健康コラム

no.96
テーマ:「チョコレートと健康」
2015年2月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

寒の明けも近づいてきました。
皆さんいかがお過ごしでしょうか。

今月の14日にはバレンタインデーがありますね。
チョコレートが色々なところで主役になる季節です。

そこで今回はチョコレートと健康との関わりをテーマに取りあげました。
【1】チョコレートは飲みものでした
チョコレートの原料といえば、皆さんご存知のカカオ豆です。

カカオ豆の木は1年間に何千もの花をつけ、そのうち、ほんの一握りだけが実として成長します。

その貴重さから“テオブロマ(神様の食べ物)”という学名がついているほどです。

カカオ豆を発酵・焙煎させたカカオマスに、砂糖を加えて練ったもの(カカオマスの含有量が40~60%)を『ビターチョコレート』や『ブラックチョコレート』、『スイートチョコレート』などと呼んでいます。
さらに粉乳を加えたものは『ミルクチョコレート』と呼ばれます。

今ではチョコレート=“食べるもの”ですが、19世紀に固形のチョコが考案されるまで、長い間“飲むもの”として愛用されていました。

昔のチョコレートドリンクは、カカオマスに含まれる脂肪分がくどく、飲みにくいのが難点でした。

そこで考案されたのが、カカオマスから脂肪分を減らした『ココア』です。
ココアは現在のチョコレートの原型となり、食べるチョコレートが考案されました。

日本にチョコレートが伝わったのは江戸時代の頃とされており、明治になると商品として販売されるようになります。

『猪口令糖』『貯古齢糖』『知古辣』

何だか分かりますか?
これらはすべてチョコレートの当て字として使われていた漢字です。
とてもチョコレートとは思えませんね(笑)
【2】チョコレート(カカオ豆)の成分と香り
最近ではチョコレートは単なるお菓子でなく、様々な機能をもつ食べものとしても注目を集めています。

「疲れた時にチョコレートが食べたくなる」
「チョコレートを食べるとイライラがおさまる」
そんな経験はありませんか?
実はこれもチョコレートのもつ作用なのです。

ここからはチョコレート(カカオ豆)に含まれる主な成分についてお話します。

●カカオポリフェノール
植物が自分の体を守るために作る成分の1つで、老化や生活習慣病の一因とされる活性酸素を消す働き(抗酸化作用)があります。
特にカカオ豆のポリフェノールはコレステロールの酸化を防ぎ、動脈硬化などの生活習慣病の予防にも効果的と考えられています。

●テオブロミン
チョコレートやココアの苦み成分です。
カフェインに似た作用があり、集中力・記憶力・思考力を高めるほか、疲労回復にも役立つとされています。

●カカオバター(ステアリン酸など)
カカオ豆の脂肪分で、飽和脂肪酸を多く含みます。
一般的に飽和脂肪酸は摂り過ぎると、コレステロール値を上昇させ、動脈硬化のリスクを高めることが知られています。
その一方で、カカオバターに含まれる飽和脂肪酸には、血圧の上昇抑制効果やコレステロール値を低下させる働きがあることが分かっています。

●ミネラル
カカオ豆はカルシウムやマグネシウム、鉄、亜鉛など体に欠かせないミネラルの宝庫といわれます。
なかでも、カルシウムとマグネシウムのバランスが良いことで注目されています。

●食物繊維 
カカオ豆には食物繊維が豊富で、ミルクココア1杯(6g)に約0.3g、板チョコ1枚(65g)に約2.3g含まれています。

●香り
チョコレートの甘い香りはカカオ豆の発酵の過程で生まれます。
実は、その香りにもリラックス効果が認められています。

その他にも集中力や記憶力を高めることも最近の研究から明らかになっています。

コスモスの品種で『チョコレートコスモス』という花があります。
チョコレートを思わせるような香りから、人気を集めているそうですよ。

それほどチョコレートの香りは人々を魅了するのでしょうね。
【3】チョコレートにまつわるQ&A
チョコレートの原料となるカカオ豆には、このように身体によい働きが多く知られています。

一方でチョコレートには、
「肥満や虫歯のもとになる」「食べすぎると鼻血が出る」
といったマイナスのイメージもあるかと思います。

それは本当でしょうか?
次のQ&Aで見ていきましょう。


Q.食べると肥満になりやすくなる?

A.いいえ 
たしかにチョコレートは脂質やカロリー量が多いので食べ過ぎはよくありませんが、体重増加の原因となるのは摂取量と消費量とのバランスです。
「チョコレート=肥満」と気にするよりも、食事とのカロリーのバランスを考えることが大切です。

ちなみに、チョコレートの原料のカカオ豆に含まれるカカオバターの脂肪分は吸収率が低く、体脂肪になりにくいことが分かっています。


Q.虫歯になりやすくなる?

A.いいえ
虫歯の原因は食べ物の糖分より、食べ物が口の中にある長さが問題だといわれています。
これはチョコレートを食べた時に限りませんよね。

むしろ、チョコレートの原材料のカカオ豆には虫歯や歯周病を防いだり、進行を抑える成分が含まれています。
もちろん、食後に歯みがきをしっかりすることも大切ですよ。


Q.鼻血が出やすくなる?

A.いいえ
チョコレートは脂質、糖質をたくさん含むので、食べ過ぎると体内でエネルギーが行き場を失い、鼻血が出ると以前は考えられていましたが、医学的な根拠はありません。
チョコレートの食べ過ぎを防ぐために「鼻血が出る」と脅かした…という説もあるそうです。

チョコレートにまつわる噂は、多くが迷信だということが分かりましたよね。

ただ、あくまでも嗜好品であることはお忘れなく!
高カカオのチョコレートは、カカオ豆の成分をより多く摂りたい方におすすめですが、脂質が多いので食べ過ぎには注意してくださいね。
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
最近、友人からメキシコ旅行のお土産にチョコレートを貰いました。
日本のチョコレートよりもスパイシーな味で美味しかったです。

メキシコはチョコレートの原料であるカカオが豊富で、チョコレート発祥の地でもあります。

メキシコでは昔からカカオを薬として利用したり、スパイスとして料理に加えて食べることもあるようです。
特にポピュラーなのが『鶏肉のチョコレートソース煮込み』甘いというよりもスパイスの辛味が効いていて、食べるとクセになる味だそうですよ。
ただ日本人には馴染みがないのでびっくりしますよね…。

いつか食べる機会があれば挑戦したいなと思いつつ、今は甘いチョコレートを食べて歴史に心をはせようと思います。
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