健康コラム

no.90
テーマ:「酵素」
2014年8月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

今日、8月1日は、8(パ)と1(イ)の語呂合わせなどからパイン(パイナップル)の日だそうです。

ほどよい酸味と甘味に加え、みずみずしい果汁とのバランスが絶妙で、トロピカルフルーツの代表格といえる、パイン。

このパインは、単に美味しいだけではなく、たんぱく質を分解するブロメラインという“酵素”を含んでいることでも有名です。

さて、今月はこの“酵素”に注目します。
【1】酵素って??
酵素は、簡単にいうと、動植物の細胞内に存在するたんぱく質の一種です。

呼吸、消化吸収、新陳代謝(細胞の生まれ変わり)など生命活動に伴う体内の様々な化学反応に関わっています。

酵素は、その化学反応がスムーズかつスピーディーに行なわれるように“潤滑剤”のような役割をしています。

酵素は、体内で作られる酵素(①消化酵素、②代謝酵素)と体外から摂り込まれる酵素(③食物酵素)に大きく分類されます。

①消化酵素
読んで字のごとく消化に関係する酵素です。
食べた物を吸収されやすい状態まで分解する働きを担っています。

口、胃、腸などの消化器官には、消化酵素がそれぞれ存在し、消化をサポートしています。

小中学生の理科の授業で、ごはんをずっと噛み続けるという実験をされた経験はありませんか。

噛み続けていると、ほんのり甘味を感じるようになってきます。
これは唾液に含まれるアミラーゼという消化酵素の働きによるものです。
ごはんのでんぷんをアミラーゼが麦芽糖などへ分解するために起こります。
 
②代謝酵素
消化酵素によって分解され、体内へ吸収された栄養素をエネルギーとして利用するために働く酵素です。

呼吸、消化吸収、新陳代謝、汗や尿・便の排泄、免疫機能など様々な代謝に関わっています。
 
③食物酵素
食べ物に含まれる酵素です。
特に新鮮な野菜や果物、魚などには食物酵素が豊富です。

また、納豆や味噌、ぬか漬けといった発酵食品にも多く含まれていて、消化を促進させるなどの働きがあります。
【2】酵素の共通点
酵素と一口にいっても、数千もの種類があるといいます。
その働きはそれぞれ様々ですが、酵素には、共通した特徴があります。

◎酵素は作用する相手が決まっている
アミラーゼやプロテアーゼ、リパーゼ、これらはどれも消化酵素です。
アミラーゼはでんぷんを分解し、プロテアーゼはたんぱく質を、リパーゼは脂肪を分解します。 

少しむずかしい話になりますが、酵素が働く対象の物質を「基質」といい、このような酵素の特性を「基質特異性」といいます。
そのため、アミラーゼはでんぷんに対してのみ働き、アミラーゼがたんぱく質を分解したり、脂肪を分解することはありません。
 
◎酵素には働きやすい最適な温度がある
この温度を「至適温度」といいます。
酵素の中には20℃程度の低温で働くものもありますが、ほとんどの酵素の至適温度は、37℃前後です。

◎酵素には働きやすい最適なpH(酸性・アルカリ性の程度)がある 
胃液に含まれる消化酵素のペプシンは、強酸性(pH1.5~2.0)の環境で最もよく働きます。
このpHを「至適pH」といいます。

ほとんどの酵素は、pH7(中性)で最大限の力を発揮し、pH4以下(酸性)やpH10以上(アルカリ性)になると、働きを失います。

◎酵素は熱に弱い
たんぱく質からなる生卵に火を通すと、ゆで卵や目玉焼きのように色が変わり、生卵のような流動性はなくなります。
酵素もたんぱく質からできているため、熱が加わると変化して、酵素の働きも失われてしまいます。
【3】酵素のパワーを補うもの
酵素の中には、酵素だけで働くものもあれば、酵素以外の栄養成分の助けがなければ、働けない酵素もあります。
そのような酵素が働くために必要な栄養成分を「補酵素」といいます。

ここでは、そのいくつかをご紹介します。

■ビタミンB1
脱炭素酵素という酵素の補酵素として働き、糖質の代謝をサポートします。
→豚肉・うなぎ・大豆・玄米ごはんなどに多く含まれます。

■ビタミンB2
3大栄養素(糖質・脂質・たんぱく質)の代謝に関わる補酵素の成分です。
→豚レバー・牛レバー・うなぎ・かれい・牛乳・納豆などに多く含まれます。

■ナイアシン
脱水素酵素の補酵素として、3大栄養素の代謝に関わっていて、アルコール分解酵素の補酵素としても働きます。
→かつおけずり節・まぐろ・まさば・さわら・鶏肉・えのきだけ・しめじ・玄米ごはん・落花生などに多く含まれます。

■ビタミンB6
約100種類以上の酵素の補酵素となりますが、主にトランスアミラーゼやデカルボキシラーゼなどアミノ酸の代謝に関わる酵素の補酵素として働きます。
→まぐろ(赤身)・かつお・さんま・牛レバー・カリフラワー・アボガド・バナナなどに多く含まれます。

■葉酸
細胞を新しく作り出すために必要な核酸(DNAやRNA)の代謝やアミノ酸の代謝を担う酵素の補酵素として働きます。
→レバー・緑の緑黄食野菜(からし菜・ほうれん草・春菊・モロヘイヤなど)に多く含まれます。

■ビタミンB12
葉酸とともに、核酸やアミノ酸の代謝に関わる酵素の補酵素として働きます。
→牛レバー・鶏レバー・さんま・かき・あさりなどに多く含まれます。
  
■ビオチン
カルボキシラーゼという酵素の補酵素として働き、糖質の代謝をサポートします。また、脂質やたんぱく質の代謝にも関わっています。
→豚レバー・ししゃも・大豆・カリフラワー・ほうれん草などに多く含まれます。

■パントテン酸
コエンザイムAという補酵素の成分になり、脂質や糖質など多くの酵素の反応をサポートします。
→納豆・カリフラワー・モロヘイヤ・ブロッコリー・れんこんなどに多く含まれます。

■銅
鉄を利用しやすくする酵素の構成成分として欠かせません。
また、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)という抗酸化酵素の構成成分です。
→牛レバー・ほたるいか・生かき・カシュナッツ・アーモンドなどに多く含まれます。

■鉄
エネルギー代謝に関わるシトクロームやカタラーゼといった酵素の構成成分として細胞内に存在し、体内の多くの化学反応に関わっています。
また、呼吸に関する酵素の働きを助けます。
→レバー・大豆・乾燥ひじき・あさり・かき・ほうれん草などに多く含まれます。

■マグネシウム
約300種類以上もの酵素の働きをサポートします。
→玄米ごはん・かき・まぐろ・かつお・大豆・乾燥ひじき・アーモンド・ごま・ほうれん草などに多く含まれます。

■マンガン
糖質・脂質の代謝に働く酵素や抗酸化作用をもつ酵素など多くの酵素と結合することで酵素の働きを活性化させます。
また、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)の構成成分としてマンガンは有名です。
→玄米ごはん・そば・大豆・くるみ・アーモンド・さつまいもなどに多く含まれます。

■亜鉛
骨の代謝に関わるアルカリホスファターゼや、たんぱく質の代謝に関わるロイシンアミノペプチターゼなどの酵素の構成成分で、約200種類以上もの酵素の反応に関与しています。
また、亜鉛はアルコールを分解するアルコールデヒドロゲナーゼという酵素の働きにも不可欠です。
→かき・牛肉・大豆などに多く含まれます。

■セレン
強力な抗酸化作用をもつグルタチオンペルオキシダーゼという酵素の構成成分です。
→かつお・さわら・わかさぎ・いわし・鶏肉などに多く含まれます。

厳密にいうと、ミネラルは「金属イオン」といわれ、「補酵素」とは分けられますが、ミネラルは、ビタミンと同じく酵素の働きを助けるという意味で、「補酵素」と呼ばれたり、同じように扱われることが多いようです。
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
洗濯洗剤のCMでは「酵素パワーで汚れをオフ!」なんて宣伝文句が聞かれます。

このような洗剤の酵素は、頑固な汚れを落とすために必要な化学反応を助ける目的で用いられているのです。

皮脂やアカの汚れの成分は、元をたどればたんぱく質や脂質などです。

たんぱく質の汚れを落とすためには、プロテアーゼ(たんぱく質分解酵素)が、脂質の汚れを落とすためには、リパーゼ(脂質分解酵素)というように、汚れの成分に働く酵素が配合されているのです。

さて、今月は酵素についてお届けしました。
酵素については、まだまだ未解明な部分もたくさんありますが、加齢によって酵素を合成する能力が低下してくることが知られています。

また、最近では、暴飲暴食、偏った食生活、不規則な生活習慣、ストレス、喫煙などが酵素を消耗させてしまうと指摘されています。

普段の生活習慣に気をつけ、バランスの良い食事でビタミン・ミネラルをしっかり補って、酵素パワー全開で暑い夏を乗り切りましょう。
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