健康コラム

no.198
テーマ:「オートファジー」
2023年8月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

最近“16時間断食”などのプチ断食・ファスティングが注目されており、実践されている方も多いのではないでしょうか?

空腹の時間を長く作ることで、

●内臓を休ませることができる
●脂肪が分解され、肥満を防止できる
●血糖値が下がり、インスリンの適切な分泌が促される

といったメリットがありますが、それに加え“体を一時的に飢餓状態にすることで「オートファジー」の働きを活性化できる”という点も注目されているポイントです。

まだまだ解明されていない部分も多い仕組みですが、知っておくことで、健康に長生きするためのヒントになるかもしれません!
【1】オートファジーとは?
オートファジーとは、真核生物(※)があらかじめ持っている機能で「細胞の中の物を回収して、分解してリサイクルする働き」「細胞を自分の力で新品にする機能」のことをいいます。

※ ヒトをはじめとする動物、植物、菌類など、体を構成する細胞の中に細胞核を有する生物のこと。

あえて細胞を壊して修繕し続けることで、私たちの体が“昨日も今日も同じように過ごすことができている”=“恒常性を保っている”ということになります。

恒常性を維持するために「自らあえて壊す」というのが面白い仕組みですよね!

オートファジーの主な役割は、

(1)飢餓状態になったときに、細胞の中身を分解して栄養源にする
(2)細胞の新陳代謝(ターンオーバー)を行う
(3)細胞内の有害な物を除去する

以上の3点です。

“飢餓状態”というと何日も食事を摂っていない状態をイメージしますが、食後4時間ほどでオートファジーは活性化しはじめるといわれています。

「ものの4時間で活性化しはじめるなら、何日か断食すれば病気知らずになるのでは…!」
と思うかもしれませんが、極端な断食はリスクが大きすぎるので、おすすめできません。

◎食事と食事の間は4時間以上あけ、空腹の時間を長くする
◎満腹になるまで食べない(腹八分目に抑える)

まず以上2点を心がけてみてください♪
【2】オートファジーを活性化させる食品成分
断食だけでなく、普段口にするものでオートファジーを活性化できれば嬉しいですよね。

オートファジーを活性化させるための食品成分の研究は、近年盛んに行われています。

現在関連性が分かっている代表的な成分と食材を紹介していきます!


●スペルミジン
→豆類や発酵食品に多く含まれているポリアミン(※)の一種。
 体内でも合成されるが、歳をとると合成できる量が激減する。

【食材例】納豆、チーズ、味噌、醤油、しいたけなどのきのこ類

※ 細胞を持つ全ての生物に存在している成分。
  アミノ酸の一種であるアルギニンから合成され、体内でも作られる。


●アスタキサンチン
→天然の赤い色素で、カロテノイドの一種。
 カロテノイドの中でもアスタキサンチンがオートファジーの観点で注目されている。
(トマトのリコピンや人参のβ-カロテンもカロテノイドの一種。)

【食材例】サケ、イクラ、エビ


●レスベラトロール
→ポリフェノールの一種。
 植物が紫外線などのストレスや病原菌から自分を守るために作る、防御成分のひとつ。

【食材例】赤ワイン、ブドウ、ピーナッツの皮


●カテキン
→主にお茶の苦渋味成分であり、ポリフェノールの一種。

【食材例】緑茶、抹茶、ココア


また、適度な運動によってオートファジーが活性化することも、マウスを用いた研究により証明されているようです。(※)

※ アメリカの研究グループによる研究。
ランニングマシーンで走らせたマウスと全く走らせないマウスでは、明らかにオートファジーの量が違うという結果が出ている。
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
周りで16時間断食をしている人が多く、痩せた人もいれば、全然変わらなかった…という声もちらほら(笑)

断食はやり方を間違えると、体への負担が大きくリスクもありますが、空腹時間を長くすることのメリットは自分自身も実感することが多いです。

結局のところ、
●腹八分目
●間食をなるべく摂らない(空腹時間を長くする)
●適度な運動

といった、一般的に「良い習慣」といわれていることを続けるのが第一ですね。

オートファジーについては、研究が進み今後様々なことが分かってくると思います。

有益な情報をお伝えできるように、引き続き情報を追っていきます!
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