健康コラム

no.94
テーマ:「そば」
2014年12月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

いよいよ今日から師走ですね。

大晦日に食べるものといえば年越しそばですが、昔、江戸の商人は毎月月末(みそか)に縁起物としてそばを食べていたそうです。

それに由来して、12月以外も毎月月末はそばの日と日本麺業団体連合会によって定められているそうですよ。

今回は年末の風物詩“そば”をテーマにメルマガをお届けします。
【1】実は世界で食べられています
そばの原料となるソバ(植物)は、同じ穀類の米や小麦のようなイネ科ではなく、タデ科の植物です。

収穫までの期間が短く、寒冷地や痩せた土地でもよく育つため、昔から米不足に悩まされてきた地域でも積極的に栽培されていました。

ソバは日本独自のものと思われがちですが、世界でも主食として、また小麦の代わりとしても栽培されており、日常的に様々な料理に活用されています。

世界の代表的なソバ料理をご紹介いたします。

イタリア…ピッツォッケリ【そば粉のパスタ】
ネパール…ロティ【そば粉の無発酵パン】
フランス…ガレット【そば粉のクレープ】
ロシア…カーシャ【ソバの実など穀類のミルク粥】
韓国…平壌冷麺【そば粉の冷麺】

特にロシアはソバの生産量・消費量が世界的に多い国として知られています。
ソバの実を粒のまま干して炊いて、おかずとしても食べるそうですよ。

ソバのイメージがガラッと変わりますね。
【2】そば=麺じゃなかった?
私たちが普段『そば』と聞いてイメージするのは麺状のものですよね。
実は昔は違ったようです。

そばは『そば切り』とも呼ばれます。
江戸時代の中頃まで、そばといえば麺ではなく、そば粉をお湯で練った『そばがき』のことを指していました。

麺状のそばを食べるのが定着してきたのは、江戸時代だといわれています。

同じ頃、江戸では玄米に代わって白米を食べるようになり、脚気(ビタミンB1欠乏症)が流行しました。

白米は玄米の表面(胚芽)を削るため、そこに含まれるビタミンやミネラル、食物繊維が失われてしまいます。
特にビタミンB1についてはおよそ5分の1に減少します。

もちろん、白米を主食としても他の食品から栄養をとっていれば脚気になることはほとんどありません。

しかし、昔の日本人の食生活はおかずをほとんどとらず、栄養源を主食に頼っていたので、脚気になりやすかったのです。

当時は何が原因かは分からなかったものの、そばを食べると症状が快方に向かうことから(※)漢方医学でも療法としても用いられていたそうです。
そばのすごさが分かるエピソードですね。

※そばは脚気の予防・治療に効果のあるビタミンB1が豊富に含まれる
【3】そばってすごい!
そばのすごさは脚気の予防だけではないんですよ。

低カロリーにもかかわらず、良質のたんぱく質を含み、ビタミン類やアミノ酸の含有量が白米や小麦に比べて優れているのです。

また、そばは腹持ちがよく血糖値の上昇がゆるやかなので、糖尿病の予防にも役立ちます。

様々な健康効果が知られているそば。
そのなかでも注目の成分が“ルチン”です。

ルチンにはビタミンCを補強して毛細血管を丈夫にする働きがあり、動脈硬化や高血圧の予防にも効果が期待されています。

ここではルチンを効果的にとるためのポイントをご紹介します。

①ビタミンCと組み合わせて食べよう 
ルチンはビタミンCの吸収を助ける効果があり、一緒にとることで働きがよくなるといわれています。
そばの付け合せに野菜を食べたり、食後に果物を食べるのもおすすめですよ。
  
②そば湯を飲もう 
ルチンは水に溶けやすい性質をもち、そば湯には溶けだしたルチンが豊富に含まれています。
ただし、ゆでて売っている麺や乾麺のゆで汁には、そば湯の効果はないので注意が必要です。

③そば粉の割合の多いものを選ぼう
そばであれば、どんなものでも効果が期待できるわけではありません。
市販のそばには成分のほとんどが小麦粉で出来ているものもあります。
十割そば(そば粉100%のもの)や二八そば(小麦粉20%、そば粉80%)を選ぶようにしましょう。

とはいっても、手作りのそばやそば湯を頻繁に飲むのは難しいですよね。
日頃からそばの栄養をとりたい方におすすめなのが『そば茶』です。

そば茶はそばの実を挽いて焙ったものです。
普段のお茶を沸かす要領で作ることができ、ルチン・たんぱく質・ビタミンなどが豊富に含まれます。

牛乳とも相性がよいので、カフェラテのように濃いめのそば茶と合わせて“そば茶ラテ”として楽しむのもよいですね。

また、そば茶の出がらしも美味しく食べることができます。
お米と炊飯したり、スープやハンバーグなどの料理に混ぜたり、クランチ代わりにお菓子に使うと丸ごと味わうことができますよ。

少し手間がかかっても平気!という方は、小麦粉の代わりにそば粉を使った手作りのクレープやそばがき、あべかわ餅などもおすすめです。
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
そばといえば、学生時代にしていたそば屋でのアルバイトを思い出します。

観光地の伏見稲荷大社が近かったので、外国人のお客さんから
「いなり(いなり寿司)って何?」「そばって何?」とよく聞かれて困っていました。

ある時近くにいたお客様が、
「そばはブラックヌードル、うどんはホワイトヌードル」
と説明されているのを聞いて、「分かりやすいな~」と思ったのを覚えています。

※本来のそばの英訳は“buckwheat noodles”

12月は何かと忙しい時期。
「早く、ゆっくり年越しそばを食べたいな」と思うこの頃です。
皆さんもどうぞよい新年をお迎えください。
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