健康コラム

no.142
テーマ:「お雑煮」
2018年12月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

いきなりですが、みなさんの地域のお雑煮はどのようなものでしょうか。

2年前、おせち料理についてお話ししましたが、おせち料理にも地域ごとの特色があったように、お雑煮にも地域差があります。

みなさんの中には、元旦にお雑煮を食べないと1年が始まらないという方も多いと思います(私もそうですが・・・)。

しかし、最近は、昔ながらの行事や食に関心がない方や疎い方も多くなっていると言われていて、おせち料理やお雑煮などを食べずに育っている子もいます。

今回は、少しでも行事を楽しむきっかけになればということで、「お雑煮」についてお話しします。
【1】お雑煮の歴史
お雑煮は1年の無事を祈って、お正月に食べる伝統的な日本料理です。
日本各地でお雑煮を食べる風習がありますが、沖縄ではお雑煮を食べません。

では沖縄のお正月はというと、ハレの汁ということで、中味汁(なかみじる)と呼ばれる豚のモツが入った汁を食べるようです。

ひと口にお雑煮といっても、出汁や味噌の種類、餅の形、具の種類など地域ごとに様々なお雑煮があります。

お雑煮の歴史をさかのぼってみると、室町時代にはすでに食べられていたようです。
当時は、必ず一番初めに酒の肴(さかな)としてお雑煮が振舞われていました。

この風習が元となり、新しい年の始まりである元日にお雑煮を食べるようになったと言われています。

しかし、餅の原料である米はとても高価であったため、一般庶民のお雑煮には餅の代わりに里芋が入っていたようです。

江戸時代になると、一般庶民でも簡単に餅が手に入るようになり、北海道や沖縄を除いて全国的に餅入りのお雑煮でお正月を祝うようになりました。

現在では、北海道にもお雑煮文化はありますが、その文化は、明治時代以降に本州から持ち込まれた文化だと言われています。

600年ほど前の方々と同じお雑煮を食べているかもしれないと考えると、ちょっと興味が出てきませんか。
【2】なんで西は丸餅、東は角餅?
お雑煮は地域によって出汁の違いや具材の違いがあります。

味付けについては、きれいな境界線はなく、例えばすまし汁は、東日本や西日本にもある文化です。

しかし、餅の形については、比較的きれいに分かれています。

その分かれ目となるのは、天下分け目の合戦が行われた岐阜県の関ヶ原。
それよりも西では丸餅に、東では角餅の文化になっています。

丸餅と角餅が混在する文化のある県は、基本的(※)には、岐阜県・石川県・福井県・三重県・和歌山県となっており、関ヶ原の合戦後、東西で文化に違いが生じていたと読み解くことが出来ます。

※一部例外もあります。
山形県庄内地方は、北前船(きたまえぶね)の寄港地だったので、北前船の運んできた京都の文化の影響を受け丸餅文化になっているようです。
丸餅圏でも高知県や鹿児島県には、角餅の地域も見られます。

一部の例外はありますが、現在の餅の形は関ヶ原を境に変わっていますので、もし違う場所で合戦が行われていたとしたら、今私たちが何の気なしに食べているお雑煮とは地域によっては見た目が違ったものになっていたかもしれません。
【3】各地のめずらしいお雑煮
お雑煮の種類は、餅の形とその調理法(焼く/煮る)、出汁、具材が地域によって異なるので、100種類以上あると言われています。

その地域で生まれ育ち、食べていると普通に感じますが、他県からみると、変わっていると感じるようなめずらしいお雑煮があります。

みなさんの地域のお雑煮はどうでしょうか?
私が住んでいる京都の白味噌のお雑煮もめずらしいかとは思いますが…。

各地のお雑煮を一部にはなりますが、ご紹介します。


◎京都のお雑煮(本社所在地の京都から)

餅:丸餅(煮る) 出汁:昆布・かつお/白味噌 具材:根菜

京都のお雑煮は、白味噌仕立てです。
また、食材は全部丸く切ります(輪切り)。
丸く切るのは、「家族円満」「ものごとを丸く収める」という縁起をかついでいるためです。

大根や金時にんじんは全員同じものが入りますが、里芋やえびいもについては人により入るものが異なります。
一家の長や長男には、頭芋(かしらいも)が、女性やその他の子供たちには、子芋が入ります。

「人の頭になりますように」「子孫繁栄」などのそれぞれの意味があるからと言われています。

※大根を丸く切る?と思われた方に少し補足をしますと、「雑煮大根」と呼ばれるものがお正月付近にのみ出回ります。
にんじんほどの細さなので、丸く切ってお雑煮に入れられるサイズです。
気になられた方は、インターネットで検索してみてください。


◎岩手のお雑煮

餅:角餅(焼く) 出汁:煮干し 具材:くるみだれ

岩手全域で餅にくるみだれのトッピングはあるそうですが、宮古地域では、お雑煮の餅を取り出し、くるみだれにつけて食べる文化があります。

汁も具だくさんです。
海に面しているので、いくらや地域によっては、ほたてやあわびまでのったお雑煮を食べます。

元伊達藩だったところでは、お雑煮以外にも餅をたれにつけて食べる文化があるそうです。
くるみだれだけでなく、ごま、納豆、大根、あんこなど様々なものがあります。

くるみだれは甘いので、甘い物好きの方は食べてみてください。


◎鳥取のお雑煮

餅:丸餅(煮る) 出汁:小豆 具材:なし

山陰地方では、小豆のお雑煮を食べます(見た目はぜんざいです)。
出雲がぜんざい発祥の地であることからその文化が出来たようです。

小豆の赤色には邪気を払う力があり、縁起がいいとされています。

県中部の三朝(みささ)では、昔、米があまりとれなかったので、とちの実で作ったとち餅をお雑煮に入れるようになりました。

とちの実はとてもアクが強いので、長い時間かけてアクをぬいた後、もち米と一緒に炊いて餅にします。


◎福岡のお雑煮

餅:丸餅(煮る) 出汁:あご 具材:鰤(魚介)

福岡のお雑煮といえば「鰤」「あご出汁」「かつお菜」です。

最近はあご出汁がブームになっていますが、あごを使った出汁の最大消費地域が博多と言われています。

具材は、出世魚の鰤とかつお菜が入ります。

私は勉強不足で知りませんでしたが、かつお菜は、福岡の伝統野菜です。
福岡でも12月と1月にしか出回らないようです。
「勝男菜」の字をあて、縁起物としても知られています。
鰹節のようにうまみの強い野菜です。


まだまだ気になるお雑煮はたくさんありましたが、ここでは4つだけご紹介しました。

他にも、あんこ餅を入れるお雑煮や鶏がら出汁のお雑煮など・・・本当に様々なお雑煮があります。

気になられた方は、調べてみてください。

※県単位で説明しているので、地域によっては異なる場合もあるかもしれません。何卒ご了承くださいますようお願いいたします。
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
お雑煮についてお話ししようと思ったのは、もちろん昔ながらの行事を伝えたいというのもありますが、一番は、大学時代に友人とふとお雑煮の話になった時にめちゃくちゃ盛り上がったからです。

自分は普通だと思っていても、他の地域に住んでいる方から見ると「何それ!」とびっくりする部分もあり、また感心する部分もあり(まわりも管理栄養士なので、盛り上がるのかもしれませんが)、とても楽しい時間でした。

お正月は帰省をしたり、遠いところに住む親戚と会う方も多い時期ですよね。

ここに挙げたのは、ほんのわずかなので、いろんな地域のお雑煮について、また「食」について話すきっかけになればと思います。

いつもお話ししているようにそれも1つの“食育”になりますので、なにげない食育を行っていただければ嬉しいです。

私は白味噌のお雑煮しか食べたことがありませんので、みなさんのおすすめがあれば教えてください。

おすすめがあれば、2019年は白味噌以外のお雑煮にもチャレンジします!
(その時は感想を何らかの形でお届けします。)

次回の配信は、2019年1月7日(月)です。
みなさんよいお年をお迎えください。
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