健康コラム

no.126
テーマ:「ラジオ体操」
2017年8月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

8月になりました。
夏休みといえば、子どもの頃、朝にラジオ体操をしていた方も多いのではないでしょうか。

いろんな健康法やダイエット法が流行っては廃れる中、ラジオ体操は今なお、多くの方に愛されています。

今回は、そんなラジオ体操の魅力についてお届けします。
【1】ラジオ体操はアメリカ生まれ?
ラジオ体操が始まったのは1928年。
放送が開始されてから来年で90周年を迎えます。

当時、日本は結核や伝染病の流行が深刻な問題となっており、「国民の健康状態の改善」がラジオ体操提唱の大きな目的でした。

日本発祥と思われがちですが、実はそのルーツはアメリカにあります。
1920年代にアメリカの保険会社が広告としてラジオ放送していたエクササイズ番組があり、これを手本にラジオ放送が始まりました。

その後、時代とともに体操の内容や名称が変更されながら、1951年に現在の『ラジオ体操第一』が、翌年の1952年に『ラジオ体操第二』作られました。


ここからは『ラジオ体操第一・第二』について詳しく見ていきましょう。

●ラジオ体操第一
“老若男女を問わず、誰でもできること”にポイントを置いた体操です。
軽快なリズムに合わせて、体全体の筋肉や関節をバランスよく動かすことができます。


●ラジオ体操第二
“体をきたえ、筋力を強化すること”にポイントを置いており、職場向けとして作られました。

第一よりも動きが大きく、体を動かしたり、跳んだりといった動作が多くなっています。

所要時間はどちらもおよそ3分15秒程度。
短い時間でありながら、それぞれ13種類の動作が含まれています。

同じ時間ならハイキングや早歩きよりも消費カロリーが大きく、毎日の運動やダイエットにもぴったりですね。

その名の通り、ラジオ放送から始まったラジオ体操は、今ではテレビ放送やインターネット上の動画でも見ることができ、それぞれの場所や時間帯に行えるようになっています。
【2】幻の『ラジオ体操第三』
おなじみの『ラジオ体操第一・第二』の他に実は『ラジオ体操第三』と呼ばれるものがあったそうです。

動きが複雑なため、音声ではその動きを伝えるのが難しく、短期間で放送が終了したという経緯があります。

近年、『ラジオ体操第三』が注目され、音源と動作の解説図を頼りに、復元されました。

第一・第二よりも複雑でダイナミックな動きを取り入れた、11種類の動作が含まれています。

復元に関わった龍谷大学の安西将也教授によると、「複雑な動きと適度な負荷が、現代病ともいえるうつ病と生活習慣病の予防に期待ができる」とのことです。

昔は音源だけでしたが、今は動画という心強い味方があります!
興味を持たれた方は『ラジオ体操第三』で検索してみてくださいね。
【3】ラジオ体操の効果と注意点
ラジオ体操といえば、“準備体操”くらいに考えていませんか?
その健康効果が科学的に検証されています。

2013年度に行われた、ラジオ体操を3年以上継続している方を調査した結果によると(※)

男女や年代で分けたすべてのグループで、実年齢より血管年齢が約5~25歳若く、骨密度も約8~23%良かったそうです。

その他にも、「規則的な生活につながった」「様々な世代とふれ合える」など生活の満足度も高まった方が多く見られたようです。

1日わずか数分の習慣が、これほどたくさんの効果をもたらすとは驚きですね。
まさに継続は力なり!といったところでしょうか。

ただし、注意点もあります。
それは、ラジオ体操は上半身の運動が中心で、下半身の筋力トレーニングにはつながりにくいという点です。

また、ご年配の方にはひざに負担の大きい動作も含まれています。

だからといって、ラジオ体操がご年配の方に適さないというわけではなく、それを補うひざのトレーニングを併せて行うことが大切です。

また、「ジャンプはつま先のバネを使い、かかとから着地しない」
「痛みがある方は弾みをあまりつけず、反り過ぎない」
「動作をゆっくり行う、または一部をやらない」など、自身の体調に合わせて、動きを調整することもひとつの方法です。

その上で、ラジオ体操の効果をさらに高めたい方は、指導者がいる会場に行き、それぞれの動作に込められた働きを知ることもおすすめです。

地域の体操会の場所は、全国ラジオ体操連盟のホームページから調べることができますよ。


※渡部鐐二・神奈川県立保健福祉大元教授(応用健康科学)による調査
週5回以上のラジオ体操を3年以上続ける全国の55歳以上の男女543人について、血圧などを測定、生活習慣などをアンケートしたもの
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
東日本大震災や昨年の熊本地震などでは、多くの方が避難生活を余儀なくされました。

その際、避難所での運動不足の解消や、エコノミー症候群の予防として活躍したのがラジオ体操だったそうです。

“あらゆる年代の人に広く知られており、実践しやすい”
“音楽を聴くと、自然と体が動く”といった面は、ラジオ体操の大きな強みですね。

また、人と人との交流が生まれ、心のケアにつながったという話もあります。

最近ではラジオ体操を知らない子どもや、ラジオ体操をする習慣のない地域も増えているようですが、これからもラジオ体操の文化が残っていって欲しいなと感じます。
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