健康コラム

no.95
テーマ:「鍋料理」
2015年1月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

新年のご挨拶を申しあげます。
2015年も、月刊ニックリ健康コラムをよろしくお願いいたします。

さて、寒い日が続いていますね。

この時季の食卓の定番といえば『鍋料理』ではないでしょうか。

寄せ鍋、ちゃんこ鍋、水炊き、しゃぶしゃぶ、すき焼き、湯豆腐、キムチ鍋、もつ鍋といった定番のものから、
最近では、豆乳鍋、カレー鍋、トマト鍋など、変わり種も見られ、バリエーションが広がっているようです。

今月は『鍋料理』についてお届けします。
【1】鍋料理の魅力
鍋料理というと、“手軽”“洗い物が少ない”なんてイメージをお持ちの方も多いかと思います。
ただ“楽”だけではない鍋料理の魅力を見ていきましょう。

◎栄養バランスがとりやすい
鍋料理は、魚介類や肉類、豆腐などの大豆製品(たんぱく質・脂質)と、旬の野菜やきのこ類(ビタミン・ミネラル・食物繊維)を組み合わせて作ります。
そして、シメにはごはんや麺類(炭水化物)など、1つの料理で様々な具材が使われるため、自然と栄養バランスが整いやすくなっています。

◎野菜がたくさん食べられる
野菜はビタミン・ミネラル・食物繊維が豊富です。
加熱することでカサが減るため、生で食べるよりも多く食べることができます。

冬が旬の野菜は、寒さに耐えるために、栄養素をたくわえ、他の季節より甘味が増すといわれています。
特に冬の野菜は、皮膚や粘膜を潤し、乾燥を防ぐ働きや、体を温める働きのある栄養素を含んでいることでも有名です。

◎良質のたんぱく質が摂れる
鍋料理の種類にもよりますが、基本的に動物性たんぱく質(魚介類・肉類など)と植物性たんぱく質(大豆製品など)の両方が食べられます。
たんぱく質は免疫機能にも関係していて、寒い季節、風邪から体を守るために欠かせません。

◎たっぶりの食物繊維が補える
鍋料理に欠かせない野菜、きのこ類、こんにゃくは、普段の食生活では不足しがちな食物繊維が豊富です。
食物繊維は腸内環境を整え、免疫機能を高めるために役立ちます。

◎体が温まる
“冷えは万病のもと”といわれます。
体が温まると、血行が良くなり、血液を介して全身へ 栄養素が行きわたりやすくなるため、体全体の働きが良くなります。

みそ鍋やキムチ鍋には、発酵食品(みそ、キムチ)が使われます。
発酵食品に含まれる酵素は、消化を助け、腸の働きを整えてくれます。
【2】食材選びと組み合わせで栄養価UP
栄養バランスをとりやすい鍋料理。
食材選びや組み合わせをちょっと意識するだけで、ぐっと栄養価がUPします。

まずは、旬の食材をいくつかご紹介します。

■鰤(ぶり)
“寒ぶり”と呼ばれるように、冬が旬の鰤は、たんぱく質、ミネラル、ビタミン、血液循環を良くしてくれる働きのあるEPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)をバランス良く含んでいます。

また、血合いの部分(赤色の部分)には、疲労回復や肝臓機能の強化に働くタウリンが豊富です。

鰤の切り身は、血合いの色が鮮やかなものほど新鮮です。
 
■鱈(たら)
低脂肪のわりに、たんぱく質、ビタミンA、ビタミンDが豊富です。
これらの栄養素は、骨粗鬆症の予防や改善に役立ちます。

鱈の切り身は、身に弾力あり、透明感のあるもの、ぬめりがないものを選びましょう。
 
■牡蠣(かき)
“海のミルク”とも呼ばれ、グリコーゲン(糖質)、ミネラル、ビタミン、良質のたんぱく質などを含んでいます。

殻つきの牡蠣の場合は、殻がかたく閉じているか、触れたらすぐに殻を閉じるものが新鮮な証拠です。
むき身の場合は、身が乳白色で艶と弾力性があり、肉厚のもの、身の端の黒緑のひだのある部分(外とう膜)がよく縮んだものを選ぶと良いでしょう。

※牡蠣については、こちらもご参照ください。
■春菊
β-カロテンをたくさん含む緑黄色野菜です。カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄といったミネラルや食物繊維が豊富で、風邪予防、貧血予防・改善、骨粗鬆症の予防、老化予防などが期待できる食材です。
β-カロテンは抗酸化力が強く、体内でビタミンAに変換され、皮膚・粘膜・髪の毛の健康維持や視力維持などに働きます。 
 
美味しい春菊は、茎は細くて短め、葉の色が濃く、葉が茎の下の方までしっかりとついています。

■大根
大根の白い根(実)の部分には、胃腸の消化を助ける消化酵素(ジアスターゼなど)が含まれています。
酵素の働きを発揮させるには、大根おろしがおすすめで、年末年始で弱った胃腸にはうってつけの食材です。

葉の部分は捨ててしまいがちですが、実は、大根の葉は緑黄色野菜で、根の部分よりもビタミンCが多く、β-カロテンやカリウム、食物繊維なども含んでいます。
 
大根は、根が白くて張りと艶のあるものを、葉がついている場合は、葉がシャキッとしたものを選んでください。

■ねぎ
緑色の部分には、β-カロテン、ビタミンC、カリウムなどが、白色の部分には、硫化アリルという成分が多く含まれています。
硫化アリルは、ねぎ類(にんにく、玉ねぎ、ニラなど)に含まれる特有の強い香り成分です。
血行促進や疲労回復、ビタミンB1の吸収を助けるなどの働きがあります。
 
美味しいねぎは、白色の部分に弾力があり、緑色が鮮やかで、葉先までみずみずしく、巻がしっかりしたものです。

次に、おすすめの組み合わせです。

■水炊き+海藻類
鶏肉や野菜中心のシンプルな水炊きは、たんぱく質、ビタミン、食物繊維と比べるとミネラルが少なめです。
具材にわかめや昆布など海藻類を加えると良いでしょう。

また、鶏の部位にはコラーゲンが豊富な手羽先を使って、春菊やねぎ、大根などビタミンCが豊富な野菜と一緒に摂るとコラーゲンの吸収が高まります。
 
■しゃぶしゃぶ+野菜・海藻類・きのこ類・柑橘類
お肉ばかりを食べがちなので、食物繊維やミネラルを多く含む野菜・海藻類・きのこ類もしっかり食べましょう。
旬の鰤を使った“鰤しゃぶ”もおすすめです。

また、国産レモンは冬が旬です。
レモンをたっぷり搾った自家製ポン酢で食べるとビタミンCの補給に役立ちます。
 
■すき焼き+野菜・きのこ類・こんにゃく
牛肉の赤身の部分には、鉄や亜鉛といったミネラルが豊富ですが、動物性脂肪も含むため、糖質や脂肪の吸収を抑える働きのある食物繊維をしっかり摂りましょう。

薬味には、生姜、唐辛子、にんにく、ねぎ、ごまなどを添えると、さらに体を温める効果がUPします。
【3】鍋にもこだわる?!
ここでは調理器具の“鍋”に注目します。

鍋には色々な材質のものがあります。

一般的に、寄せ鍋やちゃんこ鍋には“土鍋”が、しゃぶしゃぶには“銅鍋”、すき焼きには“鉄鍋”が使われます。

鍋を使いわけるのには、鍋の材質の科学的な特性、「熱伝導(熱の伝わりやすさ)」が関係しています。

熱伝導は、陶器製の土鍋より金属製鍋の方がすぐれています。

そして、鍋の材質による熱伝導の違いが、食材の味わいにも大きな影響を及ぼしているのです。

寄せ鍋を鉄鍋や銅鍋で作ると、野菜が煮え過ぎてしまうのに対して、土鍋で作ると、シャキッとした美味しい食感が残ります。

また、土鍋だと火がゆっくり通るため、旨み成分が凝縮しやすく、煮込み料理に適しているといわれます。

沸騰したお湯へ食材を多めに入れても水温が下がりにくいのは、金属製の鍋の中でもっとも熱伝導が良い銅鍋です。
そのため、銅鍋はしゃぶしゃぶに適しています。

すき焼きは、土鍋で作ると火の通りがわるく、火が通るころには肉は硬くなってしまい、銅鍋だと肉に火が通りすぎて鍋にくっついてしまいます。

鉄鍋は熱伝導が良い上、鍋の温度を一定に保つ蓄熱性にすぐれているため、すき焼きに向いているのです。

このような“鍋”の使いわけも、鍋料理をより美味しくするコツです。
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
今年の“大寒”は1月20日です。

“大寒”は1年でもっとも寒いとされる時季です。

栄養たっぷりの鍋料理で体を温め、この寒さを元気に乗り切りましょう。

今年は未年。
今年も皆様の健康のた“めぇ~”(為)になる情報をお届けできるよう精一杯つとめてまいります。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。
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