健康コラム

no.100
テーマ:「梅」
2015年6月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

雨の日が多い季節となりました。

6月から7月にかけての初夏の長雨を皆さん、よくご承知のように“梅雨(つゆ)”と呼びます。

この語源には色々な説があるようですが、そのひとつに梅の実が熟す頃に雨が降り続くことからきているといわれています。

さて、今月は“梅雨”にちなんで『梅』についてお話します。
【1】『梅の日』がある?!
はい、あります!!6月6日です。

『梅の日』は、梅の産地で有名な和歌山県田辺市の紀州田辺うめ振興協議会によって制定されました。

その由来は、今から460年以上前の室町時代末期にさかのぼります。

当時、日本各地で日照りが続き、田植えはできず、作物も育たずに、不作で人々は困り果てていました。

どうしたものかと皆が頭を抱えていると、後奈良天皇が神からのお告げを受けます。

そこで、後奈良天皇は「賀茂祭(葵祭)」で有名な賀茂別雷神社(上賀茂神社)に参詣し、賀茂別雷大神に奉納して、祈りを捧げたところ、たちまち雨雲が現れ、雷とともに大雨が降りはじめます。

その雨は恵みの雨となり、五穀豊穣をもたらしました。

その時、後奈良天皇が賀茂別雷大神に奉納したのが“梅”だったそうです。

その記録は、「宮中御湯殿日記(※)」に残っていて、天皇が祈りを捧げた日も6月6日と記されていることから、6月6日が『梅の日』となったようです。

※宮中に仕える女官が当番制で書いていた日記
【2】梅の実イロイロ
梅は、熟しても甘くならず、酸味が強く、糖分の少ないのが特徴の果物です。梅の品種は約300種類を超え、主なものに下記が挙げられます。

◎南高梅(なんこうばい・なんこううめ)
日本でもっとも生産量の多い品種で、生産地は和歌山県が有名です。

果皮の色は緑色ですが、完熟に近づくにつれ黄色味を増し、表面の一部は紅色になるものもあります。
肉厚でやわらかいため、梅干しや甘露煮、梅酒など、何にでも使える万能梅です。

◎古城梅(ごじろうめ・こじろうめ)
南高梅よりやや小さめの“青のダイヤ”とも呼ばれる果皮が緑色の梅です。
主に梅酒や梅ジュースに向いている品種です。

◎白加賀梅(しろかがうめ・しらかがうめ)
古城梅と同じくらいの大きさで、果皮がやや黄緑に近い色をした梅です。
肉厚で繊維が少なく、梅干しや梅酒、梅シロップなどに向いています。主に関東を中心に出回る品種です。 

◎小梅(こうめ)
5g前後の小粒の品種で、カリカリ梅や梅干しなどに用いられます。

梅は梅干しや梅酒などの材料とされ、日本では古くから親しまれてきました。

梅を生のままで食べないのは、外敵から種を守るため、アミグダリンという植物性の自然毒が含まれているからです。

特に熟していない幼い青梅には、熟した梅よりも10~20倍多く含まれていて、実が大きく、熟すにつれ、毒は少なくなっていきます。

加熱したり、塩漬け・酒漬けなどにして長期間漬け込むと、さらに毒は弱まります。

梅干しや梅酒以外にも、梅ジュースに梅シロップ、梅ジャムなど梅は実にイロイロなものに加工され、日本人の食生活とは切り離すことのできない存在です。
【3】『梅はその日の難逃れ』
梅の主成分は、クエン酸・リンゴ酸・コハク酸・ピクリン酸・カテキン酸・酒石酸などの有機酸です。
有機酸の中でもクエン酸がレモンの5~6倍も多く含まれています。

そして、カリウム・リン・カルシウムなどのミネラルや、カロテン・ビタミンB1・B2・C・Eなどのビタミンも含んでいます。

では、その“梅パワー”について見ていきましょう。

①疲労回復を助ける
酸味成分のクエン酸は、疲れの原因物質とされる乳酸の分解を促し、エネルギー代謝をスムーズにするため、疲労回復を早めます。
また、ピクリン酸などが肝機能を高め、二日酔いを予防します。

②胃腸の働きを活発にする 
まず、クエン酸の酸味は消化器官を刺激して唾液など消化液の分泌を盛んにし、食欲を増進させます。
十分な消化液が分泌されると、消化もスムーズになります。

また、クエン酸・リンゴ酸・コハク酸などは腸内の悪玉菌の働きを抑え、整腸作用に優れています。

さらに、最近、唾液中には“パロチン”といって別名“若返りホルモン”とも呼ばれる成長ホルモンの一種が含まれていて、そのホルモンには、体内を若々しく保つ働きがあることがわかってきました。

③食中毒を予防する
クエン酸やリンゴ酸が唾液や胃酸の分泌を促進して、口から入った食中毒の原因となる細菌の増殖を抑えてくれます。

④ミネラルの吸収をアップさせる
クエン酸にはミネラル(カルシウム、鉄、亜鉛など)と結合する性質があるため、ミネラルの吸収を助けてくれます。

これをキレート作用といいます。例えば、カルシウムと結合して、骨を丈夫にしたり、鉄の吸収を助けて、血行促進や貧血予防に働きます。

『梅はその日の難逃れ』という言葉があります。
朝梅干しを食べると、その日の災難を逃れられるということを意味しています。昔の人たちは、上記のような“梅パワー”の存在を経験的に知っていたのかもしれませんね。

それに、これからの季節、梅は夏ばて予防にもピッタリですね。 
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
入梅の頃になると、店先に梅の実が並びます。

よく見ると、そこには「梅干し用」とか「梅酒用」と書いてあったりします。

それは、梅干しや梅酢、梅酒、甘露煮、ジャムなどをつくる際、用途に応じて向き不向きの梅があるからです。

梅干しや酢漬けなどにする場合には、黄色く色づいたくらいから完熟手前くらいの梅が適しています。

固めのカリっとした梅干しがお好みならば、青梅がおすすめです。
そして、果皮が傷ついたり、変色していないものを選びましょう。

梅酒をつくる場合には、青梅を用います。

甘露煮やジャムにするなら、梅干しをつくるときと同じくらいの梅がおすすめです。
完熟して黄色くなっている梅は、ジャムに向いています。

梅の熟し加減や使う梅の品種によって、風味や色合いが違ったものが出来あがってきます。

また、梅は収穫後も追熟がすすみます。

冷蔵庫に入れると、低温障害を起こして茶色く変色してしまうため、新聞紙などに包んで涼しいところで保管するか、なるべく早く加工するようにしましょう。

梅雨で外出がためらわれる今日この頃、お家で梅干しや梅酒づくりに挑戦してみてもいいかもしれませんね。
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