健康コラム

no.88
テーマ:「味噌汁」
2014年6月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

紫陽花の花が美しい季節になりました。

雨が多く、高温多湿の気候では微生物が活発に活動します。

そのような風土を活かした食品として、日本では味噌や醤油、納豆などの発酵食品の文化が育ちました。

発酵食品の中でも今回は味噌に注目し、味噌汁をテーマにした健康コラムをお届けします。

体調を崩しやすいこの時季、栄養たっぷりの味噌汁で体調を整えてはいかがですか?
【1】味噌の数だけ味がある
和食といえば「ご飯に味噌汁!」というイメージが強いですよね。

それほど味噌汁は私たちに身近な存在であり、昔から日本人の長寿を支えてきた汁物です。

味噌汁の材料である味噌は、蒸した大豆に麹と食塩を加え、発酵させたものです。
使用する麹の種類によって「米みそ」「麦みそ」「豆みそ」に大きく分類されます。

米みそ:豆に米麹を加えてつくられる。
味にクセがなく、多くの人に好まれている味噌。全国の生産量の約8割を占める。
  
麦みそ:豆に麦麹を加えてつくられる。
自然な甘みがあり、野菜の味とよくなじむ味噌。別名“田舎味噌”とも呼ばれる。
   
豆みそ:大豆のみを主原料としてつくられる。
豆特有の旨みとかすかな渋みのある味噌。
愛知の“八丁味噌”が有名。

また、味(塩分量の違い)によって「甘みそ」「甘口みそ」「辛口みそ」に分類され、米みそは色の違いによって、さらに「赤みそ」「淡色みそ」「白みそ」に分けられます。

昔から日本ではその風土にあった味噌がつくられ、土地の銘柄が付いたものが多く存在します。

代表的な味噌を分類すると以下のようになります。

≪京都≫西京味噌(米みそ・白・甘)
≪長野≫信州味噌(米みそ・淡色・辛口)
≪宮城≫仙台味噌(米みそ・赤・辛口) 
≪鹿児島≫薩摩味噌(麦みそ・甘口)
≪愛知≫八丁味噌(豆みそ・辛口)

このように味噌は麹の種類やつくられ方、産地によって多様な種類があり、それぞれに独特の風味や味わいがあります。

また、産地の離れたものや素材の異なる味噌を合わせると風味がまろやかになり、違った味わいが楽しめるのでおすすめです。
【2】味噌汁パワーがすごい!
『実の三種は身の薬』という言葉をご存知でしょうか。

「実」とは味噌汁に入れる具材のこと、「身」とは食べる人の健康のことです。
三種類以上の具材を入れることで、自然と栄養バランスが整っていくんですね。

徳川家康は、毎日「五菜三根」の味噌汁を飲んでいたと伝えられています。
平均寿命が37~38歳の時代に75歳の長寿を全うできたのは味噌汁のおかげだったのかもしれません。

味噌汁の効果には次のようなものが知られています。

●コレステロールの抑制
味噌の主原料である大豆に含まれるサポニンには、血清コレステロールの上昇を抑える効果があり、レシチンや食物繊維にはコレステロールを排出する働きがあります。

●抗酸化作用
大豆に含まれるビタミンEや大豆イソフラボン、サポニン、褐色色素は、体内の酸化を防止する作用をもちます。

●胃潰瘍の予防
味噌の麹や酵母、乳酸菌に含まれる酵素には消化を助ける働きがあります。
味噌汁を毎日、または時々飲んでいる人は、全く飲まない人に比べて胃炎や胃・十二指腸潰瘍が少ないという研究結果もあります。
 
●ガンの予防
胃ガンは日本人がかかりやすいガンの一つですが、味噌汁を飲む人は胃ガンにかかる確率が低いという研究結果も発表されています。
その他にも乳ガンや肝臓ガン、大腸ガンなどにも予防効果があるといわれています。
 
●二日酔いの予防
大豆に含まれるコリンという成分は、アルコールの体外への排泄を助けます。

●美肌効果
味噌が発酵する過程で作られる遊離リノール酸は、メラニンの合成を抑え、シミやソバカスを防ぐ働きがあります。 


こうした様々な健康効果をもつ味噌汁ですが、
「味噌汁は塩分が高いから…」と減塩のために味噌汁を控える方もいるのではないでしょうか。

味噌汁1杯(150ml)あたりに含まれる塩分はおよそ1.5~2gほどです。
汁を少なめにしたり、旨味をたっぷりきかせた濃いだし汁を使うことで味噌の量を減らし、塩分を抑えることができます。

さらに、具に根菜類やいも類、緑黄色野菜などカリウムが豊富な食材を入れると、ナトリウム(食塩に含まれる成分の1つ)を体から排出してくれます。
具だくさんにすると彩りもよくなり、食欲をそそりますよ。
【3】冷たい味噌汁のすすめ
様々な健康効果のある味噌汁。
日頃から積極的にとりたいですね!
蒸し暑い梅雨時におすすめなのが、冷たい味噌汁です。

作り方は簡単、具にあらかじめ火を通しておき、冷ましておきます。
あとはお椀に冷やしただし汁を注ぎ、味噌を溶かして具をトッピングするだけ。

だし汁は冷蔵庫や冷凍庫で保存すれば日持ちするので、一人暮らしの方でも必要な分だけ作れて便利ですよ。

作り置きの味噌汁を冷蔵庫で冷やしても美味しいですが、熱を加えないことで、味噌に含まれる酵素をそのまま取り入れることができます。

味覚は冷たくなるほど塩味を感じやすくなるので、減塩効果もあり一石二鳥ですね。

具には、肉類など油脂が固まるような食材は避け、葉野菜や海藻類、豆腐など冷えても食べやすいものを選ぶのがポイントです。

これからの季節は夏野菜が旬を迎えます。

梅雨明けの夏の日差しを乗り切るためにも、ビタミン類の豊富な夏野菜の冷たい味噌汁を是非お試しください。
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
昔から日本人は米と味噌汁を食べてきました。

米には体作りに欠かせない必須アミノ酸のうち、リジンやスレオニンが不足しがちですが、大豆には豊富に含まれています。
反対に、大豆に少ないメチオニンは米にたくさん含まれていて、お互いに足りない栄養素を補うことのできる理想的な組み合わせなのです。

最近では海外の和食ブームで、味噌汁も和食に欠かせない健康食として知られるようになりました。

味噌の海外への輸出は、国内生産量からみると多くはありませんが、年々増加しており、この37年間で数量は約13倍、金額は約10倍に増えています。

国内では米離れとともに味噌の消費量の減少がすすんでいるといいます。
なんだかもったいないですよね。

今回、味噌汁について調べていると、本当に日本人にはぴったりの長寿食だなと感じました。
もう一度、和食や味噌汁のよさを見直したいと思います。

梅雨が明ければ、ぐんと気温が上昇します。
今の時季からしっかりと栄養・休養をとり、夏本番に備えておきましょう。
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