健康コラム

no.130
テーマ:「鰤」
2017年12月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

12月20日は“鰤の日”です。

「鰤」読めますか。
この漢字、「ぶり」と読みます。

魚偏(さかなへん)に師と書くので、「師走」にちなみ、12月に記念日が作られました。
ちなみに、20日は、「2(ぶ)0(り)」の語呂合わせで決められたそうです。(私は少し無理がある気がしますが…)

特に、この季節の鰤(寒ブリ)は、脂がのっていて、とってもおいしいですよね。

おいしさとともに、知っていただきたい情報もありますので、今月は、「鰤」についてお話しします。
【1】出世魚「鰤」
鰤が出世魚というのは、多くの方がご存知かと思います。

出世魚とは、魚の成長とともに呼び名が変わり、成長すると、本来の名前や特別な名前で呼ばれる魚のことを言います。

昔は、元服や出世に伴って名前を変えており、それと出世魚が似ているため、縁起を担いで喜ばれたそうです。

成長段階別の呼び名は、地域によって異なっていましたが、全国に広く分布するものは、昔と比べると、統一されるようになりつつあります。
(まだまだ異なる呼び方も多いですが…)

関東や関西での鰤の呼び名については以下の通りです。

関東:ワカシ・ワカナゴ→イナダ→ワラサ→ブリ
関西:ワカナ・ツバス→ハマチ→メジロ(イナダ)→ブリ

その他の地域では、違った名称で呼ばれていることも多くあります。
気になられた方は、お住まいの地域の呼び名を調べてみてください。

鰤以外の出世魚としては、ボラ、スズキ、サワラ、コノシロなどがあります。

それぞれの魚がどのように名前が変わっていくのか、こちらもよろしければ調べてみてください。
【2】鰤の栄養について
出世魚の鰤。
昔は縁起を担いだ魚として喜ばれていましたが、栄養面でも嬉しいことがたくさんあります。

鰤に含まれる主な栄養素についてお話しします。


◎不飽和脂肪酸
DHA・EPA
青魚に多く含まれ、どちらも血液の流れをスムーズにする働きが認められています。
(血中のコレステロールや中性脂肪を減らすことにより、血液がスムーズに流れやすくなります。)  

≪2つの成分の違い≫
・DHA(ドコサヘキサエン酸)
脳の血管にも入ることが出来るので、脳の機能向上、抗うつ作用もあり、さらには記憶学習能力にも関わると言われます。

・EPA(エイコサペンタエン酸)
抗炎症作用、免疫調節作用、脂質代謝改善作用があります。
脳の血管には入ることが出来ませんが、心疾患などの予防に大切な栄養素です。

◎ビタミンB1
炭水化物を代謝する際に必要な栄養素です。
さらに、神経機能の維持にも欠かせません。

◎ビタミンB12
赤血球の構成成分であるヘモグロビンの生成に欠かせませんし、神経機能の維持にも関わります。

◎ビタミンD
カルシウムやリンの吸収に必要なたんぱく質の合成を盛んにすることで、体内のカルシウムの吸収を助けます。
また、骨へのカルシウムの沈着もサポートします。

◎ビタミンE
抗酸化作用を持ちます。
また、末梢神経を拡張させて、血液の流れをスムーズにするためにも欠かせません。

◎タウリン
血合いの部分に多く含まれています。
疲労回復を助けます。
さらに、血圧やコレステロールの調節をサポートします。

DHA・EPAには、身体にとって様々な良い働きがありますが、酸化されやすく、過酸化脂質になると細胞を破壊してしまいます。
鰤には、酸化を予防する働きのあるビタミンEが含まれていますので、DHA・EPAが酸化されにくくなっています。

また、DHA・EPAは、火を通すことで流出し、特に揚げ物などでは、50~60%程度も溶け出してしまうとも言われています。

DHA・EPAにとって効果的な食べ方は生のまま食べることなので、「お造りやお寿司」が最適と言えます。

しかし、生で食べる際には注意が必要になってきます。
次は、その点について見ていきましょう。
【3】鰤にいる寄生虫とは…
鰤に特有の寄生虫として、「ブリ糸状虫(しじょうちゅう)」があります。

この寄生虫は、体長50cmを超すものもあります。
スーパー等で切り身を買う際に、見かけることはほぼありませんが、
1本買いをし、自分たちで捌(さば)く際には、比較的よく見受けられます。
(私はスーパーで買った切り身の中からおそらくブリ糸状虫かと思われるものが出てきた経験がありますが…)

ブリ糸状虫は、人に寄生することはありませんし、害があるものでもありませんが、見つけたら取り除いて食べるようにしてください。


さて、寄生虫といえば、食中毒を引き起こす「アニサキス」をご存知でしょうか。

アニサキスは、クジラやイルカ等の海洋哺乳類で成虫になる寄生虫であり、その幼虫はサバやスルメイカ等の魚介類に寄生します。

アニサキスの幼虫は、人の体内では成虫になることが出来ないので、通常は排泄されますが、アニサキスが寄生した魚介類を生や生に近い状態で食べると、ヒトの胃や腸壁に侵入し胃腸炎を起こす、いわゆるアニサキス症になることがあります。

アニサキス症は、多くが食べてから8時間以内に症状が現れ、主に激しい腹痛を生じます。
吐き気、嘔吐、じんましんなどを伴うこともあります。

アニサキスは、サバ、サケ、ニシン、スルメイカ、イワシ、サンマ、ホッケ、タラ、マス、ブリなどに寄生していると言われます。
(アニサキスの寄生したものを餌として与えていない限り、養殖魚には、アニサキスの寄生がほぼ見られません。)


予防方法としては、以下の3点が挙げられます(厚生労働省HPより)。

①鮮度を徹底
②目視で確認
③冷凍・加熱で予防


①鮮度を徹底
アニサキスの幼虫は、内臓に寄生しており、鮮度が落ちると、筋肉中(通常私たちが食べる部分)に移行することが知られています。
そのため、鮮度が良いものを買うこと、丸ごと1匹買った場合は、速やかに内臓を除去することも大切です。


②目視で確認
アニサキスの幼虫は、目で見える程度の大きさ(半透明白色の渦巻き状、長さが2~3cmくらい)ですので、調理する前によく確認し、見つけたら除去してください。

インターネットで検索しても画像が出てきますので、よろしければ検索してみてください。
(中には衝撃的な画像もありますので、ご注意ください。)


③冷凍・加熱で予防
-20℃で24時間以上(中心部まで)凍結させることや60℃では1分、70℃以上で加熱することで予防が出来ます。
(家庭用の冷凍庫では-20℃にすることが難しい部分もありますが…)


ちなみに、通常の料理で用いる程度のわさびや醤油、酢では死滅しませんのでご注意ください。


昔よりも冷蔵技術や輸送機能が発達し、鮮度の良いまま(冷凍させずに)流通させることが可能になったことにより、アニサキス症は増えているとも言われます。

上記の予防方法なども頭に入れながら、食べるようにしてください。
気になられる方は、しっかり火を通してから食べるようにしましょう。

※激しい腹痛など、アニサキスによる食中毒が疑われる場合には、速やかに医療機関を受診するようにしてください。
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
みなさん、“魚、お好きですか?”“最近いつ食べましたか?”

最近は、魚離れが進んでおり、あまり魚を食べない人もいるかと思います。

2006年、日本人の1日当たりの魚介類の摂取量が、初めて肉の摂取量を下回りました(魚介類80.2g、肉類80.4g)。
それから約10年、2015年の同調査では、魚介類は69g、肉類は91gでした。
(いずれも厚生労働省 国民健康栄養調査より)

昔は、若い人は「肉」、年齢を重ねるにつれて「魚」を好むとされており、実際、摂取量にも表れていました。
しかし、上記の結果にもあるように、年が経つごとに(現在に近づくにつれ)、肉類の平均摂取量が多くなってきています。
これには、食の欧米化により、昔に比べ、高齢になっても「魚よりも肉を多く食べる」という人が増えていることも関係しています。

もちろん肉類がダメというわけではないですし、肉類にも様々な栄養素が含まれていますが、鰤をはじめ、魚介類にもそれぞれ様々な栄養素が含まれています。
特に、DHAやEPAは鰤など青魚に多く含まれる栄養素です。

普段、魚をあまり食べない方も、この健康コラムを読んで、鰤だけでなく、魚を食べていただくきっかけになればいいなと思っています。

生で食べるときは、寄生虫に注意して食べるようにしましょう。


最後は、魚偏の漢字クイズで終わりたいと思います。

鯔・鱸・鰆・鮗

さて、なんと読むでしょうか。
答えは、この健康コラム内にありますので、よろしければ探してみてください。

ヒントは、“いずれも出世魚”です。

みなさん、良いお年をお迎えください。
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