健康コラム

no.181
テーマ:「あなたにとって“肉”は〇肉?食にも方言が!?」
2022年3月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

みなさん、おんなじ日本に住んでいるのに、食文化のちがいに驚くことはありませんか?


例えば、肉じゃがを作るために、スーパーに買い物に行くとします。

スーパーに着いて、ニンジン、玉ねぎ、ジャガイモ、お肉を買って…。


【今想像したお肉=〇肉】でしたか?


実は、お住まいの地域によって、浮かんだお肉の種類がちがうと思います。


当たり前だと考えている食文化が当たり前ではないかもしれません!

今回は、地域によって異なる食文化をご紹介します。
【1】“お肉”といえば〇肉でしょ! 肉まん?豚まん?
冒頭、肉じゃがの話をしましたが、地域によって、使うお肉がちがいます!


例外もあると思いますが、肉じゃがには…

★“豚肉”でしょ!⇒東日本出身

★絶対“牛肉!”⇒西日本出身

※「鶏」「その他のお肉」を思い浮かべてくださった方、申し訳ございません…。
今回は、上記2つの肉についてお話しします。


そもそもなぜ、地域によって“お肉”でイメージする肉がちがうのでしょうか…。

これは、肉食文化が始まった明治初期まで遡ります。


今では【お肉=豚肉】の東京ですが…

実は…
東京も、明治初期は【牛肉】を食べていました。

なぜ豚ではなかったのかというと、「豚は残飯などありあわせのエサで飼育されていて、イメージが悪かった」から。


しかし、東京近郊の農家では豚の飼育が広がっていきました。

理由はなんと、「豚のし尿を作物の肥料にするため!」。

はじめは、肉よりも“し尿”の方が大切だったとは驚きですよね!


その後、洋食文化が広がりを見せ、東京では洋食店がたくさん誕生していきました。

また、コレラの流行で、【生食が危険!】という行政の指導もあり、火を通して食べる身近にあった豚肉に注目が集まるきっかけとなりました。

ポークカレーなど豚肉を活用した料理が作られるようになり、トンカツが生まれたのもこの頃。

大正時代には、関東で豚肉食が定番に!
以降、肉といえば【豚肉】となりました。


さて、西日本は?

かつて、西日本では農耕用に牛を多く飼育していて、牛をすぐに食べられる環境が整っていました。
産地の多かった西日本は、牛肉が比較的安く、味もよかったため、大正時代になっても豚の需要が大きく上がることはありませんでした。
当時の肉といえば【牛肉】という考えが現代まで続いているのでしょう。


ちなみに他の例をみると…

東日本では【お肉=豚肉】なので、“肉まん”、
西日本では【お肉=牛肉】なので、“豚まん”です。


みなさんの地域ではどう呼んでいますか?
もちろん私の住む関西は“豚まん”です!
【2】“きつね”“たぬき”で想像するものは?
次は、“きつね”と“たぬき”のお話です。

もちろん食べ物の話ですよ(笑)。


こちらも頭に浮かんだものがそれぞれちがったと思います。


まずは、関東の“きつね”と“たぬき”。

関東では、“きつねうどん”“きつねそば”は、甘辛いお揚げがのったもの。
それぞれに「うどん」「そば」をつけたように、どちらもあります。

それに対して“たぬきうどん”“たぬきそば”は、揚げ玉がのったもの。
こちらも「うどん」「そば」のどちらもあります。

関東は、【きつねは甘辛いお揚げ】【たぬきは揚げ玉】という認識です。



続いて、関西の“きつね”と“たぬき”。

関西では、“きつね”は甘辛いお揚げがのったうどん。

それに対して“たぬき”は甘辛いお揚げがのったそば。

関西は、いずれも甘辛いお揚げで、【うどん】【そば】のちがいです。

関西では、天かすが無料で入れ放題のお店も多いので、関東の“たぬき”に当たるものはないお店も多いです。
同じものを出しているお店では、【はいから】と呼ばれています。



ただし、京都は少しちがっています。

京都の“きつね”もお揚げさんがのったうどん。

一枚物のお揚げさんというよりは、細く切ったものを使うお店も多いです。

一説には、舞妓さんが大きな口を開けずに食べることが出来るからともいわれています。

さらに、甘辛いお揚げさんがのったうどんを【あまぎつね】、味付けをしていないお揚げさんがのったうどんを【きざみきつね】と分けているお店もあります。


大きく異なるのは“たぬき”!

京都の“たぬき”は、味付けをしていない細く切ったお揚げさんとねぎとしょうがが具で、出汁があんかけになったうどんです。
(味付けしているお揚げさんもあるそう!)

きつねのあんかけなのでドロンとしている、すなわち、「きつねがたぬきにドロンと化けた」というのが名前の由来とも…。

出前で頼んでも冷めないし、しょうがでさらに体の内から温まるという、底冷えする京都にぴったりなうどんです。
はじめに考えた方は天才ですね!(笑)

京都で生まれ育った私は、家でもよく食べていました。
おいしいし、温まるので、冷え症の方には特におすすめです♪

京都は、【きつねは甘辛いお揚げさん(甘辛くない場合も)】【たぬきはあんかけ出汁にお揚げさんとねぎとしょうが】です。
「うどん」「そば」のどちらもあります。


最後に…
地域に合わせて、あえて言葉の使い分けをしていましたが、みなさん気づきましたか?(笑)

(1)
関東:揚げ玉
関西:天かす

(2)
京都:お揚げさん
その他:お揚げ
【3】ひなまつりに食べる“あれ”もちがうんです!
3月3日は桃の節句、ひなまつりですね!

ひなまつりといえば、ひなあられを食べることも多いと思います。

私も昔はよく食べていて、兄弟3人でマヨネーズ味とチョコ味のひなあられを取り合っていました(笑)。


今の私の話に「ん?」と思われた方、主に東日本の方ですよね!


チョコ味に関しては関西でもちょっとレアではありましたが、1袋の中に、【塩辛い味のおかき、甘い味のおかきが入っているのがひなあられ(直径1cmほど)】です。

このようなひなあられになったのは、「涅槃会(ねはんえ):お釈迦様が亡くなられた日に行う法要」の際にお供えする“おかき”が起源といわれています。

この法要の際に、直径1cmほどのおかきに醤油や黒砂糖などで味付けしたお菓子をお供えします。
京都のお菓子屋さんでは、名物として売られているものも。

このおかきが京都を中心に関西に広がり、現代の関西のひなあられにつながっていったのでしょう。


それに対して、関東のひなあられは、【ポン菓子を砂糖でコーティングしたもの】が主流。
関東で育ったという方は、ひなあられといえば、こちらが頭に浮かぶと思います。

関東のひなあられは、江戸時代に売られていた「はぜ」が起源ではないかという説があります。

「はぜ」はもち米を煎って作られます。
米がはぜると稲の花のようになることから、縁起物として重宝され、年賀のお客様に出していたそうです。
縁起物だったので、桃の節句のお菓子にもなったと考えられています。


この2種類以外にも、それぞれの地域に合わせた別のお菓子もありますし、異なる地域もあると思いますが、おおむね東日本が関東のひなあられ、関西を中心に西日本が関西のひなあられとなっているようです。


私は生まれも育ちも関西(京都)なので、スーパーに行っても関東のひなあられを見かけることはないのですが、ポン菓子は好きなので、関東のひなあられも食べてみたいです。
今年は東京にいる兄弟に買ってきてもらったので、今度食べてみます♪
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
ここまで、食にも方言があるということで、3つ取り上げました。

書籍やインターネットで調べただけだと、実際もそうなのかわからないので…

社内でアンケートをとって確認しました!!!

今回、出身地ごとにアンケートをとりましたが、地域によっては人数が少ないため、【東日本】と【西日本】に分けて見てみました。

そうすると…

東日本:北海道~東海
西日本:関西~九州(北陸も含む)


★東日本 回答者数:12名
(1)あなたが“肉”とだけ聞いて思い浮かべるのは…〇肉でしょ!

牛肉:42%
豚肉:50%
鶏肉:8%

(2)あなたが思う“たぬき”はどれ?

関東のたぬき:84%
関西のたぬき:8%
京都のたぬき:8%

(3)あなたが思う“ひなあられ”はどれ?

関東のひなあられ:100%
関西のひなあられ:0%


★西日本 回答者数:21名
(1)あなたが“肉”とだけ聞いて思い浮かべるのは…〇肉でしょ!

牛肉:85%
豚肉:5%
鶏肉:10%

(2)あなたが思う“たぬき”はどれ?

関東のたぬき:24%
関西のたぬき:43%
京都のたぬき:28%
その他:5%

(3)あなたが思う“ひなあられ”はどれ?

関東のひなあられ:5%
関西のひなあられ:95%


大差がないものもありましたが、東日本・西日本ともに、どの質問も【1】【2】【3】で紹介した通りの結果が得られました。

現代では、関東⇔関西は、数時間もあれば行き来ができますし、インターネットを用いれば、日本全国のものが簡単に手に入ります。

それにより、食の地域差がなくなりつつあるとも…。

以前、お雑煮やおせち料理の回で、地域ごとの“食”について紹介しましたが、知らない土地の食を知ったり、自分たちの地域の食を改めて考えてみるのは楽しいし、“身近な食育”となります!

地域ごとの食のちがいはまだまだたくさんありますので、みなさんも食について振り返る機会にしてください♪

社内アンケートをとった際に、各地の食についても聞いていますので、近日中にこのテーマでまたお届けできれば!と考えています♪


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