健康コラム

no.162
テーマ:「おはし」
2020年8月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

いよいよ8月が始まり、夏本番ですね。

本当なら今頃、東京オリンピックが開催されていたと思うと不思議な感覚です。

明日、8月4日は「おは(8)し(4)の日」です。
「おはしを正しく使おう」という民俗学者の提唱で、わりばし組合が1975年に制定しました。

皆さんはどのようなおはしを使っていますか?
【1】おはしの起源
おはしの起源には諸説ありますが、日本で食事の時におはしを使うようになったのは飛鳥時代だと考えられています。

それまで食事は手で食べる「手食」でしたが、中国から小野妹子ら遣隋使が持ち帰ったおはしの作法を聖徳太子が制度として朝廷の儀式に取り入れ、「箸食」が始まりました。

ここから、日本で食事におはしを使う風習が始まり、奈良時代になると庶民もおはしで食事をするようになりました。

江戸時代になると大衆向けの飲食店が発達し、割りばしも使われるようになります。

この100年で日本人の食生活やライフスタイル、使う道具も大きく変わりましたが、食事におはしを使う文化が変わらずに続いているのはすごいですね。

日本料理や中国料理が世界中で食べられるようになったことから、欧米でもおはしを使う人が増えています。
【2】世界で使われるおはし
世界でおはしを使っている人はどれくらいいると思われますか?

統計によると4割が「手食」、3割が「ナイフ・フォーク・スプーン食」、そして残りの3割が「箸食」だそうです。

食事の際におはしを使う国は東南アジアに特に多く、中国、韓国、北朝鮮、台湾、タイ、ベトナム、シンガポールなどで使用されていますが、国によってそれぞれ特徴があります。

ここでは日本と中国、韓国のおはしの特徴についてご説明します。


●日本

日本人は昔から魚を頻繁に食べているため、小さな魚の骨も取れるようおはしの先が細く作られているのが特徴です。
材質は木製や竹製が多く、漆を塗った塗り箸などもあります。
また、食事をするおはしだけでなく、菜箸・取り箸・祝箸・揚げ箸など様々な種類のおはしが用いられています。


●中国

手元と先が同じくらいの太さ(寸胴型)で長いのが特徴です。
大皿料理を円卓で囲み、各々で取る中国の大皿文化においては長い方が便利だとされたためと言われています。


●韓国

全体的に細く、手元と先が同じくらいの太さで作られており、銀やステンレスなど金属製の材質であることが特徴です。
金属製のおはしを使う理由としては、木材に比べ長持ちし、焼肉を好んで食べる韓国人の食文化に適しているからだと考えられています。


「自分専用のおはしを決めて使う」「おはしだけで全ての食材を食べる」「卓上で横向けに置く」

一見当たり前のように感じることですが、実はこの習慣があるのは日本だけ。

日本以外の国では家族でおはしを共用するのが一般的で、おはしはナイフやフォークのように縦向きに置きます。
また、おはしにスプーンやレンゲをセットで使う国が大半で、汁物の器に口を付けて飲むのはマナー違反としている国もあります。

国が違えば食文化や道具の使い方も変わりますが、特に日本のおはしの文化は独特な進化を遂げていることが分かりますね。
【3】縁起物としてのおはし
おはしは食事に使う道具であることから「食べるものに困らない」、たくさん食べられることから転じて「健康」や「長寿」などをあらわす縁起の良い道具です。

そのため、結婚祝いや長寿を願ったお祝いなどの贈り物としても重宝されています。

おはしを選ぶ際には木の種類でも縁起を担ぐことができますよ。
ここでは縁起のよい木をご紹介します。


【翌檜(あすなろ)】「明日檜になろう」→目標達成祈願

【櫟(いちい)】「一位」→学業成就、商売繁盛

【槐(えんじゅ)】「延寿」→長寿祝い

【櫟(くぬぎ)】「苦を抜く」→快気祝い

【栗(くり)】「勝栗」→受験祈願

【桑(くわ)】「蚕が葉を食べることから」→富、繁栄祈願

【欅(けやき)】「大木になることから」→長寿、繁栄祈願

【南天(なんてん)】「難を転ずる」→縁起担ぎ

【柳(やなぎ)】「家内喜」「春一番に芽吹く」→長寿、豊作

【柞(ゆず)】「結寿」→結婚祝い、縁結


その他にも形が八角のおはしも「末広がり」として縁起がよいと言われています。

私自身は以前、祖母へ長寿のお祝いとして「梅」の柄のおはしと「竹」の形をしたおはし置きを贈ったことがあります(松竹梅にかけて…)。
今でもそれを使ってくれているので嬉しく感じています。

皆さんもおはしを選ぶ時の参考になさってはいかがでしょうか。
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
日本人の一生は「箸にはじまり、箸に終わる」と言われます。

生まれて100日目のお食い初め(百日祝い・箸祝い)で初めておはしに触れ、毎日の食事でおはしを使い、そして亡くなってからはお仏前にお供えとしてご飯におはしを立てて供養する…。

このようにおはしは人が生まれて亡くなってからも関わりの深い存在です。

自分自身はいつからおはしを使っていたのかは分からないのですが、娘に初めておはしを買ったのは2歳の時。

親がおはしを使っていると「同じのがいい!」と言い出すようになったのがきっかけです。
はじめは子ども用の矯正箸を使っていましたが、今では普通のおはしを持てるようになりました(持ち方には難あり)。

これからも長い付き合いになるおはし。
キレイな持ち方を徐々に覚えて欲しいと思っています。
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