健康コラム

no.89
テーマ:「腸内環境」
2014年7月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

早いもので今年も半年が過ぎ、下半期に入りました。

京都は祇園祭の季節となり、いよいよ夏本番です。
みなさんいかがお過ごしでしょうか。

近頃、腸と健康との関係が注目されています。

夏は、クーラーで冷えた室内で過ごすことが多いことや無意識に摂り過ぎてしまう、冷たい食べ物や飲み物によって腸が冷えを起こしやすい季節です。

私たちは、生きていくために必要な栄養素を腸から吸収しています。

“腸が元気だと体も元気”と言われるほど、食べ物の消化・吸収・排泄を司る腸は、大切な臓器の1つです。
腸が冷えて動きが鈍くなると色々な場所に不調が現れやすくなります。

腸の中では、消化・吸収・排泄の他にも健康に生活するための大切な働きが行われているんですよ。

そこで、今回は「腸内環境」についてのお話です。
【1】腸内環境が大切な理由
腸は小腸と大腸に分かれていて、それぞれ次のような働きを行っています。

小腸:食べ物の最終消化と栄養の吸収
大腸:小腸で消化・吸収された食べ物の残りカスを一時的に蓄えて余分な水分を吸収し、程良い固さの便を作る

口から摂取した食べ物は、腸で吸収されて初めて体を作る栄養になります。
吸収された栄養は毛細血管を通って全身を巡っていきます。

さらに腸は、細菌やウイルスから体を守る免疫器官でもあります。

免疫とは、体内に侵入してくる細菌やウイルスを身体にとって有害か無害かを判断し有害なものを排除する機能のことです。

細菌やウイルスから体を守るための抗体を作る細胞をリンパ球と言い、腸管には、全体の60~70%のリンパ球が存在しています。

このことから“腸は人体最大の免疫器官”とも言われています。
腸の免疫システムは、腸内環境によって働きに違いが出てきます。

毎日、口にしている飲食物には、目には見えなくても、たくさんの細菌やウイルスがついています。

腸管の免疫が正常に機能していると、このような有害物質を吸収せずに排出を促しますが、免疫機能が弱っていると、体にとって有害な物質も栄養と一緒に吸収してしまい、有害物質も血液にのって全身へ流れていってしまいます。

腸内環境が乱れると栄養の消化・吸収がしっかりできなくなるだけでなく、体に不要なものまで吸収してしまい、体調不良や病気を引き起こすなど全身に悪影響を与えてしまうことになります。
【2】腸内細菌バランス
腸内には、多くの腸内細菌が存在していて腸内を顕微鏡でのぞくと、草花が生い茂った花畑のように見えます。
これを腸内細菌叢(腸内フローラ)と言います。

この腸内細菌叢は1人1人異なり、1回の食事やストレス、疲労などの影響を受けて刻々と変化しています。
この腸内細菌叢の状態が腸内環境を左右しているんです。

腸内細菌は、働きによって3種類に分類されています。

善玉菌とは :体に有益な菌
種類    :乳酸菌・ビフィズス菌など
善玉菌の働き:免疫機能の強化・細菌やウイルスなどの感染防止・消化吸収の補助・ビタミンの合成・腸管運動促進

悪玉菌とは :体に有害な菌
種類    :大腸菌・ウェルシュ菌など
悪玉菌の働き:腸内腐敗・毒素や発ガン物質産生・ガスの産生

日和見菌とは :善玉菌、悪玉菌どちらにもなりうる菌(中性菌)
種類     :バクテロイデス・ユウバクテリウムなど        
日和見菌の働き:腸内のバランスが善玉菌、悪玉菌どちらかが優勢になると優勢なほうに加担する
         
腸内細菌の数は、数百種類、100兆個以上とも言われ、重さにすると約1.5kgです。
体重の1.5kgが腸内細菌だと思うとすごい量ですね。

健康な人であれば善玉菌20%、悪玉菌10%、日和見菌70%のバランスが保たれています。      

偏った食生活やストレスがかかると悪玉菌が増え、便秘や下痢、生活習慣病、大腸ガンなどを引き起こしやすくなります。

けれども悪玉菌が全くいなくなると、善玉菌の力も弱まるので腸内環境を整えるためには、腸内細菌の“バランスを整える”ことが大切です。
【3】善玉菌を増やす秘訣
ある研究では、食事の内容を変えながら便に含まれる腸内細菌を調べてみたところ、食事の内容によって善玉菌と悪玉菌の割合が変化することが確認されたそうです。

腸内環境は様々な影響を受けて日々変化していますが、食生活に少し気を使うことで良い状態にしていくことができます。

善玉菌は加齢と共に減少してしまうため、積極的に増やしていくことが必要です。
善玉菌を含む食品や善玉菌を増やす成分を含む食品を、毎日食事に取り入れていきましょう。

□善玉菌を含む食品      
乳・乳製品、発酵食品(味噌、醤油、漬物など) 
                  
□善玉菌を増やす成分を含む食品
オリゴ糖(玉ねぎ、人参、アスパラ、大豆など)
食物繊維(モロヘイヤ、オクラ、山芋、寒天など)

テレビコマーシャルなどで目にすることも多いせいか、整腸作用がある食品と言えばヨーグルトが思い浮かびますね。

お腹の調子を整える(便秘・お腹の張りを解消するなど)ために、ヨーグルトを食べているのにあまり体調の変化を感じられないということはないでしょうか?

人間の腸内にいる善玉菌のほとんどが“ビフィズス菌”です。
1人1人体質が違うように、腸内細菌の種類やパターンも人それぞれなので、自分の体質に合ったものを選ぶ必要があります。
また、ヨーグルトを食べるタイミングにもコツがあります。

□ヨーグルトの種類によっては、ビフィズス菌が入っていないものもあるので、パッケージに菌の種類などが書かれているものを選びましょう。
ビフィズス菌の入ったヨーグルトの方が整腸作用が高いと言われています。

□自分に合ったものかどうか見極めるために、最低でも2週間は同じものを続けてみましょう。
2週間続けて体調に変化がなければ、ほかのヨーグルトを試してみるのも良いかもしれません。

□空腹時を避け、食後に摂りましょう。
乳酸菌は胃酸に弱いため、空腹時に摂ると濃い胃酸によって菌が死滅してしまうので、食後胃酸が薄くなったタイミングで摂取すると効果的です。
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
先日、私の従妹が女の子を出産しました。

赤ちゃんの体臭って独特ですよね。
オムツを変えるときも、なんだか可愛らしい匂いがしました。

この理由は、赤ちゃんの腸内環境にあります。

赤ちゃんの腸内は90%がビフィズス菌だそうです。
個人差もありますが、母乳やミルクを飲んでいる赤ちゃんの便が黄色っぽく、甘酸っぱい匂いがするのはこれが理由です。

離乳食が始まり、色々な食品を食べるようになると、腸内細菌のバランスが徐々に変化していき、大人になる頃には善玉菌は20%程になります。

悪玉菌が増えた腸内には毒素が発生し、栄養素と一緒に血液に流れ込み、汗の臭いや体臭の原因になります。

汗をかくことが多いこの季節、体臭を気にされる方もいるかと思います。
体の外からのケアも大切ですが、体の中にも目を向けて、善玉菌優位の腸にすることで体臭の原因も取り除くことができます。

赤ちゃんのような善玉菌優位な腸を目指していきたいですね。
腸内環境を整えて、暑い夏も元気にさわやかに過ごしましょう!!
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