健康コラム

no.109
テーマ:「ひな祭り」
2016年3月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

あかりをつけましょ ぼんぼりに~♪
お花をあげましょ 桃の花~♪

もうすぐ3月3日。“ひな祭り”ですね。
ひな人形を飾って、女の子の健やかな成長を願います。

日本には四季折々に昔から伝わる“ひな祭り”のような伝統行事があります。

そして、季節ごとの伝統行事やお祝いの日には、家族の幸せや健康を願って食べる特別な料理があり、これを“行事食”といいます。

今月は“ひな祭り”や、その“行事食”についてのお話です。
【1】ひな祭りの起源って?
現在、ひな祭りは女の子のお祭りとして、広く認識されていますが、その起源をたどると、当初は女の子だけのものではなかったようです。

私たちが知っているひな祭りは、“上巳節(じょうしせつ)”と“ひな遊び”が合わさってできたと考えられています。

まず、“上巳節”というのは老若男女を問わず、旧暦3月の巳(み)の日に中国で行われていた行事です。
無病息災を願って、季節の変わり目に、川や海で身を清める(厄払い)ということが行われていました。

それが、平安時代に日本へと伝わり、日本の貴族社会の小さな女の子の間で行われていた“ひな遊び(人形遊び)”と結びつきます。

それから、紙人形などにけがれを移して川や海に流し、健康と幸せを願うようになりました。

今でも“流しびな”という行事として、一部地域では受け継がれています。
これがひな祭りの起源としていわれています。

江戸時代になると、3月3日の上巳の節句(桃の節句)は女の子の日、5月5日の端午の節句は男の子の日として定着しはじめます。

この頃からひな人形を飾るようになり、最初は武家で飾られていたひな人形も、徐々に裕福な商家や名主の家庭へも広がっていきました。

そして、次第に3月3日は、私たちが知っている“ひな祭り”の日として、確立されていったのです。
【2】ひな人形のいろいろ
ひな人形を飾る理由は諸説ありますが、“人形が身代わりになって子供に災いが降りかかりませんように”とか、“幸福な人生を送れますように”といった家族の想いや願いを込めて飾るようになったというのが有力なようです。

飾りはじめた当初のひな人形は、紙製で、立ち姿でした。
その後、人形作りの技術はどんどん進歩していきます。

江戸時代初期、お殿様とお姫様だけだったひな人形に、江戸時代中期になると、段を組んで飾る“段飾り”が登場します。

そして、お殿様とお姫様以外に、三人官女、五人囃子、左大臣、右大臣、仕丁などが増え、豪華な装飾になっていきました。

ひな人形は、節分の翌日の立春頃から2月中旬にかけて飾りはじめ、3月3日のひな祭りから1週間以内くらいで片付けるのが一般的ですが、関西地方の一部地域では旧暦(4月)まで飾り続けるところもあるようです。

また、関西(京都)と関東では、ひな人形の飾り方が異なり、お殿様とお姫様の位置を逆にして飾ります。

関西(京都)のひな人形を“京雛”といい、向って右側にお殿様が座っています。
これは、“京雛”が日本古来の「左上座」にならって飾られているからです。

向って左側にお殿様が座っているのを“関東雛”といいます。
“関東雛”は、現在、一般的に広く売られているひな人形です。

これは明治時代から西洋文化が入ってきた流れで、国際儀礼の「右が上位」という考えからきています。

現代は、日本の狭い住宅事情から、飾る場所を考慮して、お殿様とお姫様のみを飾るコンパクトなタイプのひな人形も多く流通しています。

次項では、ひな祭りの「行事食」について見ていきましょう。
【3】ひな祭りの行事食
ひな祭りに食べる代表的なものといえば、ちらし寿司、はまぐりのお吸い物、甘酒(白酒)、菱餅、ひなあられなどが挙げられるのではないでしょうか。

これらを食べるのには、それぞれ意味があります。

◎ちらし寿司 
スシは漢字で“寿司”と一般的に書きますが、「寿(ことぶき)を司る」と書き、縁起が良く、お祝いの席で食べるものという意味があるのです。

さらに、具材にも縁起が良いとされる食材が使われていて、まず、えびは健康や長生きを意味しています。
それから、れんこんは見通しがきく、豆は健康でまめに働けるという意味があるそうです。
 
また、ちらし寿司にはたくさんの具材を使用しますので、様々なものをバランス良く食べて、体調を崩しやすい季節の変わり目に健康を保てるように、大人になっても食べるものに困らないように、幸せに暮らせますようにといった願いも込められているようです。

◎はまぐりのお吸い物
はまぐりは2枚貝ですが、他の2枚貝とは違って殻が対でないと絶対に合わさらないことから、はまぐりのようにぴったりと合った、運命の人と巡り合えますように、良縁に恵まれますようにと願って食べられるようになったそうです。

また、仲の良い夫婦をあらわしていて、一生1人の人と添い遂げられるようにという願いが込められた縁起物として婚礼の料理にもはまぐりは用いられます。

◎白酒(甘酒)
中国では、桃の花は邪気をはらい、気力や体力の充実をもたらす長寿の象徴とされていました。

また、桃は「百歳(ももとせ)」に通じるため、もともと桃の花びらを漬けた「桃花酒」を飲む風習がありました。
それが江戸時代中期になってからは、みりんに蒸した米や麹を混ぜて1ヶ月ほど熟成させた「白酒(甘酒」が好まれるようになりました。 

白酒(甘酒)については、こちらもご参照ください。
◎菱餅
昔は自然の食材を使って菱餅の3色を作り出していました。
それぞれの色には意味があります。

緑色はヨモギの新芽によるものです。
ヨモギには造血効果があって、緑色には健康や長寿の意味があります。
地方によってはひな祭りにヨモギ餅(草餅)を食べるところもあります。

白色の部分にはヒシの実が用いられ、ヒシの実には血圧を下げる働きがあります。
白色は、子孫繁栄、長寿、清浄などを意味しています。

桃色(ピンク色はクチナシの実で色づけられています。
クチナシには解毒作用があり、魔除けを意味しています。

それから、菱餅を食べるときは菱餅の角をちぎりながら食べると角がたたずに丸く生きられるそうです。

◎ひなあられ
昔は“ひなの国見せ”といって、ひな人形をもって野山や海辺へ出かけ、ひな人形にも春の景色を見せてあげようとする風習がありました。

その時、持参したお菓子がひなあられだったそうです。

ひなあられは、関東と関西では味も見た目も違います。
関東風のひなあられは米粒ほどの大きさで、お米を爆ぜて作ったポン菓子を甘く味つけしたものなのに対して、関西風のものは醤油味や塩味で、直径1㎝程の大きさをしています。
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
この時季、スーパーではまぐりを見かけると、ひな祭りや春の訪れを感じます。
風物詩の1つですね。

地域によって、伝統行事のお祝いの仕方が異なるように、伝統食にも地域ごとに違いが見られるようです。

食に常に関心がある栄養士としては、調べていて、とても興味深かったです。

ここでは長くなってしまいますので、割愛しますが、どの行事食においても、共通していたのは、その季節ごとの旬の食材が使用されているものが多いということです。

体調を崩しやすい季節の変わり目、行事食や旬のものを使った栄養バランスの良い食事を食べて元気に乗り切りましょう。
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