健康コラム

no.217
テーマ:「植物」
2025年10月号
忙しい毎日の中で、ふと道端の草花に心が和んだり、窓辺の緑に癒されたりした経験はありませんか?

とりわけ秋は、木々が美しく色づく紅葉の季節。植物たちが一年で最も豊かな表情を見せてくれます。

今回は、そんな私たちの心に寄り添い、リフレッシュさせてくれる「植物」の持つ力について調べてみました。
【1】心と体を整える「植物」の不思議な力
植物は、私たちの生活を豊かにしてくれる様々な効果があります。

●免疫力を高める(※1)
森の中を歩くとリラックスできるのは、「フィトンチッド」という香りの成分を感じるからといわれています。
フィトンチッドは、植物にたえず侵入しようとする有害な微生物や昆虫から身を守るために植物自身が作る物質です。

森林浴を行うと、白血球に含まれるリンパ球の⼀種でガン細胞やウイルスを殺傷するNK(ナチュラルキラー)細胞が活性化し、その効果は森林を離れてからも⼀定期間続くことが分かっています。

また、最近の研究では、森林浴には、高血圧などの生活習慣病予防や、抗うつ機能があるというデータも出ています。


●ストレスを軽減する(※2)
花のある部屋と花のない部屋にいる人の神経活動を比較すると、花のある部屋で過ごす人は、ストレス時に高まる交感神経の活動が25%抑えられる一方、リラックス時に高まる副交感神経の活動が29%高まるという実験結果があります。

また、植物の緑色には緊張を緩和させる効果があると言われています。


●目の疲れを和らげる(※3)
デスクワーク中に植物を視界に入れることで、目のピント調節機能の緊張がほぐれ、視覚的な疲労が回復しやすくなるというデータがあります。

※1 国立研究開発法人森林研究・整備機構 森林総合研究所「第2期中期計画成果集 重点課題アイc 森林の保健・レクリエーション機能等の活用技術の開発」
※3 138  植物工場学会誌(JOURNAL OF SHITA)7 (3):138―143.1995. 浅海英記 ・仁科弘重 ・中村博文 ・増井典良 ・橋本康
【2】植物を育てることで得られる、さらなる癒し効果
植物は、側で見ているだけでも様々な効果がありますが、植物を育てるという行為自体にも心を癒してくれる力があります。

土いじりや植物の成長を見守ることで、幸せホルモンとよばれている「セロトニン」の分泌が促進されると言われています。

また、小さな種から芽が出たときの喜びや丹精込めて育てた花が咲いたときの感動は、何ものにも代えがたいものですよね。

「自分の手で生命を育む」という経験は、日々の成長を見守る中で「自分にもできる」という自信と達成感をもたらし、自己肯定感を高めてくれます。

このような植物との関わりを通じた心身の健康回復は「園芸療法」として確立されており、医療や福祉の現場では、リハビリテーションや認知症ケアの一環としても積極的に取り入れられています。
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
植物は、見ているだけで癒されるな~と感じていましたが、科学的にも根拠があるんですね。

私自身も「テラリウム(ガラスなど光が通る密閉された透明なケースの中で、生き物を育てる方法)」で苔を育てたことがありますが、水のあげすぎで枯らしてしまった経験があります。

その時、植物を育てるには「適度な距離感」が大切で、過保護は禁物なのだと学びました。

この「自分に合った付き合い方」を見つけることこそ、植物と長く楽しむコツなのかもしれません。
植物を選ぶ際は、自身の生活シーンにあったパートナーとなる植物を選ぶとさらに楽しさの幅がひろがりますよ。

例えば、ミントやバジルなどのハーブは植物として癒しを与えてくれるだけでなく、フレッシュな状態でお料理にも使えます。

また、寝室にラベンダーを置くと鎮静作用で安眠効果が得られますし、サンセベリアは夜間にも酸素を放出するため室内の酸素濃度を上げてくれるのに役立つ植物といわれています。

お部屋の環境や生活シーンに合わせて、まずは1鉢から選んでみてはいかがでしょうか。
小さな緑を取り入れることで、毎日が少し豊かになりますよ。
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