健康コラム

no.168
テーマ:「昆虫食」
2021年2月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

今回のテーマは少し、読む人を選ぶ内容かもしれません。

「昆虫食」って聞いたことはありますか?

そんな話も大丈夫!という方はぜひご覧ください。
【1】なぜ今、昆虫食?
昆虫食が注目されるようになったのは国連食糧農業機関(FAO)が2013年に出したレポートがきっかけと言われています。

2050年までに世界の人口は100億人を超えるとされ、肉や魚といった動物性たんぱく質が不足するのではないかと危惧されています。
その食糧問題の解決策として考えられているのが昆虫食なのです。

理由としては『地球環境にやさしい』『タンパク質などの栄養面がすぐれている』といった点が挙げられます。


『地球環境にやさしい』
牛や豚などの家畜を飼育するのに比べ、虫の生育には温室効果ガスの排出量、必要な水・餌の量が圧倒的に少ないことから、環境負荷も軽減すると言われています。

日本では家畜用飼料の多くを輸入に頼っています。
その点、虫の餌には大豆かすや米ぬかなどの国内産業の副産物を利用できる上、生産をすべて国内でまかなえるというメリットもあるようです。

『タンパク質などの栄養面がすぐれている』
虫は高タンパク、低脂質、低炭水化物な上、必須アミノ酸も含まれています。

特にタンパク質の効率がよく、100gあたりのタンパク質量(※)では牛や豚、鳥が20g前後なのに対し、コオロギは60gも摂ることが出来ます。

※鶏:むね肉、豚:もも肉、牛:もも肉にて算出したデータ


もちろん昆虫食で食糧問題が全て解決する!という訳ではなく、安全性や法の整備など問題はいろいろとあるのが現状ですが、ひとつの可能性として昆虫食があるという認識を持ってもよいのではないでしょうか。
【2】世界の昆虫食
世界では約20億人が約2000種類の虫を食べていると言われています。
マイナーな食文化と思われがちですが、世界人口の4人に1人は食べていると聞くとイメージも変わりますね。

特に東南アジアやアフリカ、南アメリカでは昔から昆虫食の習慣があり、現在も日常的に食べられています。
欧米では食用昆虫の養殖も広がるなど、一部地域での嗜好にとどまらず、世界全体でビジネスとして発展しているところに驚きます。

メキシコに住んでいた友人に現地の昆虫食について聞いたところ、「蟻(あり)の卵」は“メキシコのキャビア”とも呼ばれていて、レストランでは高級食材として扱われていたそうです。(価格は時価とのこと)

虫といえば、代用食材として考えられがちですが、なかには積極的に食べたいと思われるような美味しいものもあるのですね。

また、人間のためだけでなく、動物の栄養を考えて作られた商品もあるようですよ。
【3】イナゴの佃煮、どう作る?
日本でも大正時代までは約50種類の虫を食べていたそうです。
その後、西洋化が進んだことで多くの地域で虫を食べる習慣がなくなりましたが、一部地域ではその習慣が残っています。

「イナゴの佃煮」といえば、昔から食べられている昆虫食のひとつです。

京都では馴染みがなかったので、「本当に今でも食べてるのか…?」と思っていました。

大学時代、山形県と秋田県出身の友人は「普通に食べるよ」と言っていて、作る際の様子などを教えてくれたのですが、内容が衝撃的だったので今でも覚えています。

「イナゴは捕まえてすぐはお腹の中に糞があるので絶食状態で放置する」
「生きたまま鍋に入れると飛び跳ねるイナゴがいるので、フタを閉めておく」
「入れてすぐはイナゴがぴょんぴょん跳ねるから音がするけど、しばらくしたら静かになるから、『あ、お亡くなりになったな』ってなる」という話も何ともいえずシュール。

そして、思ったよりもかわいそうなイナゴ達の最後(絶食からの灼熱地獄)の様子を淡々と語る友人たちに「人間ってたくましいな」と改めて思いました。

※イナゴをあらかじめ熱湯で処理したり、足や羽を取ってから作る場合もあるようです。
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
家族に食糧問題と昆虫食のことを話したら「虫を食べなあかんくらいなら俺は餓死する」というくらい嫌がっていました。
ちょっと大げさな気もしますが、「虫を食べるなんて無理」という方は多いかと思います。

私自身、健康コラムを作成するためにいろんな昆虫食の写真を見て「うっ」と思う瞬間も多々ありました。

…が、不思議なもので何度も見ているうちに「コオロギラーメンなら食べられるかも…」と思えるようになったので、やはり慣れの問題は大きいなと思います。

最近はお菓子にも昆虫食が登場し、自動販売機やコンビニでも購入できるものもあるようです。

特にコオロギの粉末の入った「コオロギせんべい(※)」は発売後、すぐに売り切れるなどSNSでも話題になりました。

食べ慣れない人にとって、虫の姿形がそのまま残っていると抵抗感が強いかと思うのですが、味や食感だけでは意外と分からないものかもしれません。

今度、家で虫とは言わずにだまって出してみようかなと思います。

※コオロギには甲殻類と似た成分が含まれているため、エビ・カニのアレルギーをお持ちの方はお気をつけください。
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