健康コラム

no.160
テーマ:「誕生月と病気」
2020年6月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

今日から6月ですね。

春は花粉症、夏には夏風邪、冬はインフルエンザ…
このように季節や天気によってなりやすい病気があるのはご存じですよね。

今回は、誕生月と病気との関係についてご紹介したいと思います。
【1】誕生月と病気の関係
「3・4月生まれは、不整脈や冠状動脈硬化症などの心疾患のリスクが。9月生まれは、喘息(ぜんそく)のリスクが高い傾向にある。」

このように、いくつかの病気において、誕生月が生涯の病気のリスクに影響を与えるといいます。

…と言われても「本当にそんな事があるの?」と思われる方も多いのではないでしょうか。

ですが、これは、アメリカのコロンビア大学の研究チームが170万人の約30年間分のデータを元に分析した科学的な根拠に基づいたものなのです。
データの対象がアメリカ人であり、日本人では当てはまりにくい部分もあるかとは思うのですが、誕生月と病気の間に相関関係があると考えられるのは1688種類もの病気のうち、55種類という結果が出ています。
とても興味深い内容です。

例えば、前述した、3・4月生まれの心疾患のリスクが高くなる理由として、日照時間が短い季節に母親のお腹の中にいたことが大きく関わっているといわれています。

太陽の光を浴びることで私たちの体の中で作られるビタミンDは、鉄の吸収や代謝にも大きく関わっています。

母体にビタミンDが不足していると、栄養や酸素を運ぶヘモグロビンの材料である鉄の量が十分でなくなり、貧血になりやすくなります。

すると、胎児への栄養や酸素供給量が減ります。
心臓は、それを補うために拍動回数を増加させますが、その際、心臓に負担がかかることで、心疾患のリスクが高くなるといわれています。

このことから、3・4月生まれの人は、心臓や心血管系の病気にかかる体質になりやすいと考えられます。

また、9月生まれの人が、喘息のリスクが高い傾向にある理由として、
夏場は喘息のアレルゲンの1つ、ダニの繁殖時期であることが挙げられます。

とりわけ9月は夏に繁殖したダニの死骸や糞が最も多くなり、喘息の発症に関わっているからといわれています。

反対に、リスク因子が少ない1月・2月生まれの人は、喘息の発症は少ない傾向がみられます。

こうした環境の変化が妊婦の健康状態に影響を与え、胎児の病気のリスクにかかわったり、新生児の体内に入るアレルゲンの量に季節差があるため、誕生月が特定の病気に大きく関係していると考えられています。
【2】5月生まれは病気になりにくい
誕生月と関係が確認されている病気の中で、最も多くの病気に高リスクの結果が出た誕生月は10月です。

風邪をはじめ、急性咽頭炎、急性細気管支炎、胃の機能障害、視覚不良、近視、遠視、性的感染症など多岐にわたります。

一方で、なりにくい病気も多く、不整脈や冠状動脈硬化症など、生命に関わるような心疾患のリスクは特に低くなっています。

11月生まれにも同様の傾向がみられるようで、12月生まれに関しても心疾患のリスクは低いといわれております。

では、最も病気に対して低リスクの結果が出た誕生月は何月でしょうか。

それは、5月です。

なりやすい病気は1つもありません。
万病のもとである風邪にもかかりにくいといわれているので、最も健康に恵まれた誕生月といえます。

また、7月生まれも2番目に病気のリスクが低く、6・8月生まれもリスクは低い傾向で、日照時間が長い初夏から夏真っ盛りの時期に生まれた人のほうが、病気になるリスクは低くなりやすいといえます。

誕生月は今から変えることはできませんが、今回のデータを参考にはしつつ、日頃からの体調管理にも気を配りたいですね。
【3】太陽の光と太陽ビタミンの恩恵
前述した、日照時間が誕生月による病気の発症リスクに関係している理由として、太陽ビタミンと呼ばれるビタミンDが大きく関わっています。
ビタミンDが関わるのは、鉄の吸収や代謝だけではないのです。

ビタミンDには細菌やウイルスを殺す「カテリジン」というタンパク質(抗菌ペプチド)を作らせる働きがあります。

食べ物から摂取したビタミンDは、太陽の光により活性化されるので、日照時間が減少する冬場はビタミンDが活性化しにくく、抗菌ペプチドも減少する傾向にあります。

風邪やインフルエンザにかかったり、アトピー性皮膚炎が悪化しやすくなるのはそのためでもあるといいます。

また、ビタミンDは、神経のバランスを整える脳内物質セロトニンを合成することも確認されており、うつなどのメンタルの不調にも効果的であることがわかってきました。

例えば北欧諸国は自殺率が比較的高い傾向がみられますが、日照時間の短さからくるビタミンD活性化不足も原因ではないかといわれています。

日本でも「冬季うつ」といって日照時間の短い冬に抑うつ症状の患者が増加する傾向があります。

美白を気にして紫外線を極力避けている方も多いですが、太陽の光は、太陽ビタミンであるビタミンDの恩恵を受けるのに必要ですので、日光浴を楽しむのもおすすめです。

ビタミンDは、その他、1千種類の遺伝子の調節も担っているそうです。
健康には、太陽の光と太陽ビタミンの恩恵が深く関わっているのですね。
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
ビタミンDは、骨や筋肉をつくるのに欠かせないだけでなく、高血圧対策・免疫力アップ・生活習慣病の予防など、これまでわからなかった働きが次々と報告されています。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」2020年版でも、1日に必要なビタミンD摂取量の目安が2015年版の5.5μgから8.5μgへと引き上げられました。
ビタミンDの摂取がより一層、必要とされているためであるといえますね。

ビタミンDは、食事から摂取し、日光浴で活性化することができます。
多く含む食材は、シラス干し・ベニザケ・イワシの丸干し・きのこ類などがあります。

冬の間、高緯度の地域では日照時間が短く、ビタミンDが不足しやすいことから、日本でも東北・北海道では、より積極的なビタミンDの摂取を推奨されています。

北海道の郷土料理「石狩鍋」は、ビタミンD豊富な鮭ときのこをはじめ、野菜、豆腐などを味噌仕立ての汁で煮込んでいただく料理です。

脂溶性ビタミンであるビタミンDの吸収をサポートする油脂類の1つ、バターも風味が良くなり、より食欲をそそります。

現在、季節が夏に向かう時期なので、「今すぐ作ろう」とはなりにくい料理ですが、ビタミンD豊富な食材を効率よく、おいしく味わえるメニューとしておすすめです。

日照時間の少ない北海道ならではの知恵が「石狩鍋」には、詰まっているのかもしれませんね。

今は、鍋はちょっとという方は、同じく北海道発祥の三平汁も、鮭を使い、野菜などの具材を入れたすまし汁ですので、ぜひ、味わってみてはいかがでしょうか。
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