健康コラム

no.106
テーマ:「冬至」
2015年12月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

2015年もあとわずかとなりました。

今月の22日は、冬至です。

冬至は1年のうちで昼が最も短く、夜が長くなる日です。

昔からこの日に“ゆず湯”に入って“かぼちゃ”を食べると、寒い冬を元気に過ごせるなどと言い伝えられています。

日本には、冬至のように四季の移り変わりとともに、季節に応じた様々な行事や風習があります。

さて、今月はその冬至について見ていきましょう。
【1】なぜ“かぼちゃ”を食べる?
今ではすっかり日本の食卓に定着しているかぼちゃ。
かぼちゃが日本に入ってきたのは16世紀中頃。

かぼちゃの原産はアメリカ大陸(西洋かぼちゃは中米、東洋かぼちゃは南米)で、そこからヨーロッパにわたり、その後、各地に広まっていったようです。

日本へはカンボジアを経由して入ってきました。
かぼちゃという名前は、カンボジアという国名に由来し、当初“カンボジア瓜”と呼ばれていたのが、かぼちゃへと変化していったとも言われています。

かぼちゃが本格的に普及し始めたのは江戸時代中期あたりからで、急激に寒くなる季節の風邪や中風[※1]の予防にと、かぼちゃを食べる習慣が根付いていったようです。

かぼちゃの旬は、冬至に食べる風習などから冬の食べ物のイメージがありますが、実は、6月から9月頃の夏がかぼちゃの旬です。

今はスーパーマーケットへ行けば、旬に関係なく、年中、野菜を手に入れることができますが、昔の日本では冬至の頃になると、秋野菜の収穫は終わってしまい、保存の効く野菜は少なく、冬に食べられる野菜はほとんどありませんでした。

そのような中、かぼちゃは切らずに丸ごとのままなら長期保存が利くので、食べ物に困る冬に重宝され、寒い冬を無事に乗り切れるようにと願いを込めて大切に食べられていたようです。

実際に、かぼちゃにはカロテンが豊富に含まれています。

カロテンは体内でビタミンAに変わって肌や粘膜を丈夫にし、ウイルスや細菌などに対する抵抗力(免疫機能)を高めてくれます。
さらに、抗酸化力に優れているため、がんや動脈硬化(中風)などの予防に期待ができるのです。

[※1]脳卒中の発作の後遺症として主に半身不随となる状態
【2】なぜ“ゆず湯”に入る?
冬至にゆず湯に入るのには諸説あるようです。

冬至は、“一陽来復(いちようらいふく)”とも言われます。

一陽来復は、古来から中国に伝わる易経[※2]に出てくる言葉で、旧暦の11月や、冬が去り春が来ること、新年が来ること、悪いことが続いた後ようやく物事が良い方向へ向うこと、といった意味があります。

冬至(一陽来復)は、旧暦で11月にあたります。

冬至までの10月の間は悪い気(陰の気)で覆われていて、それが、旧暦の11月の冬至を境に悪い気は精算され、良い気(陽の気)が復活するため、冬至は運気が上昇しはじめる日で、1年間の区切りの日として考えられていました。

そのため、冬至から1年の運気の上昇を願って、運気を呼び込むための厄払いとしてゆず湯で身を清めていたようです。
そして、それが冬至にゆず湯へ入る風習として定着していったようです。

それから他の説としては、ゆずは実るまでに長い年月を要することから、長年の苦労が実りますようにという願いや、ゆずの木は寿命が長く、病気にも強いため、そのゆずにあやかって、ゆず湯に入って無病息災を祈ったという説など様々あるようです。

そして、少々強引な印象を受けましたが、冬至は“湯治[※3]”や、ゆずは“融通が利く”の語呂合わせから縁起かつぎで、ゆず湯に入るようになったという説もありました。

確かに、ゆずなどの柑橘系は古くから風邪薬などに用いられてきました。現代でも、ゆず湯は血行を促進して冷えを緩和し、風邪を予防したり、果皮に含まれるクエン酸やビタミンCなどには美肌効果が期待できます。

また、ゆずの香りにはリラックス効果があることが知られています。

昔はハンドクリームもなければ、ハンドクリームを塗る習慣もなかったでしょうし、冬の冷たい水で荒れたハンドケアにゆず湯は一役買っていたに違いありません。

[※2]五経の1つで、占いの理論と方法を説く書物
[※3]湯治とは温泉などで療養を行うこと
【3】他にもあります
冬至には、かぼちゃを食べたり、ゆず湯に入る以外にも、様々な風習があるようです。その中でも食べ物に関するいくつかをご紹介します。

■「ん」が2つ付く食べ物
「にんじん」「だいこん」「れんこん」「ぎんなん」「きんかん」「うんどん(うどん)」などです。

もちろん、「なんきん(かぼちゃ)」も含まれ、これらを食べると病気にならず、幸運が訪れるという言い伝えがあります。
「ん」[※4]の付くものを“運盛り”といい、縁起をかついでいたようです。

 また、「うどん」については、言葉の響きから、“運鈍根”に例えられ、縁起が良く、出世するとも言われています。
“運鈍根”とは、運は“幸運”、鈍は“愚直”、根は“根気”をあらわし、開運や物事を成し遂げるための3要素と言われています。

■小豆粥
小豆のような赤い色のものは、邪気をはらうと言われ、中国や韓国でも食べる風習がありました。

冬至に食べる小豆粥は「冬至粥」とも呼ばれ、冬至の翌日から運気が上昇するよう願いを込めて食べられてきました。

小豆の主成分はでんぷんとたんぱく質です。
ビタミンでは、ビタミンB1を多く含んでいて、疲労回復を助けます。
小豆の利尿作用は有名ですが、これは小豆の皮に含まれるサポニンという成分によるものです。
また、便通促進や解毒作用による二日酔いの改善などにも期待ができます。

■こんにゃく
冬至にこんにゃくを食べる風習のある地方もあります。
こんにゃくは「お腹の砂おろし」と言って、昔から体内の老廃物を排出してくれる食べ物として知られていました。

そして、冬至以外にも大晦日、節分、大掃除の後などにも 体内の毒素(老廃物)を出して、体内を清めることを目的として食べられていたようです。また、こんにゃくには食物繊維が豊富です。

食物繊維は、胃や小腸で消化・吸収されずに大腸まで届き、腸内の老廃物を吸着して排泄し、腸内の環境を整えてくれます。 

[※4]「にんじん」「かんてん(寒天)」「れんこん」「ぎんなん」「きんかん」「うんどん(うどん)」「なんきん(かぼちゃ)」を“冬至の七種”とされるようです。
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
冬至を境に日は長くなっていくものの、寒さは本格化していきます。

現代の栄養学の観点から見ても、今日、ご紹介した昔ながらの冬至の風習は、寒さに負けない体づくりや、冬場の栄養補助に役立っているのです。

かぼちゃに含まれるビタミンの抗酸化作用は、風邪など様々な感染症を予防するために欠かせません。

にんじん、だいこん、れんこんなどの野菜やこんにゃくに豊富な食物繊維は、私たち、現代人に不足しがちな栄養素で、腸内環境の改善にも役立つため、積極的な摂取が望まれます。

腸は“ヒトの体の最大の免疫器官”と呼ばれ、腸内環境と免疫機能は密接に関わっています。
腸内環境が整うと、免疫機能のアップにつながります。

寒さに負けないために、是非、冬至には今日ご紹介した食材を食事に取り入れていただき、元気に新年を迎えましょう。
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