健康コラム

no.178
テーマ:「ゲノム編集食品」
2021年12月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

“ゲノム(※1)編集食品”って何かご存じですか?

最近流通が始まり、耳にした方もいらっしゃるのではないでしょうか?
反対に、「聞いたことすらない!!」という方もいらっしゃるのでは?


聞いたことがあっても…

「何のことかわからない…」

「遺伝子組換え食品と同じ意味?」

など詳しく知っている方は少ないと思います。


今回は、【ゲノム(※1)編集食品】を中心に、【遺伝子組換え食品】など新しいバイオテクノロジー(※2)でつくられた食品についてお届けします♪


(※1)ゲノム
遺伝子をはじめとした遺伝情報全体をさす言葉

(※2)バイオテクノロジー
「バイオロジー(生物学)」「テクノロジー(技術)」の合成語で、生物自身のもつ働きをわたしたちの暮らしに役立てる技術のこと
【1】食卓に並ぶものは、人の手が加えられて誕生したものも多い!
わたしたちの日々の暮らしは、さまざまな食品によって成り立ちます。

あまーいトマトやおいしい魚…etc.

昔に比べて、おいしいものが増えたと思いませんか?

実は、これらの食品の多くは、人の手により【品種改良】されてきたものです。

~品種改良の技術~

★交配
異なる品種をかけあわせることで、新たな性質をもつものが生まれること

★突然変異
自然もしくは放射線照射によって、遺伝子に変異が見られ、今までとは異なる性質をもつものが生まれること

★ゲノム編集による突然変異
人工的に狙った部分の遺伝子に変異を起こし、異なる性質をもつものを誕生させること

★遺伝子組換え
他の生物の遺伝子を組み込み、異なる性質をもつものを誕生させること

さまざまな品種改良の手法がありますが、技術の進歩とともに、【ゲノム編集による突然変異】【遺伝子組換え】なども出てきました。
【2】【ゲノム編集食品】と【遺伝子組換え食品】のちがい
新たな技術によって生まれた【ゲノム編集食品】と【遺伝子組換え食品】。

いずれも人為的にゲノムを操作しているので、難色を示す方が多いのだと思います。

ちがいとしては…

【他の生物から取り出した遺伝子を組み込んでいるかどうか】

◎ゲノム編集食品は、基本的には自身の遺伝子のみで変異を起こさせてつくる

◎遺伝子組換え食品は、他の生物の遺伝子を組み込んでつくる

★ゲノム編集食品

従来の突然変異は、ランダムに起こるものなので、特定の場所に計画的に変異を起こすことはできませんでした。
しかし、ゲノム編集による突然変異では、特定の場所を切断できるので、狙った遺伝子にのみ突然変異を起こすことが可能です。
他の生物の遺伝子を入れるわけではないので、自然に起こった突然変異と見分けはつきません。

技術的には、狙った部分に突然変異を起こし、その修復に他の生物の遺伝子をいれることも可能。
ただし、その場合は、遺伝子組換え食品として扱います。

日本国内では、

●血圧降下作用が期待されているGABAを多く含むトマト

●筋肉量を増やしたタイ

●短期間で大きくなるフグ

などの研究が進んでいます。

トマトは、ゲノム編集食品として初めて国に認められ、販売も開始。
その後、タイ、フグについても認可され、流通が始まっています。

★遺伝子組換え食品

他の生物から取り出した遺伝子をゲノムに組み込むことでつくられます。
それによって、組み込んだ遺伝子の性質をもつ新たなものができます。

この技術を用いて、特定の除草剤に強い作物などがつくられています。

日本国内では、商業用の栽培は行われていませんが、加工用や飼料用としては、海外から輸入されています。

今までは交配や突然変異などで数十年かけて、自分たちのほしい特徴をもつ品種を見つけていましたが、新しいバイオテクノロジーによって、効率よく、ほしいものを生み出せるようになりました。
これは大きな利点だと思います。

また、それぞれのちがいについて、理解も深まったのではないでしょうか。
【3】食品にはどのように表示される?
わたしたちが口にいれるものなので…

食品には安全性を確保するための仕組みがあります。

★ゲノム編集食品

他の生物の遺伝子を組み込まない限りは、従来の品種改良でも起こりうる変異ですので、安全性もそれと同様と考えられています。
そのため、安全性の審査は個別に必要ないとの判断です。
(従来の品種改良などでも、特別な安全性の確認はしていません。)

ただし、新技術であること・消費者への配慮という部分で、国に届け出をし、一定の情報の公表は行います。

※他の生物の遺伝子を組み込む際は、以下の遺伝子組換え食品と同様の扱い

★遺伝子組換え食品

他の生物の遺伝子を組み込んでいるので、安全性審査を経てから流通します。

こちらも情報は同様に公表されます。
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
今回は、ゲノム編集食品など新しいバイオテクノロジーでつくられた食品を中心にお伝えしました。

簡単にまとめると

●わたしたちが日々食べている食品は、多くが品種改良で生まれている

●品種改良の技術は日々進化しており、【ゲノム編集食品】【遺伝子組換え食品】技術も誕生
これらの技術を使えば、今までよりも“短期間”で“よりよいもの”を“効率よく”つくることができる

●【ゲノム編集食品】【遺伝子組換え食品】のちがいは、他の生物の遺伝子をいれるかどうか

●【ゲノム編集食品】は、他の生物の遺伝子をいれなければ、従来の突然変異で生まれるものとちがいがないので、今のところ表示の義務はない

新しい技術には賛否両論あると思います。

個人的には、【ゲノム編集食品】は、他の生物の遺伝情報をいれるわけではなく、突然変異でできるものなので、口にいれることにそこまでの抵抗感を持っていないです。

ただし、人為的に自然界のものと混じりあうと、生態系に何か影響があるのかな?と考える部分も…。

価格の面(新技術は価格が高い)や消費者の不安などがあると思うので、すぐに多くの人の食卓に並ぶわけではないと思いますが、何十年後かには、当たり前のように、食卓に並んでいるかもしれませんね。
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