健康コラム

no.21
テーマ:「噛む」
2008年11月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

弥生時代は3,990回
鎌倉時代は2,654回
江戸時代は1,465回

そして現代は620回

一体何を表す数字でしょう?
今月はこれらの数字にまつわるお話です。
【1】現代人は卑弥呼の6分の1?
冒頭の数字、正解は「一回の食事での咀嚼(そしゃく)回数」です。

卑弥呼の生きた弥生時代の食事は、玄米のおこわや乾燥した木の実、干物など、硬くて、噛み応えのある食材で構成されていました。

それに比べ、現代人の好むハンバーグ、スパゲッティなどの食事は、あまり噛まなくても食べることができるものばかりです。

現代人の咀嚼回数は、弥生時代の約6分の1。
食品の加工技術の進歩と共に、咀嚼回数はだんだんと減ってきました。

その結果、あごの骨の成長発達が遅れたり、虫歯や肥満など、噛まないことによって起こる健康問題が懸念されており、現代では、一口30回を目安に噛むことが理想とされています。
【2】卑弥呼の歯がいーぜ
「卑弥呼の歯がいーぜ」
これは、日本咀嚼学会が提案する噛むことの効用を、咀嚼回数の多かった弥生時代の卑弥呼にかけて表したものです。

『ひ』・・・肥満防止
よく噛んでゆっくり食べることで脳が満腹感を感じ、食べ過ぎを防ぐことができます。

『み』・・・味覚の発達
よく噛むことで食べ物本来の美味しさを感じることができ、味覚が発達します。

『こ』・・・言葉の発達
噛むことにより顔の筋肉が発達すると、言葉を正しく発音できるようになり、顔の表情も豊かになります。

『の』・・・脳の発達
噛むことでコメカミ付近がよく動き、脳への血流が良くなり、脳の活性化に役立ちます。
  
『は』・・・歯の病気予防
噛むことで歯の表面が磨かれ、唾液もよく出るようになり、虫歯や歯周病の予防につながります。

『が』・・・がん予防
唾液の成分である「ペルオキシダーゼ」には、食品中の発がん性を抑える働きがあると言われています。

『い』・・・胃腸の働きを促進
食品を噛み砕いてから飲み込むことで胃腸への負担が軽くなり、胃腸の働きを正常に保ってくれます。

『ぜ』・・・全身の体力向上
しっかり噛むことで歯やあごが鍛えられ、歯を食いしばったり、全身に力が入るようになります。
【3】咀嚼ノススメ
「健康にいいからよく噛んで食べましょう」
「目安は一口30回です」

とても簡単なことのように思えますが、噛む習慣のない現代人にとっては、思った以上に難しいものです。

皆さんも、今日の食事で自分が一口で何回噛んでいるのかを数えてみて下さい。
意外と早く飲み込んでいることに気付き、よく噛むことの大変さを実感する人が多いのではないでしょうか。
現代の食事は柔らかく、噛み応えがないものが多いのです。
そこで、普段の食生活で自然と噛む習慣が身につくように、食材や調理法、食べ方の工夫をご紹介いたします。

①主食を見直しましょう
噛み応えのあるご飯がおすすめです。
玄米や発芽米、胚芽米はプチプチとした食感が楽しめます。

②食材を工夫しましょう
きのこ類、海藻類、根菜類など食物繊維を豊富に含むものや、切り干し大根、高野豆腐などの乾物、みりん干しなどの干物、いか、たこ、貝類、こんにゃくなど、歯応え、噛み応えのあるものを取り入れましょう。

③調理法を工夫しましょう
野菜は大きめに切って、少し歯応えが残るくらいに火を通しましょう。
また、豆や芋なども同様に火を通すと、ホクホクと美味しく食べられます。

④薄味を心がけましょう
薄味にしてよく噛むことで、素材本来の味を楽しみましょう。
塩分や糖分も控えられ、一石二鳥です。

⑤一口の量を少なめにしましょう
一気に流し込むのではなく、一口の量を少なくして味わって食べましょう。
口に運ぶ回数が増えると、自然と噛む回数も増えてきます。

⑥「プラス10回」で30回を目指しましょう
現代人の噛む回数の平均は一口10~20回と言われています。
飲み込もうと思ってから「プラス10回」噛むようにしましょう。

⑦ゆっくり楽しく食事をしましょう
噛むことばかりを意識しすぎて、食事を楽しめなくては本末転倒です。
家族や友達と一緒に、ゆっくり楽しく味わいましょう。
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
この夏、久しぶりに会う甥っ子(6歳と3歳)に少し噛み応えのある自然食のクッキーを買っていきました。
すると、一口食べた彼らの反応は・・・「これ美味しくな~い」。
(私はこの噛み応えが好きなのですが。)
彼らの口から出されたものを見ると、ほぼ原型のまま。
その後、同じような味の柔らかいクッキーを美味しそうに食べていました。

現代っ子のおやつと言えば、ケーキ、チョコレート、スナック菓子など、噛まなくても口の中で溶けてしまうようなものがほとんどです。
これでは、子どもたちの噛む力が育たないのは当然かもしれません。

昔のおやつは、干し芋やするめ、煮干しなど、まさに「噛めば噛むほど味が出る」ものばかり。
そういえば、私の母は台所に立ちながら、「昔はこれがおやつだったのよ~」と、煮干しをかじっていました。

今では、スーパーやコンビニで多種多様なおやつが売られていますが、探してみると、煎り豆や昆布など噛み応えのあるものもたくさんあります。
煎り豆は、大豆を煎るだけで自宅でも簡単に手作りできます。

また、今の季節は、シャリシャリとした歯応えが楽しめる林檎や噛み応えのある干し芋、干し柿などもおいしいですね。
どうせ食べるのなら、「噛むおやつ」を意識してみませんか?
もちろん、食べ過ぎには気を付けて・・・。
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