健康コラム

no.43
テーマ:「救急の日」
2010年9月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

9月に入ったものの、厳しい残暑が続いています。
これから少し涼しくなりはじめるにつれ、体の疲れが一気に出てしまい、遅めの夏バテならぬ“ 秋バテ”になってしまう人が増えてくる時季でもあります。
8月を過ぎたからといって、油断をして熱中症なんてことも・・・。
気をつけていれば、熱中症や秋バテは未然に防ぐことも可能ですが、どんなに注意をしていても、自然災害や交通事故に遭遇し、負傷してしまうこともあります。
今日は、そんな「もしも」のときに関するお話です。
【1】9月9日が何の日かご存じですか?
9(きゅう)と9(きゅう)で「救急の日(きゅうきゅうの日)」です。

「救急の日」は、救急業務や救急医療に対する理解と認識を深めることを目的として「9(きゅう)と9(きゅう)」の語呂合わせから、1982年(昭和57年)に定められました。

私たちは、いつ、どこで、突然のけがや病気におそわれるかわかりません。

応急手当とは、救急隊や医師・看護師などが到着するまでに、その場に居合わせた人(家族・友人・通行人など)で行う処置をいい、病院に到着するまでに応急手当を行うことで、状態の悪化を防ぐことができます。

交通事故など、生命に危険が及んでいる緊迫した状態であれば、119番通報が必要です。

しかし、通報から救急車の到着するまでの時間は、全国平均で約6分。

心臓や呼吸が止まった人に行う応急手当を心肺蘇生法といい、心肺蘇生法(人工呼吸と心臓マッサージ)が行われなければ、救命率は極めて低くなり、心停止から1分ごとに、救命率は7~10%下がるといわれます。

救急車を呼ぶにも、緊迫した状況ではパニックを起こしてしまいます。119番につながれば、次のことを伝えなければなりません。

①119番に電話をかける。

②『火事ですか?救急ですか?』と聞かれるので、『救急です』と答える。

③事故や病気の状況を『いつ、誰が、どこで、どのような症状なのか』をできるだけ正確に説明する。

④住所を正確に伝える。
 マンション等の場合は、号棟、階数、部屋番号なども正確に。
 また、近くに目標物があれば、それも伝える。

⑤保険証、着替え、お金などを準備して、救急車を誘導できるよう待機する。
【2】知っておきたい日常の応急手当
国民消費生活センターの調べによると、家庭内で多い事故の種類は、多い順に「転倒・転落」、「溺水」、「誤えんなどによる窒息」となっています。

家庭内の発生場所は「居間」、「台所」、「階段」、「浴槽・風呂場」と続き、全体の80%を占めています。

けがの種類としては、「擦過傷・挫傷・打撲傷」が最も多く、これらのけがの約3割は転倒・転落がきっかけで起きています。

年齢層によって多いけがの種類は異なり、0~4歳児では、他の年齢層に比べ「異物の侵入」、「熱傷」の割合が高く、まだ歩けない0歳児では「目、口、鼻などへの異物の侵入」の割合が特に高くなっています。

65歳以上の高齢者では、「骨折」の割合が高く、10~49歳までは「刺し傷・切り傷」が最も多い結果となっています。


家庭内で多いけがへの応急手当を簡単にご紹介します。

!!ご注意!!

ここでご紹介する応急手当は、あくまでも一時的な措置に過ぎません。自己判断せず、早めに専門医療機関へご相談ください。


【擦り傷・切り傷・刺し傷など】
○小さな傷の場合
①傷口を水道水できれいに十分に洗い流す。
 砂や土がついていれば、強めの流水で洗い流す。
②消毒薬で消毒する。
③清潔なガーゼを当て、絆創膏、包帯で留める。


○大きな傷の場合
①出血しにくくするために、傷を心臓より高い位置へ上げる。
②ガラスなどの異物はガーゼでそっと取り除く。
 深く入ってしまったものは無理に取らない。(大きな傷の場合には、消毒薬を使わない。)
③傷口に異物が残っている場合は、その上を直接圧迫しないないよう注意しながら、止血する。 
④応急手当をしたら、近くの医療機関へ。


【軽症の熱傷(やけど)の場合】
①急いで水道水を流しながら、洗面器などに患部をつけて15~30分を目安に、痛みがとれるまで冷やす。
②衣類のままやけどした場合には、衣類を脱がさず、そのまま衣類の上から冷水をかける。
 流水は直接、患部に当てず、氷や蓄冷剤なども、清潔なタオルなどに包んで患部にあてる。
③ごく軽症の熱傷であれば、痛み、赤みが和らげば、そのままで治癒するが、気になるようであれば、絆創膏を巻いておく。
④それ以外の場合は、十分に冷やしたら、何もせずに、患部に清潔なガーゼやタオルを当てて、水ぶくれはつぶさないようにして、すぐに医療機関へ。
 

【目に異物が入った場合】
絶対に目をこすらず、無理して取らないようにし、何が入ったか、どんな状態かを調べます。
特に、瞳孔(黒目)の変形があるときは重症です。

○金属の破片が入った、眼球に刺さっている、黒目に細かいゴミが付着している場合
目には出来る限り触れないようにして、清潔なガーゼで覆って眼科へ。

○薬品や洗剤などの化学製品が入った場合
①水道水で30分間を目安にきれいに十分に洗い流す。
 強い水圧の流水をかけない。
②まぶたをひっくり返して、まぶたの裏側もしっかり洗う。
③十分に洗い流したあとは、目に入った製品の説明書を持って、清潔なガーゼで覆ってすぐに眼科へ。


【骨折の疑いのある場合】
骨折が疑われる症状として、「患部がはれる」「形が変わる」「皮膚の色が変わる」 「動かしたり触れたりすると、激しい痛みがある」「自分では動かせなくなる」 といったことが挙げられます。
 

少しでも疑われる症状がある場合には、骨折したと思われる箇所を固定し、負担を与えないよう気を付けて、すぐに医療機関へ。


※「熱中症」や「秋バテ」予防には、十分な栄養(ミネラル)と休養が大切です。「熱中症」や「秋バテ」については、下記をご参照ください。
【3】救急箱の中身大丈夫ですか?
ケガをしてあわてて救急箱を開けてみたら、古くて黄ばんだ包帯に、使用期限が切れた得体の知れない薬ばかり。

必要なものが見当たらない、といった経験はありませんか?

いつ起こるかわからない家庭や会社での事故に備え、救急箱の中身の点検をしておきましょう。

新しく購入した日や使用期限も記録しておくと便利です。

いざというときに役に立つ、常備しておきたい救急箱の中身を紹介させていただきます。
 

・消毒薬
・外用薬[傷用薬(軟膏)、かゆみ止め、化膿止めなど]
・貼り薬[湿布薬]
・体調に応じた常備薬[頭痛薬、胃腸薬、便秘薬、目薬など]
・救急用品[滅菌ガーゼ 、脱脂綿、救急用絆創膏、包帯、綿棒など]
・救急用具類[はさみ、ピンセット、体温計など]
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
突発的な自然災害や交通事故など、不測の事態に遭ったとき、頭ではわかっていても、事前の対策や訓練がなければ、緊迫した状況では、思うように体は動きません。

どれほどの人が慌てず適切な処置を行うことができるでしょうか。

正直にいうと、私には自信がありません。

目の前に苦しんでいる人がいて、何か出来ることがあるにも関わらず、行動が起こせないことほど、悲しいことはありません。

9月9日「救急の日」の日を含む1週間を「救急医療週間」(本年は9月8日~14日)として、毎年全国各地において応急手当の講習会を中心とした救急に関する様々な行事が実施されています。

せっかくの機会です。

救命講習に参加し、いざという時に備え、応急手当を身につけておこうと思います。
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