健康コラム

no.26
テーマ:「爪」
2009年4月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

最近、いわゆる「ネイル」という、爪に装飾施す「ネイルアート」[※1]を楽しむ方が増え、今や、ファッション雑誌には、ネイルサロンやネイルに関する記事が掲載されていることは当たり前。
爪のおしゃれに敏感な人が大変多くなってきています。
ところで、自分の爪から健康状態がわかることをご存知ですか?
一度、自分の爪をじっくり見てみましょう。
[※1]手足の爪に施す化粧や装飾のこと。ネイルアートを施してくれる店をネイルサロン、その技術者をネイリストと言います。
【1】黄色い?黒っぽい??まずは爪の色に注目
意外と思われるかもしれませんが、爪は皮膚の一部です。

皮膚の最も表面の角質層という部分が変化したもので、髪の毛と同じ、「ケラチン」といわれるたんぱく質からできています。

1日に伸びる爪の長さは、健康な成人で約0.1mm程度。
爪全体が生まれ変わるのに約6ヶ月かかります。
足の爪は、もっと遅く、手の爪の約2倍かかります。

通常、大人より子供、女性より男性の方がわずかに伸びるのが早いと言われています。
さらに、季節的には、代謝の活発な夏が最も早く伸び、同じ手の爪でも中指が一番伸びが早く、小指が最も遅いようです。

ところで、体が冷えると、ピンク色の爪が青白く見えることはありませんか?
爪の先端には神経や血管が多く通っています。青白く見えるのは、寒さによって血流が悪くなると、指先の皮膚の血色も悪くなり、その状態が爪を透かして見えるためです。

このような場合以外にも、爪の色から、栄養や代謝などの状態がある程度、推測できます。

一般的な爪の色と疑われる病気の症例としては、下記のようなものがあります。

●白っぽい・・・肝硬変などの肝疾患、マニキュアなどからの刺激、貧血、腎臓病など

(白く濁る)
●褐色・・・・・アジソン病(副腎皮質の機能低下の状態)、ホルモン異常など

●黄色・・・・・水虫(爪白癬)、乾癬(慢性の炎症性角化症)、肺や気管支の病気など

●黒っぽい・・・爪甲色素線条[※2]

●緑色・・・・・緑膿菌などの最近の感染

その他にも、薬剤の服用(例えば、抗がん剤など)によって、爪の変色が起こる場合もあります。

[※2]ホクロが原因で爪が黒くなっている場合もありますが、広がっていくようなら悪性腫瘍の早期病変の可能性のものもあります。

【注意!】
各病気に必ず、上記の色が現れるということではありません。
ご心配の場合は、医療機関へご相談いただくことをお勧めいたします。
【2】爪の形はどうですか?
「三日月状の白い部分が小さいと不健康」とよく言われますが、医学的根拠はないようです。

縦じまも老化現象の一種で、ストレスや睡眠不足、過労によっても起こるので、心配無用です。
また、横じまも過去の発熱などの体調不良、甘皮(爪の根元の薄い皮膚)の損傷や爪周りの皮膚炎などの結果で、珍しいことではありません。

ところが、爪の付け根の角度がなくなり、指先が太鼓のばちのように膨れ上がったり(ばち状指)、反り返ってきたら(スプーン爪)要注意です。
病気が隠れている場合があります。

爪の形と疑われる病気の症例としては、下記のようなものがあります。

●ばち状指(指先が太鼓のばちのように膨れ上がる)
   →肺疾患(肺がん、肺線維症など)、心疾患

●スプーン爪(爪が反り返っている)
   →鉄欠乏性貧血など

●爪甲剥離症(爪が爪の下の皮膚からはがれる)
   →甲状腺の病気、バセドウ病、多汗症、カンジタ感染症

●爪甲点状陥凹(爪に点状のへこみ)
  →手術後や熱性の疾患で栄養状態が悪いと起こりやすい、円形脱毛症、糖尿病、腎臓病など

【注意!】
各病気に必ず、上記の形、状態が現れるということではありません。
ご心配の場合は、医療機関へご相談いただくことをお勧めいたします。
【3】爪を健康にする栄養素
爪の主成分はケラチン。たんぱく質です。
良質たんぱく質をしっかり摂ることが重要です。

爪が割れやすい、欠ける、二枚爪といったトラブルは、爪に水分を貯めにくくなり、乾燥し、トラブルが起こりやすくなります。

たんぱく質の中でも、爪の健康にはコラーゲンが関係していて、細胞と細胞の間をうめる細胞間物質(結合組織)となり、皮膚内部に水分を貯える役目を果たし、皮膚にハリをもたせます。

コラーゲンは、魚や肉のよく動かされる部位、具体的には、魚の頭や尾の部分、鶏の手羽先、豚足、牛すね(すじ)肉などに多く含まれています。


その他に爪を健康にする栄養素には、下記のようなものがあります。

【亜鉛】
  細胞の分裂を促進し、ケラチンやコラーゲンの生成を助け、皮膚の代謝をよくします。
  →カキ・うなぎ・たらこ・カボチャの種などに含まれます。

【ビタミンB2】
  タンパク質の代謝をよくします。
  →さば・さんま・いわし・牛乳・うなぎ・玄米などに含まれます。

【ビタミンB6】
  ケラチンの生成に関係しています。
  体内に取り込んだたんぱく質をアミノ酸へ分解したり、アミノ酸から再びたんぱく質を合成する際に欠かせません。
  →鮭・青魚・ゴマ・納豆・ジャガイモなどに含まれます。

【ビタミンC】
  コラーゲンの生成を促進します。
  →柑橘類 、イチゴ、キウイなど、果物・野菜に含まれます。
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
冒頭でも触れましたが、今やネイルアートは珍しくはなくなってきました。

ネイルアートの種類によっては、爪にプラスチックの既製の付け爪やスカルプチュア[※3]を施すこともあります。

装飾を施し2~3週間もすれば、自分の爪が伸び、付け爪との間に隙間ができてくることがあります。

そうすると、その隙間に水分がたまって、カビや雑菌が繁殖してしまいます。

爪が緑色や白くなれば、緑膿菌や白カビ、あるいは爪水虫に感染している可能性があり、ネイルアートを楽しむ方の間では、このような爪のトラブルを「グリーンネイル」というそうです。

せっかくのネイルアートなのに、変色や異常など、爪のSOSに気づくのが遅れてしまっては・・・、健康な爪(健康な体)あってのオシャレです。

爪のお洒落も、身体と同じように、健康チェックとその意識が必要ですね。

スっーとしなやかにのびた細くて美しい指先。

華奢なその先端を、より一層おしゃれに輝かせてくれるネイルアート。

想像すると、思わず溜め息がこぼれます。

小指のピンキーリングさえも2桁台サイズ疑惑のある、たくましい手の持ち主の私にとっては、永遠の憧れです。

[※3]アクリル樹脂を使って、自分の爪に延長して作り出す人工爪。   長さや形を好みに合わせ成型する技術。
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