健康コラム

no.91
テーマ:「秋の食材」
2014年9月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

厳しい暑さや天候不順の続いた8月が終わり、今日から9月に入りました。

美味しい食べ物が出回るこの季節、秋が深まっていくのが楽しみですね。

今回はその“秋の食材”がテーマです。
【1】「春は苦味、夏は酸味、秋は甘味、冬は厚味」
秋は収穫の季節であり、1年の中で最も旬の食材が豊かです。

旬の野菜にはその時期の気候に合わせて、私たちの体調を整える働きがあることは以前の健康コラムでもご紹介しましたね。

秋の食材はビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富で夏場の疲れをとる働きがあり、これから迎える厳しい冬に備えた体作りに役立つといわれます。

また、栄養素だけでなく食材の持つ味わいは「春は苦味、夏は酸味、秋は甘味、冬は厚味(※)」という具合に季節ごとに変化します。

※厚味:味がこってりしていて、おいしいこと。

春は毒消しの苦味、夏は疲労回復の酸味、秋はエネルギーを蓄えるための甘味、冬は身体を温めるための厚味など私たちが本能的に求める味と一致しているのはおもしろいですね。
【2】いくつ知ってますか?秋の食材
では、秋の代表的な食材を見ていきましょう。

●魚介類:水温が低くなるため、身に脂がのり、美味しくなります。 
     
鮭…消化・吸収のよい良質のたんぱく質やビタミン類を含みます。
また、身に含まれる赤の色素はアスタキサンチンと呼ばれ、ビタミンEの約1000倍という強い抗酸化力を持っています。     

鯖…9~10月頃に獲れるものを「秋鯖」と呼び、脂がのった秋鯖は、EPAやDHAをより多く含んでいます。
また、血合いには鉄分やビタミン類が豊富です。     

秋刀魚…「秋といえば秋刀魚!」といわれるほど、秋の食材の代表格です。
脂には動脈硬化など生活習慣病予防にも役立つEPAやDHAが多く含まれ、たんぱく質、ビタミンB12、カルシウム、鉄分など栄養バランスも優れています。

    
●いも類:食物繊維やカリウムが豊富です。

さつまいも…ビタミンC、E、食物繊維が豊富です。
特にいも類に含まれるビタミンCは、加熱しても壊れにくいという特長があります。

さといも…水分が多く、いも類の中では低カロリーです。
独特のねばりには、傷ついた粘膜の修復作用や胃や腸の壁を保護する働きが認められています。


●きのこ類:食物繊維やビタミンB群、ビタミンDが多く含まれます。

しいたけ…世界3大栽培きのこ(※)の1つで、日本で栽培法が開発されました。
また、日光に当てるとビタミンDに変化するエルゴステロールを多く含むので、調理前には天日干しするのがおすすめです。
※世界3大栽培きのこ:しいたけ・ふくろたけ・マッシュルーム
        
しめじ…「香りまつたけ、味しめじ」といわれるように、旨みが強いのが特長です。
きのこの中でも特にビタミンDが豊富です。

まいたけ…しめじと並んで旨み成分の多いきのこです。
他のきのこに比べて食物繊維の一種であるグルカンが多く、ガンや高脂血症の予防効果でも注目されています。


●果物類:夏場の果物に比べて酸味が少なく、甘味の強いものが多くみられます。     
     
柿…あまり知られていませんがビタミンCが抜群に多く、みかんやレモン果汁よりも多く含まれています。
また、二日酔いの予防にも効果があるといわれています。
  
梨…アスパラギン酸、クエン酸、リンゴ酸など疲労回復作用のある酸が豊富です。
  
ぶどう…糖類の中でもっとも吸収のよいブドウ糖が主成分のため、疲労回復に最適な果物です。
酸化作用のあるポリフェノールは、皮や種に多く含まれているので、皮ごとミキサーにかけて摂るのが理想的です。
  

●種実類:植物の発芽に必要な成分が蓄えられており、栄養価が高い食品です。
     
銀杏…木の実の中ではビタミンCとカリウムが多いのが特長で、良質な脂質、たんぱく質も含まれる栄養食品です。
   
栗…栗の渋皮にはポリフェノールのタンニンが含まれ、ガン予防や動脈硬化予防に効果が期待されています。
 
≪ご注意≫
銀杏は食べすぎると食中毒を起こすことがあります。
特に5才未満のお子様は注意が必要です。
【3】秋の食材の組み合わせのコツ
食べ物のもつ栄養素は、単体でなく、組み合わせることによって一層力を発揮します。

ここでは秋の食材と相性のよい食材をご紹介します。
是非、献立の参考にしてくださいね。


【鯖×酢・緑黄色野菜・オリーブオイル】
鯖に含まれるEPAやDHAは酸化されやすいため、抗酸化力のある食材と組み合わせると効果的です。
代表的なものに、酢を使ったしめ鯖があります。 

【さつまいも×緑黄色野菜】
さつまいもはβ-カロテンを含む緑黄色野菜と組み合わせることでビタミンC、E、β-カロテンの3大抗酸化ビタミンがそろいます。
豚汁(+人参)や、炊き込みご飯(+かぼちゃ)にするのもおすすめです。

【きのこ類×小魚・乳製品・大豆製品・海藻類】
きのこ類に多く含まれるビタミンDはカルシウムの吸収を高めます。
グラタンやひじき煮、ごまやちりめんじゃこを使った和え物に加えるのも◎です。
 
【梨×肉類】
梨はたんぱく質の分解酵素を含むので、肉類の消化を助けます。
韓国料理では肉の下味やユッケの添え物にも梨が使われているんですよ。

【銀杏×卵・かぼちゃ・まぐろの油漬缶詰】
銀杏はビタミンEの多い食材と合わせると、抗酸化力がさらに高まります。
茶わん蒸しには銀杏がお決まりですが、栄養的に良い組み合わせなんですね。
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
食べ物が美味しい季節になると嬉しい反面、「体重が増えて困ってしまう…」なんて声も聞こえてきそうです。

自然界の生き物は、厳しい冬を乗り越えるために秋の間に体にしっかりと栄養を蓄えます。

ついつい食べすぎてしまうのは、冬に備えるための自然な欲求なのかもしれませんね。

「暑さ寒さも彼岸まで」といわれます。
食べすぎには注意しつつ、秋の食材を上手く取り入れて残暑を乗り切りましょう。
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