健康コラム

no.44
テーマ:「骨」
2010年10月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

暑く長い夏がようやく終わりを告げたかと思えば、京都は朝晩急に肌寒くなり、早くも冬の気配を匂わせています。

皆さんの地域はどうでしょうか?
季節の変わり目ですので、体調を崩さないようにしてくださいね。

さて、今月8日は「骨と関節の日」です。

「ホネ」の「ホ」の字が、漢数字の「十」と「八」で成り立つことから、日本整形外科学会がこの日に制定したそうです。

今月は、骨の健康についてお話します。
【1】骨の健康を保つには?
骨は、“一度つくられたらそのまま”ではなく、毎日絶えず“古い骨を壊して新しい骨をつくる”ことを繰り返しています。

骨の破壊を「骨吸収」、骨の新生を「骨形成」と言います。

通常、骨吸収と骨形成はバランス良く行われ、骨量は一定に保たれています。

骨吸収が骨形成を上回ったり、骨形成が低下してしまうと、骨量が減少し、骨の中の構造が壊れてしまうため、骨はもろく折れやすくなります。

このような状態が深刻化したものを「骨粗しょう症」と呼び、骨の変形や骨折、そして、それに伴う痛みなどが症状として現れます。

骨粗しょう症には、“女性”や“高齢者”に多いというイメージがあるかもしれません。

たしかに、女性はもともと男性に比べて骨量が少ないうえに、閉経後には、骨量の維持に不可欠な女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が減少することから、骨粗しょう症のリスクは高くなります。また、高齢になると、骨形成よりも骨吸収が優位になりやすく、骨が弱くもろくなる傾向が見られます。

閉経後と老人性の骨粗しょう症は、全体の大部分を占めています。
しかし、男性や若い世代には全く関係ないというわけではありません。

男性でも、加齢と共にリスクは高まりますし、若い世代で発症する骨粗しょう症も見られます。

妊娠や出産がきっかけになったり、他の病気や薬の服用が原因となる場合もあります。

また、骨の健康には、ホルモンバランスや加齢の他に、食事や運動、タバコ、飲酒、ストレス、無理なダイエット、偏食などの生活習慣が大きく関係しています。

骨量は、骨格の成長と共に増加し、成人期でピークを迎えます。そして、中高年以降は、徐々に減少していきます。

骨の健康が心配される年代になったときに困らないよう、若いうちにしっかりと骨の強さを蓄えておくことが必要であり、そのためには、若い時期の食生活や生活習慣が重要なのです。

最近では、子どもが転んで手をついただけで骨折・・・なんて話を聞くことも珍しくないように思います。

若いうちに骨量をしっかり“増やす”こと。
そして、その骨量を“保つ”こと。

これが、骨の健康を維持する大切なポイントです。
【2】コツコツ骨貯金への道 ~食事編~
骨づくりの代表的な栄養素と言えばカルシウムですが、カルシウムだけではなく、その他のミネラルや、コラーゲンなどのたんぱく質も、骨を構成する大切な栄養素です。

また、カルシウムは、他のミネラルやビタミンDといった栄養素と一緒にバランス良く摂ることで、体内でより効率良く吸収・活用されることがわかっています。

食事の基本は、色々な食品をバランス良く。
ここでは、健康な骨づくりに特に必要な栄養素を紹介します。

◆たんぱく質…骨の構成成分となります。
→魚、肉、大豆、大豆製品、卵などに含まれます。

◆カルシウム…骨の構成成分となります。
→小魚、緑黄色野菜、乳製品などに含まれます。

◆マグネシウム…骨の構成成分となります。
→ごま、アーモンド、未精製の穀類などに含まれます。

◆リン…骨の構成成分となります。
→魚、大豆、大豆製品、乳製品などに含まれます。
※加工食品にも多く含まれるため、過剰摂取に気をつけましょう。

◆亜鉛…骨のしなやかさを支えるコラーゲンの合成に必要となります。
→牡蠣、牛肉、豚肉、うなぎ、納豆などに含まれます。

◆ビタミンD…カルシウムの吸収を助ける働きを持っています。
→青背の魚、きくらげ、しいたけ、卵黄などに含まれます。
※日光に当たることによって、皮下でも生成されます。

◆ビタミンK…カルシウムが骨に沈着するのを助ける働きを持っています。
→納豆、小松菜、ほうれん草などに含まれます。

◆ビタミンC
…亜鉛と共にコラーゲンの合成に必要となります。
→果物、野菜、いも類などに含まれます。
【3】コツコツ骨貯金への道 ~運動編~
骨形成は、適度な運動や体重などで骨に負荷がかかることによって、活発になることが知られています。

無重力の環境で長期間生活する宇宙飛行士さんの骨が、地球上にいるときと比べて弱くなるというのは有名な話ですね。

ウォーキングやジョギング、スクワットなどの運動を取り入れたり、日常生活の中でも普段から意識して体を動かすようにしましょう。

昔の日本は、畳に座り、布団を敷いて寝る生活だったため、立ち上がったり座ったり、布団を上げ下げしたりすることで、知らず知らずのうちに足腰が鍛えられていました。

欧米人に比べて日本人の骨折が少ないのも、和食文化に加え、昔ながらの和室生活が影響していると考えられています。

しかし現代では、イスやベッドでの生活が増えてきており、家電製品の発達によって洗濯や掃除なども楽になった反面、家庭内での運動量は減ってきています。

家事こそ、体を動かす絶好のチャンスです。
こちらの健康コラムもご参照ください。
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
皆さんの骨は健康ですか?
自分の骨が今どのような状態か知っていますか?

骨の状態を知る機会ってなかなか少ないものです。
毎日肌の調子を気にしたり、便通をチェックするように、普段の生活の中で骨を意識することってあまりないのでは・・・?

骨粗しょう症も、初期段階では自覚症状がないのが特徴で、骨折や痛みなどの症状が現れてから初めて自分の骨の異変に気づく人が多いようです。

もちろん、日常生活(食事・運動など)でしっかり予防できていれば、それに越したことはありませんが・・・。

目には見えないものだからこそ、気づいたときには遅かった・・・では困りますよね。
まずは、自分の骨の健康状態を知ることから始めましょう。

健康であれば、維持するための生活を。
もし異常があれば、早期発見・早期治療に繋がります。

最近では、市町村などで骨の健康診断を実施しているところもあるようですので、定期的な検査をおすすめします。

※骨に関して気になる症状がある場合には、お早めに専門の医療機関へご相談ください。
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