健康コラム

no.117
テーマ:「さつまいも」
2016年11月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

朝晩が冷え込み、少しずつ冬の訪れを感じる頃になりました。

これからの寒い季節には、あたたかい焼き芋が恋しくなるのではないでしょうか。

ということで、今回は“さつまいも”をテーマに健康コラムをお送りしたいと思います。
【1】さつまいもの歴史
さつまいもの原産地は、はっきりとは分かっていませんが、中米から南米北部ではないかと考えられています。
日本に入ってきた経緯については諸説ありますが、コロンブスのアメリカ大陸発見の際にヨーロッパに伝わり、東南アジア、中国、そして日本へと伝わったと言われています。

日本では、
中国から琉球へ(現沖縄)
琉球から薩摩へ(現鹿児島)
薩摩から徐々に全国へと広まっていきました。

今では全国どこでも“さつまいも”と呼ばれていますが、当時は、琉球では「唐いも」、薩摩では「琉球いも」、その他の地域では「薩摩いも」と、いずれも伝えられた元の地名を取って呼ばれていたそうです。

先ほど、薩摩から徐々に全国へと広まったとお話しましたが、その裏にはこんな秘話がありました。

みなさん「※甘藷先生」をご存じでしょうか。
※甘藷=さつまいもの意
これは、日本を飢餓から救った江戸中期の蘭学者・青木昆陽(あおきこんよう)のことです。

青木昆陽は、大飢饉の対策に苦慮していた八代将軍・徳川吉宗の時代に、さつまいもが救荒作物として優れているというところに目をつけ、作り方や特徴を「蕃薯考(ばんしょこう)」に記述していました。

それを知った徳川吉宗は、青木昆陽に飢餓対策の作物として、さつまいもの栽培を命じ、苦労の末、当時江戸ではまだまだ未知の食物であったさつまいもの栽培を成功させました。
そうして、多くの人々が飢えから救われたそうです。

こういった功績から、青木昆陽は「甘藷先生」と称されるようになりました。
【2】さつまいもの栄養
さつまいもといえば、「食物繊維が豊富で便秘解消・・・」といった印象をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

もちろんその通り、さつまいもは食物繊維を豊富に含み、便秘に悩む人の強い味方ですが、それだけではありません。

他にも、コラーゲンの合成やメラニン色素の沈着を防ぐビタミンC、細胞の老化を防ぐビタミンE、高血圧やむくみの予防に役立つカリウムも豊富に含んでいます。

ちなみに、本来熱に弱い性質を持つビタミンCですが、さつまいもに含まれるビタミンCは加熱しても壊れにくいといった特長があります。

また、紫色の品種に含まれるポリフェノールの一種であるアントシアニンは、抗酸化作用があるため、ビタミンEと同様に細胞の老化防止やがんの予防などが期待されます。

さつまいもの便秘解消効果と言えば食物繊維ばかりが注目されがちですが、切った時に断面に出てくる白い液“ヤラピン”も便秘解消に一役買っているのです。

ヤラピンは樹脂の一種で、胃の粘膜を保護したり、腸のぜん動運動を助けてくれるので、食物繊維と併せて便秘改善が期待できます。

そしてあの甘みの正体はでんぷんです。
さつまいもはアミラーゼ(でんぷん分解酵素)を多く含んでおり、60~70℃でゆっくり加熱すると、酵素によってでんぷんが分解され甘みに変わっていきます。

これをうまく利用したのが焼き芋です。

ゆっくり加熱することで甘くておいしい焼き芋が出来るのです。
加熱が80℃以上になると酵素が働かないので、電子レンジの急激な加熱ではあの甘みを引き出すことが出来ないのです。

ぜひ、さつまいもを加熱する際は、“ゆっくり加熱”に気を付けて調理してみてください。
【3】さつまいもの保存方法
【芋ほりで収穫したさつまいも】
収穫したさつまいもは土がついたまま雨の当たらない日陰で3~5日程乾燥させます。
乾燥させてから土を払うときれいに落とすことが出来ます。

それから1本ずつ新聞紙で包んで、通気性の良い入れ物(段ボールや紙袋)に入れ、冷暗所で保存します。

さつまいもは収穫後も呼吸をしているため、通気性の悪い場所で保存していると二酸化炭素が充満し、傷みの原因にもなります。

また、さつまいもは水気に弱いため、一度水洗いをしてしまうと長期保存が出来なくなります。
洗わず土がついたままの状態で保存しましょう。

【スーパーで購入したさつまいも】
まずは、さつまいもが呼吸できるようにビニールから出します。

通気性の良い入れ物(段ボールや紙袋)に入れ、冷暗所で保存します。

土のついたさつまいも(洗っていないもの)であれば、上手に保存すれば3ヶ月以上もちますが、スーパーで売られている土のついていないさつまいもは、ほとんどが水洗いされているため、長期保存はむずかしいと言えます。

土のついたものを購入した際には、収穫したさつまいもと同様の方法で保存しましょう。

そして、どちらにも共通して言えることは、“冷蔵庫で保存しない”ということです。

もともとさつまいもは南米の温かい地域で栽培されていた食物であるため、寒さに弱いといった弱点があります。

温度が低い場所で保管していると、低温障害になり傷みの原因となってしまうので、冷蔵庫に入れて保存しないように気を付けましょう。

しかし、温かすぎるのもよくありません。
さつまいもは18℃を超えると芽が出てしまいますので、15℃前後の涼しい冷暗所で保存するのが良いでしょう。

ご家庭では、土間や床下収納があればより良いですが、なければキッチンや廊下、玄関など光が当たらない場所を選びましょう。
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
先日、祖母の畑でさつまいもを収穫したので、さっそく採れたてのさつまいもを使ってタルトを作りました。

お砂糖の甘みではなく、素材の甘みを活かすため、“ゆっくり加熱”を意識して作るととても美味しく出来上がりました!

それでもさつまいもがたくさん余っていたので、今度はオーブンを使って焼き芋を作りました。

冬にストーブの上で焼くことはありますが、オーブンで焼き芋を作るのは初めてでした。

インターネットを見ていると、オーブンの他にも魚焼きグリルや炊飯器を使うなど様々な方法が紹介されていました。

オーブンを使った焼き芋はとても簡単で、さつまいもを綺麗に洗って、濡れたキッチンペーパーで包み、さらにその上からアルミホイルで包んだらあとは170℃のオーブンで60分加熱するだけで出来上がりです。

いつも何気なく食べていたさつまいもですが、何も味付けをしなくてもこんなに美味しく食べられるなんてとても優秀な食材だな~と改めて感じました。

ちなみに、今アメリカ航空宇宙局NASAが、宇宙で栽培する作物として注目しているのがさつまいもだそうです。

宇宙で作物を栽培するなんてすごいですよね。
これも、ずっと昔に地上での栽培を成功させた人の努力があって今の“宇宙で栽培”があるのですね。

さつまいもにはまだまだ秘めた可能性があるのではないかと思うと、ますます興味が湧いてきました。

ぜひみなさんも、今年の秋・冬は色々なさつまいも料理に挑戦してみてください。
ポイントは“ゆっくり加熱”ですよ!
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