健康コラム

no.85
テーマ:「炭水化物(糖質)」
2014年3月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

少しずつ春めいてきましたね。

「糖質制限食」「炭水化物抜きダイエット」
そんなタイトルの雑誌や書籍、テレビの特集を見かけたことはありませんか?

食事中の炭水化物(糖質)を制限する方法は、糖尿病の新しい食事療法として注目されていて、ダイエットとして興味をもつ方も増えているようです。

もともと炭水化物(糖質)を摂りすぎている人が量を減らして適量に是正することは大切ですが、極端な摂りすぎと同じように、減らしすぎも体には良くないといわれています。

では、健康的に摂るためにはどうすればよいでしょうか。
【1】炭水化物(糖質)Q&A
Q.炭水化物(糖質)って何?
A.炭水化物(糖質)は、たんぱく質・脂質と並ぶ“3大栄養素”のひとつです。
ご飯やパンなどの主食に多く含まれ、 体内に入ると消化されてブドウ糖(血糖)に変わります。
このブドウ糖(血糖)は脳の唯一のエネルギー源であるため、不足すると脳の働きが低下したり、体が疲れやすくなってしまいます。
 
Q.炭水化物と糖質は同じもの?
A.炭水化物は「糖質」と「食物繊維」を合わせたもので、糖質は体内でエネルギー源となり、血糖値の維持に利用されます。
食物繊維は消化されないため、エネルギー源となりません。
炭水化物と糖質は同一の成分ではありませんが、同じような意味合いで使われています。(以下、炭水化物と表記します) 


Q.炭水化物は1日にどれくらい摂ったらいいの?
A.適切な量には個人差があります。
1日の摂取エネルギーのうち、およそ55~60%を炭水化物から摂るのが望ましいとされています。
例えば30~40代の女性で、身体活動レベルが「低い」(生活の大部分を座って過ごす)人では、1日1750kcal必要とされます(※)。

そのうちの55~60%(963~1050kcal)を炭水化物で摂ると、茶碗にもったご飯(235kcal/140g)ではおよそ4杯~4杯半分に相当します。

ご自身の適量を心がけましょう。
それには以下の理由があります。  

※1日の推定エネルギー必要量(日本人の食事摂取基準2010)より算出
【2】摂りすぎも減らしすぎもダメな理由
炭水化物を摂りすぎたり、減らしすぎると体ではどのようなことが起こるのでしょうか。

●摂りすぎると…
血液中のブドウ糖(血糖)の濃度を「血糖値」といい、食事を摂ると血糖値は上昇します。

血糖値が上がると、通常はインスリンというホルモンによってブドウ糖(血糖)が細胞に取り込まれ、血糖値は一定に保たれています。

インスリンの分泌量が不十分になったり、インスリンそのものの働きが悪くなったりして、血糖値が下がらず、常に高い状態が続いているのが糖尿病です。

糖尿病まではいかなくとも、血液中にブドウ糖(血糖)が多い状態が続くと、血流の滞りなどによって血管は傷つきやすくなり、動脈硬化にもつながる恐れがあります。

また、健康な人でも炭水化物を摂りすぎると、血糖値が急激に上昇するため、血糖値を下げようとインスリンが大量に分泌されます。

インスリンには余ったエネルギーを体に溜め込む性質があり、血液中のブドウ糖(血糖)を細胞内に取り込もうと働くため、体に脂肪がつきやすくなってしまいます。

そのため、食後の血糖値の急上昇とインスリンの出すぎを防ぐ必要があるのです。

●減らしすぎると…
炭水化物を制限する食事方法は、食後の高血糖を防ぎ、体内の脂肪をエネルギーとして利用しやすくするので、減量に役立ちます。

しかし、炭水化物をほとんど摂取しないと、肝臓や筋肉に蓄えられたグリコーゲン(※)も減少するので、肝臓の機能や筋力が低下してしまいます。

さらに、摂取エネルギー量はそのままで炭水化物の摂取量だけを減らすと、その分だけ、たんぱく質や脂質、塩分など摂りすぎてしまうというデメリットもみられます。

長期間にわたって厳しい制限を行うと、腎臓病や血管障害、糖尿病の合併症などのリスクを高めるともいわれていて、専門家の間でも意見が分かれています。

次は食後の血糖値の急上昇とインスリンの出すぎを防ぐ工夫をご紹介します。

※ブドウ糖は肝臓や筋肉中にグリコーゲンとして蓄えられています。
【3】ポイントは食品のGIと食べ方
GI(グリセミック・インデックス※)とは、食品を食べた時の血糖値の上がり具合を示す指標です。
消化が良くて血糖値が上がりやすい食品ほどGIが高く、GIが低いものは血糖値の上昇がゆるやかです。

【高めの食品】
ご飯(精白米)、おかゆ、食パン、コーンフレーク、もち、さつま芋、じゃが芋、里芋、長芋(加熱)など

【低めの食品】
うどん、スパゲティ、そば、ライ麦パン、長芋(生)、みかん、りんご、バナナ、グレープフルーツなど
※ご飯(精白米)のGIを100とした場合の比較

同じ炭水化物でも食品の形状や食物繊維の量によって血糖値の上がり方は異なります。
ご飯やパンなどの主食はGIが高い食品ですが、食べ方によっても血糖値の上昇をゆるやかにすることが出来ます。


■食事はサラダなど野菜のおかずから食べる
野菜に含まれる食物繊維は、消化されないので血糖値を上げません。
先に体内に入ると、後から食べるご飯などの炭水化物の分解や吸収を遅らせるので、血糖値の上昇をおだやかにします。

■食物繊維の多い食材を組み合わせる 
食物繊維の多い食材を一緒に食べることもGIを下げるコツです。
◎「根菜やキノコ類を入れた混ぜご飯にする」
◎「チャーハンをレタスで包む」
◎「めん類はめんの量を減らし、野菜を多めにする」

野菜やキノコ類でかさ増しすると少なめの量でも満腹感が得られるのでおすすめです。
 
 
■牛乳・乳製品と一緒に食べる 
ご飯やパンなどのGIの高い食品も牛乳や乳製品と一緒に摂ることで、GIを下げることが出来ます。
◎「食事の前に牛乳を飲む」※1日あたりコップ1杯が目安
◎「パンやスパゲティにチーズをのせる」
◎「ご飯をチーズのリゾットにする」 

ご飯は精白米よりも玄米や麦入り、雑穀入りのもの、また、パンは白いパンよりも全粒粉パン、ライ麦パンなど食物繊維を多く含む穀類の方がGIは低くなります。
 

■加熱・ゆで方は少しかためにする
少しかために調理したり、パスタなどのめん類は中心に芯が残るくらいにするとGIがおさえられます。
かためにすることで、よく噛んで食べるようになるので早食いも防げます。


■酢を調味に使う 
酢に含まれる酢酸は、消化を遅くさせる作用を持つため、GIを下げるといわれています。
◎「ご飯を酢飯にする」
◎「出来上がった料理に酢をふりかける」
◎「汁物に酢をきかせる」

※食事の基本は適正エネルギー内で、バランスの良い食事を心がけることです。それと併せてGIもご参考ください。
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
昔、姉がダイエットのために夕食の主食を抜いては、「お腹すいた~」と夜中にお菓子を食べているのを見て、「あ~やっぱりご飯は抜くと良くないな」と思っていました。

大切なのは炭水化物の多い食品を避けたり、量を極端に控えることではなく、食べ方や他の食材をバランス良く摂ることなんだなと改めて思います。

そして食べた分は運動するということも肝心です!

そろそろ寒さもやわらいできました。
ちょっとした距離なら電車やエレベーターをやめて歩いてみることからはじめませんか。
【コラムの無断転載は禁止させていただいております】