健康コラム

no.69
テーマ:「脂質」その2
2012年11月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。
【1】体によい油脂?よくない油脂?
動物性の食品に含まれる油脂を「動物性油脂」と言い、牛脂やラードがこれにあたります。

そして、植物性食品由来の油脂は「植物性油脂」と呼ばれます。

日本では、「植物性油脂は体によい」「動物性油脂のかわりに植物性油脂をとりましょう」などという健康認識が長年にわたって続いてきました。

植物性はよい油脂。
動物性はよくない油脂。
このようなイメージを持っている人もいるのではないでしょうか。

しかし、近年では、植物性油脂だから健康によいという認識は誤りだということがわかってきました。

特定の植物性油脂のとりすぎが問題視されていて、油脂のとり方が見直されてきています。

では、よい油脂か、よくない油脂か、一体何によって決まるのでしょうか。
次項で詳しく説明します。
【2】油脂の性質は脂肪酸で決まる
「脂肪酸」は、脂質の構成成分です。

たんぱく質を構成するアミノ酸にたくさんの種類があるように、脂質を構成する脂肪酸にも、色々な種類があり、それぞれ特徴や働きを持っています。

つまり、どんな脂肪酸がどのくらいの割合で含まれているかによって、油脂がどのような性質を持つかが決まるのです。

脂肪酸は、その構造によって、大きく【飽和脂肪酸】と【不飽和脂肪酸】に分けられます。

【飽和脂肪酸】は、牛脂やラードなどの肉類、バターやチーズなどの乳製品といった動物性油脂のほか、植物性のココナッツ油などにも多く含まれています。

融点が高く常温で固体となるため、体内や血液中でもかたまりやすく、血液の粘度を高めてしまいます。

また、血液中のコレステロールや中性脂肪を増やす働きがあり、脂質異常症や動脈硬化の原因にもなりますので、過剰摂取には十分な注意が必要です。

【不飽和脂肪酸】は、主に植物油や魚油に含まれていて、融点が低く、常温では液体で存在しています。

【不飽和脂肪酸】は、さらに、【一価不飽和脂肪酸】(n-9系脂肪酸)と、【多価不飽和脂肪酸】(n-3系脂肪酸・n-6系脂肪酸)に分けられます。

それぞれの特徴や働きを説明していきましょう。

≪n-3系脂肪酸≫(※)
★種類
・α-リノレン酸
・ドコサヘキサエン酸(DHA)
・エイコサペンタエン酸(EPA)など

★特徴や働き
・免疫や凝血、炎症などの過剰な反応を抑える
・LDLコレステロールを減らし、HDLコレステロールを増やす
・酸化されやすいため、加熱調理には向いていない

★含まれる油脂類
・アマニ油
・エゴマ油
・青背魚の油など

≪n-6系脂肪酸≫(※)
★種類
・リノール酸
・アラキドン酸など

★特徴や働き
・LDLコレステロールを減らすが、とりすぎるとHDLコレステロールも減らす
・過剰摂取によってアレルギー症状を起こしやすくなる

★含まれる油脂類
・ベニバナ油
・大豆油
・コーン油など

≪n-9系脂肪酸≫
★種類
・オレイン酸など

★特徴や働き
・HDLコレステロールを減らさずにLDLコレステロールを減らす
・酸化されにくいため、加熱調理に使用しやすい

★含まれる油脂類
・オリーブ油
・キャノーラ油など

(※)n-3系脂肪酸とn-6系脂肪酸は「必須脂肪酸」と呼ばれ、体内で合成できないため、食品からとる必要がある脂肪酸です。
【3】油脂を上手にとろう
飽和脂肪酸:一価不飽和脂肪酸:多価不飽和脂肪酸のバランスは、3:4:3が推奨されています。

そして、多価不飽和脂肪酸の中でも、n-3系とn-6系のバランスは1:2から1:4程度が推奨されています。

しかし、現代の食生活では、飽和脂肪酸とn-6系脂肪酸の過剰摂取が懸念されていて、n-3系脂肪酸は不足傾向にあるようです。

この点をふまえた上で、各脂肪酸を含む油脂の使用量や摂取量を一度見直してみましょう。

たとえば、肉料理の多い人は、青背の魚の頻度を増やしてみてはいかがでしょうか。

また、n-3系脂肪酸を含むアマニ油やエゴマ油などは、熱に弱いため、ドレッシングを作るときなどに使用するとよいでしょう。
光にも弱いので、保存は遮光瓶、密栓、冷暗所が基本です。

n-9系脂肪酸は酸化されにくいという性質を持っているため、加熱調理には、オリーブ油などの使用をおすすめします。

ただし、どのような油脂であっても、時間がたつと酸化していきます。
肉や魚は新鮮なうちに使用するのがベストですね。

調理油は冷暗所で密栓保存し、なるべく早めに使い切るようにしましょう。

(注意)
どんな油脂であっても過剰摂取は禁物です。
適量をバランスよくとるようにしましょう。
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
皆さん、「トランス脂肪酸」をご存知でしょうか。

HDLコレステロールを減らしてLDLコレステロールを増やす作用や炎症を悪化させる作用、心臓疾患のリスクを高める作用などが報告されている脂肪酸です。

トランス脂肪酸は、現在広く普及している製油法の過程や、油の高温加熱の過程などで生じることがわかっています。

諸外国では、トランス脂肪酸を含む食品の販売が禁止されていたり、含有量の表示が義務付けられていたりするようです。

日本では、「通常の食生活におけるトランス脂肪酸の摂取量の範囲ではリスクは明らかではない」と考えられていて、明確な規制はされていませんが、自分自身で普段から気をつけることは大切ですね。

トランス脂肪酸を比較的多く含む食品として、マーガリンやショートニングなどの加工油脂や、市販の菓子・パン・ケーキ(原材料には「植物油脂」などと表示される場合あり)、インスタント食品、冷凍食品、ファストフード食品などが知られています。

これらの食品を100%排除するのは、現代の暮らしの中では不可能に近いかもしれません。

しかし、食品の栄養成分表示や原材料表示を確認し、使用量や摂取量を減らすという工夫は誰にでもできることです。

できることから始めましょう。