泌が良くなります。
唾液には細菌を洗い流す効果があります。
また、満腹感を感じやすくなるので、食べ過ぎを防ぎ、肥満予防につながります。

○噛み応えのある食材を食事に取り入れましょう
しっかりよく噛むと、歯やあごが丈夫になります。
噛むことはその他にも様々な効用があります。

○上手に疲労やストレスを解消しましょう
疲労やストレスがたまってくると、免疫機能が低下し、歯周病にかかりやすくなってしまいます。

○禁煙をめざしましょう
たばこに含まれる有害物質は、歯と歯ぐきにも悪影響を与えます。
ある統計データによると、1日10本以上の喫煙で、歯周病になる危険性が5.4倍に高まるそうです。
また、喫煙者は非喫煙者と比べ、歯周病にかかりやすい上悪化しやすく、治療しても治りにくいことがわかっています。
 
○口腔内を清潔に保ちましょう
みがき残しは、歯周病の原因になります。
歯ブラシを軽くもち、小刻みに動かして、歯みがきは丁寧に行いましょう。
また、妊娠中のつわりの時期には小さめの歯ブラシを選ぶのもおすすめです。
 
○定期的に口腔内の健康をチェックしましょう
噛み合わせの悪さや合わない入れ歯は、歯周病の進行を早める一因です。
違和感や何か気になることがあれば、早めに専門機関を受診しましょう。
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
「芸能人は歯が命」
昔流行ったCMのキャッチコピーです。

白く輝く歯は、清潔で健康的なイメージを与えます。

芸能人に限らず、歯や歯ぐきなど、口元の健康は、好印象を与える要素として大きな割合を占めているといえます。

確かに、商談相手のビジネスマンの口臭がきつければ、話を聞く気が失せてしまうかもしれませんね。

歯と全身の健康は密接に結びついていて、互いに影響し合っています。
健康は色々な意味で生活を豊かにしてくれます。

日頃の生活習慣をもう一度振り返り、健康な歯で、歯ッピー(ハッピー)な毎日を送りましょう。
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