健康コラム

no.41
テーマ:「汗」
2010年7月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

じめじめとした室内。
照りつける太陽。汗やニオイが気になる季節となりました。
汗をかくのは、体温の上がり過ぎを防ぐための体の防衛反応ですが、実は、汗にもさらさらした“良い汗”やべたつく“悪い汗”があるのです。
しかも現代人は、べたべたとした“悪い汗”をかいていることが多いと言われています。
では“良い汗”をかくためにはどうすればよいのでしょうか?
【1】良い汗・悪い汗とは?
ここで言う“良い汗”“悪い汗”とはどのようなものなのでしょうか?

その前に、汗はどのように作られているのかというと・・・汗の原料は血液であり、まず血液は汗の出口である汗腺に取り込まれます。

その後、水分以外の成分(ミネラルなど)のほとんどは再び血液中に戻されます。

そのミネラルの再吸収がスムーズに行われているかによって、“良い汗”“悪い汗”の違いが生まれてしまうのです。


<良い汗>
・ミネラル分は再び血液中に吸収されているため、成分のほとんどを水分が占めている
 →さらっとしていてベタつきやニオイが少ない。
・すぐに乾く
 →蒸発するときに体から熱を奪うため、体温を下げることができる。


<悪い汗>
・ミネラル分が再吸収されず多く含まれている
 →皮膚についた菌の養分となりニオイの元となる。
  また体からミネラル分が失われると、体調不良(熱中症など)の原因となる。
・大粒でダラダラ流れる
 →蒸発しにくい為、体温を下げる能力が低い。


では、どうして現代人はこの“悪い汗”をかくことが多くなってしまったのでしょうか?

人間の体には約200万~500万の汗腺があると言われますが、実は、その半分近くが普段は活動していません。

運動不足だったり、冷房のきいた室内ばかりにいたりすると、体は汗をかく必要が無くなってしまい、活動している汗腺の数がさらに減ってしまいます。

活動している汗腺の数が減ると、1つの汗腺は他の休んでいる汗腺の分まで働かなければなりません。

すると、ミネラル分を血液へ十分に戻すことができなくなり、べたべたとした悪い汗をかいてしまうのです。

汗を沢山かいて困るという人も、実は汗腺が衰えて全身から汗をかけず、顔やわきの下など体の限られた部分からどっと悪い汗をかくため、大量の汗をかいていると思い込んでいることが多いようです。

しかし、日ごろから汗をよくかくようにしていれば、休んでいる汗腺も活動を始めます。

活動している汗腺の数が増えれば、一つ一つの汗腺が役割をしっかり行うことができるため、良い汗が作れるというわけです。
【2】良い汗をかくために
“良い汗”をかくためには生活そのものを改善する必要があります。

生活で気をつけるポイント↓

1)冷房をなるべく使わず、扇風機やうちわなどを利用する。
  また、冷房を使うときは外気との温度差を5度以下にする。

2)ウォーキングなど適度な運動を行う。

3)ショウガやくずなど体を温める食品を積極的に摂る。

4)シャワーではなく、ぬるめのお湯にゆったりと浸かって 体を温める。

※高温の全身浴は体への負担が大きく、長時間浸かっているとのぼせたりして体調を崩す恐れがあるので注意しましょう。


特に入浴は、汗を出す習慣付けにはもっとも身近な方法です。

入浴後は体をしっかりふいて、風通しのよい場所でゆったりとリラックスしましょう。

冷房や扇風機で体を強制的に冷やすと、熱を放出するために汗をかこうとする汗腺の力が弱まってしまいます。

また、汗で失った水分を補給するため、入浴後は必ず水分をとりましょう。

体を冷やさないため、常温以上の水が良いでしょう。

発汗を助けるショウガや、リンゴ酢などのクエン酸の入ったドリンクなどもお勧めです。

クエン酸は細胞がエネルギーを作り出すのに必要な成分で、汗腺の細胞にクエン酸が取り込まれると、細胞が元気になることで汗腺が正常に働くようになります。
【3】汗のニオイを防ぐ食生活のポイント
“悪い汗”が“良い汗”に比べてにおいやすいことはお話しましたが、汗のニオイは汗の種類以外にも、皮脂の分泌量や食生活とも密接に関わっています。

魚介や野菜中心だった日本人の食生活は最近では肉食(動物性のタンパク質や脂肪)中心になり、体質にも影響を与えています。

動物性脂肪を多く摂りすぎると、皮脂の分泌が盛んになり、その皮脂が酸化することで汗のニオイが強くなる傾向があるようです。


≪食事のポイント≫
1)様々な種類の食品を摂って栄養のバランスをよくする。
低脂肪で、植物性の食品を中心に摂りましょう。
和食の方がバランスをとりやすいためお勧めです。

2)亜鉛を含んだ食品(カキ、レバー、うなぎなど)、カルシウム、鉄、カリウムなどのミネラル分を多く含んだ食品(緑黄色野菜や海草類)を積極的に摂る。
良い汗を作るためには汗の材料となる血液を健康に保つことが大切であり、そのためにはこれらのミネラルが不可欠です。また、汗をかいた後には忘れずに水分とミネラルを補給しましょう。
 
3)規則正しい食生活を心がける。
ホルモンは体のあらゆる働きに関わり、汗の分泌とも密接な関係があります。
不規則な食生活はホルモンバランスを崩す原因となり、汗腺の正常な働きを保ちにくくなります。

4)ニオイの強い食品(にんにくなど)や刺激の強い香辛料などの摂りすぎに注意する。
香辛料には発汗作用があり体温を下げるため、特に夏場の食事では多く使われています。
しかし摂りすぎてしまうと、消化吸収された食品のニオイが血液を通じてそのまま出てしまうと言われています。大切な日の前は特に注意しましょう。

5)豆類、コンニャク、海草など、食物繊維をたっぷり含んだ食品を多めに摂る。
腸内の悪臭を防ぐ善玉菌を増やして、体の中からニオイ予防を行いましょう。
規則正しいバランスのよい食生活を心がけ、爽やかな夏をすごしましょう!
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
気になる汗のニオイですが、このニオイにも大切な役割があります。

女性は思春期になると、異性をニオイでも判断するようになり、しかも、自分と遺伝的に遠い人のニオイを好むと言われています。

生命力の強い子孫を残すには、できるだけ違う遺伝子を持ったパートナーが良いため、女性は本能的に子どもに有利な行動をしているんですね。

残念ながら、男性にこの能力はないそうです。

また、年頃の娘が父親のニオイを嫌がるようになるのは、この逆パターンなのでしょう。(娘が父親のニオイを嫌がるのは世界共通らしいです。)

父親だけでなく、遺伝的に近いという意味では兄弟も同様です。

そういえば私にも思い当たる節があります。

軽い気持ちで弟に「部屋がくさい」なんて言ってしまった事、今となっては反省しています・・・。

ちなみに、父親のニオイを嫌っていた娘も成長にしたがって再び遺伝子が近い人のニオイを好むようになるそうですよ。

全国のお父様方、ご安心くださいませ(*'-^*)b

人間、無臭ということはありえないもの。

結局のところあまり気にしすぎないのが一番かもしれませんね。

とはいえ、乙女?としては汗くさい状態は避けたいものです。

まずはシャワーの習慣を改め、湯船に浸かることからはじめようと思います。
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