健康コラム

no.177
テーマ:「減塩」
2021年11月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

11月になりました。
ぐっと寒くなり、秋はいつの間に過ぎたんだろうと不思議に思っています。

秋から冬にかけて気温が低下すると血管がきゅっと収縮し、血圧が上昇しやすくなります。

そこで今回は血圧とも深く関係する『減塩』をテーマにお届けします。
減塩に取り組むことは血圧が正常な方にも大切ですので、是非ご覧ください。
【1】減塩はどうして大事なの?
「塩分を摂りすぎると高血圧になる」という話はよく聞きますよね。
塩分と血圧はどのように関係しているのでしょうか。

塩辛いものを食べるとのどが渇きますよね。
これは食塩(ナトリウム)を過剰に摂ると、体がその濃度を薄めようとして水分を欲するからです。

水分を摂ると体の血液量が増えることになります。

体の中でポンプの役割を果たし、血液を送り出しているのが心臓。
心臓は増えた血液量を送り出すためにより大きな力が必要になります。

これが、血圧が上昇するメカニズムです。

また、血圧が高い状態が続くと、心臓はもちろんのこと、血管や腎臓にも負担がかかることになります。

もちろん高血圧の原因は塩分の摂りすぎだけではありませんし、中には食塩を多く摂っても血圧への影響があまりない方もいます。

しかし、日本人の食事摂取基準2020年版では食塩摂取量の目標量がさらに引き下げられ、成人男性では8gから7.5gに、女性では7gから6.5gに(※)。

※日本人の1日の平均食塩摂取量は9.9g

生活習慣病の予防に減塩がいかに重要視されているかがわかりますね。

血圧についてはこちらの健康コラムもご参考ください。
【2】自分の舌は濃味好き?薄味好き?
自分の舌が濃い味が好きか、薄い味が好きかを判定する面白い方法(※)がありましたのでご紹介します。
用意するものはペットボトル入りの「経口補水液」と「水」、「コップなどの容器」の3つです。

経口補水液をペットボトルのキャップに入れ、コップに移します。
そして今度は水をキャップに入れ、同じコップに加えます。

経口補水液と水が1対1の状態で、飲んだ時に「しょっぱい」と感じた方は薄味です。
「ちょっとしょっぱい」だと普通、「全然感じない」だと濃味の舌です。

経口補水液がないという方はここ最近に食べた献立を思い出してみてください。

ラーメンやうどんの汁をよく飲んでいたり、ソースやドレッシングをしっかりかけていませんでしたか。
また、お酒のおつまみとして塩気の効いたものを好んでよく食べている方も濃味の可能性があります。

もし、濃味の舌だったとしても諦めないでください!
その理由は次の項でご紹介します。

※『はじめての減塩』東京慈恵会医科大学附属病院栄養部 著より
【3】減塩のコツ
『減塩のコツ』と調べると、いろんな方法を目にしますよね。
その中でもまずはここを!というポイントを4つにまとめました。

●薄味に慣れる

1週間~10日間ほどあれば人間の舌は薄味に慣れていくそうです。

前項でご紹介した書籍では、はじめは味の薄い病院食に不満をこぼしていた患者さんが、慣れると美味しく食べられるようになったという例が紹介されています。

いつも作る料理の味付けを少し減らし、その味に慣れたらまた減らす…という風に少しずつ薄味に慣らしていきましょう。

コロナ禍で「外に出て食事をする機会が減った」「家で自炊する機会が増えた」という方は今こそ薄味に慣れるチャンスです。


●身近な食品の塩分の量、塩分の高い食品を知る

味噌汁やラーメン、梅干しなどの漬物類は一般的に塩分が多いことは皆さんよくご存じかと思います。

しかし、意外な食品にも目に見えない塩分が多く含まれているんです。
そのため、普段何気なく食べている食品にどれくらい塩分が含まれているかを知ることは大切ですよ。

例えば朝食に食パンとロースハム2枚、チーズ1切れと生野菜のサラダを食べた場合…。
・食パン(6枚切り)1枚 約0.7g
・ロースハム2枚 約0.7g
・プロセスチーズ(25g) 約0.7g

何も味付けしなくても約2.1gの塩分を摂ったことに。
さらにパンにバターを塗ったり、サラダにドレッシングをかけた場合、さらに塩分量が増えますね。

食パンや麺類(特に乾麺)など塩辛くない食品にも、パンを膨らましたり麺にコシを与えるために塩分が使われています。
また、ハムやチーズ、練り製品などの加工食品も塩分が多い傾向にあるので、食べ過ぎには注意しましょう。

ちなみにご飯の塩分は0なので、パンをご飯に置き換えられる方はその方法でも!

2020年から食品には食塩相当量の表示が義務付けられるようになりましたので、普段よく食べる食品の表示はチェックするようにしましょう。


●減塩食品・減塩調味料を使う

減塩のために料理の作り方や分量を変えるのは難しい…という方は減塩タイプの食品や調味料を選んではいかがでしょうか。

酢・ケチャップ・マヨネーズなどは元から比較的塩分が少ないので、併せて上手く活用しましょう。
また、しょうゆをだしや酢、レモン汁などで割るのも減塩につながります。


●塩分の排泄を助けてくれるカリウムや食物繊維を含む食品を摂る

時には塩気の効いた料理が食べたくなる時もありますよね。
そんな時はカリウムや食物繊維を含む食品を積極的に摂りましょう。
体内の塩分を便や尿と一緒に排泄してくれる働きがあります。

食物繊維が多い食品:穀類・野菜(根菜類)・いも類、きのこ類、海藻類・豆類など

カリウムが多い食品:野菜・いも類・海藻類・果物など

また、味噌汁などの汁ものは塩分量が多くなりがち。
具だくさんの汁ものにすることでカリウムや食物繊維が摂れるだけでなく、汁の量も少なくなりますよ。


余談ですが…。
以前、買い置きの味噌を常温保存していたら、黄色から濃い茶色に褐変。
その味噌を使ったところ、色が濃いので「味噌汁濃いめの味で美味しい」と好評だったことがあります。(実際はいつもより味噌は控えめ)

「だまされてくれてる…」と思いながらもそのことは黙っておきました。
我が家の場合は色の濃い味噌だと減塩になるようです。

※現在、塩分制限の治療を受けている場合は主治医の先生ともご相談ください
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
10年以上前、病院実習で塩分制限のある患者さんのために用意された無塩パンを食べる機会がありました。

食べてびっくり。
「パンって塩がないとこんなに美味しくないのか!!」と…。
(病院ではジャムなど味のあるものと一緒に提供されていました)

もちろん、病状によっては無塩の食品が必要という方もいらっしゃるかと思いますが、塩味はやはり美味しさには欠かせないんだな~ということ、単に塩分を抜けばいいというものではないんだなという難しさも感じました。

近年、食品業界では減塩食品市場が拡大しており、スーパーでも“減塩”と書かれた商品をよく見かけるようになりました。

どんな味かな、といろんなものを試してみました!
インスタント麺、だしパック、即席みそ汁、塩鮭、塩昆布、ソース、ケチャップ、スナック菓子などなど。

ほとんどの商品が普通の(減塩ではない)ものとそん色ない味で「これなら減塩タイプの方がいいかも!」と思えるくらい美味しかったです。

“減塩=美味しくない”のイメージも変わりつつあるようですね。

ただ、「これはこのままの味にしたい…」というものもあるかと思いますので、自分の中で「これなら減塩でも美味しい!」と思えるものだけ取り入れてみてはいかがでしょうか。

このところめっきり寒くなり、温かい料理が美味しくなってきました。
減塩のコツを思い出しながら、だしをしっかりとって、根菜類(食物繊維・カリウム)たっぷりの料理にしようかなと思います!
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