健康コラム

no.118
テーマ:「おせち料理」
2016年12月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

♪♪も~いくつ寝ると~ おしょうがつ~♪♪

お正月にはまだ31日ありますが、今年も「もうあとひと月」。
みなさん新しい年を迎える準備は、始めていますか。

新しい年を迎えるにあたり、準備するものの1つに、おせち料理がありますよね。
最近は、手作りされる方だけでなく、おせち料理を食べる方も、少なくなってきています。

今回は、日本の伝統であるおせち料理に少しでも関心を持っていただくためにおせち料理の豆知識や食材の意味などを中心にご紹介します。
【1】おせち料理とは
おせち料理とは、どのような料理のことをいうのでしょうか。なかなか知っているようで、知りませんよね。

古くは、宮中において、正月に限らず、季節の節目(節句)に神前に料理を供え、供えたものをさげてから食べていました。
その際の料理を、おせち(御節)料理と呼んでいました。

そのおせち料理が、時代を経て、庶民や武士にも広がっていき、江戸時代には、多くの人々の楽しみになりました。
また、季節の節目ごと(五節句)にあったおせち料理は、いつの頃からか、正月の料理のみを表す言葉として使われるようになりました。

さらに、おせち料理は、「福を重ねる」「めでたさを重ねる」という意味で、縁起をかつぎ、重箱に詰めて出されます。
お重の中身は、地域や家庭によっても様々です。

お重の詰め方も、しきたりなどにより様々ですが、基本は四段重ねで、上から順に一の重、二の重、三の重、与の重(よのじゅう)と呼びます。
四段目のお重を「四」と書かないのは、「四」が「死」を連想させ、縁起が悪いからだと言われています。

しかし、最近は、ライフスタイルの変化により、大人数で食べることが少ない為、与の重まで使わず、二段や三段のお重の方が、一般的になっています。

また、段数の違いだけでなく、現代風のものとして、洋風や中華風のおせち料理や、スイーツおせち料理など多岐にわたるものが出てきています。

時代と共に形を変えてきたおせち料理。
おせち料理のルーツを知り、少し詳しくなったところで、次は、食材について見ていきましょう。
【2】食材の意味・栄養について
おせち料理の食材は、「縁起が良い」とよく聞きますよね。

縁起が良いのはもちろんですが、実は様々な栄養素も豊富に含まれています。
ここでは、おせち料理に使われている食材の意味とともに、栄養についても見ていきましょう。

〇黒豆
一年間「まめ(まじめ)」に働き、健康であるようにとの願いが込められています。
ビタミンやミネラルなど様々な栄養素が豊富に含まれています。
特に、ポリフェノールの一種であるアントシアニンは、抗酸化作用や目の健康に関わります。 

〇数の子
多くの卵があるというところから、子孫繁栄の願いが込められています。

他の卵と比べて、コレステロールやプリン体の量は少なく、体内のコレステロールの排泄を助けるEPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)は多く含まれています。

〇田作り(別名:ごまめ)
稲の豊作を祈る気持ち、五穀豊穣の願いが込められています。
小魚を田畑に肥料として撒いたことから名付けられました。
また、片口鰯の小魚(ごまめ)を使っている為、地域によってはごまめと呼ばれています。

疲労回復を助けるビタミンB1などのビタミン類、骨の健康に関わるカルシウムやマグネシウムなどのミネラル類が豊富に含まれています。

〇海老
腰が曲がるまで長生きしようという長寿の願いが込められており、また、海老の赤色は魔除けの色とも言われています。

コレステロールや血圧の調整に関わるタウリン、抗酸化作用のあるビタミンEなどが含まれています。

〇昆布 
「よろこぶ」の言葉にかけて、祝いの儀には欠かせません。
正月の鏡飾りにも用いられる一家発展の縁起物です。
煮しめの結び昆布、昆布巻きと様々な料理に大活躍です。

水溶性の食物繊維や、ヨウ素をはじめとする様々なミネラルが含まれています。
ヨウ素は、新陳代謝を助けたり、甲状腺ホルモンの成分になります。

〇くわい
芽が出るから「めでたい」という意味を示すようになり、縁起物とされています。

カリウムが豊富であり、カリウムは、過剰なナトリウムの排泄を助けるので血圧の調整にも関わります。

おせち料理は、縁起が良いだけでなく、様々な栄養素を含む食材が使われているのですね。
しかし、様々な栄養素を含む食材でも、食べ過ぎは太る原因となりますので、お正月ならではの羽子板、凧揚げなどの適度な運動もご一緒にいかがでしょうか。
【3】これもおせち?地域ごとのめずらしいおせち料理!
おせち料理の中身は、地域や家庭によっても異なるとお話したように、地域によって、様々なものがあります。
ここでは「ご当地おせち」についてご紹介します。

●氷頭(ひず)なます(北海道)・・・鮭の頭(氷頭)が入っているなますです。

●からかいの煮付(山形県)・・・からかいとは干したエイのことで、それを煮付けたものです。

●モロサメの煮物(栃木県)・・・青ザメのことで、内陸の栃木県にも傷むことなく輸送できたため、昔から重宝されています。

●ベロベロ(石川県)・・・かき玉汁の寒天寄せ、別名は「えびす」と言われています。

●にらみ鯛(大阪府)・・・鯛の塩焼きのことで、三が日は手をつけないで飾っておきます。

●ワニの刺身(島根県)・・・サメの刺身のことで、島根県だけでなく、広島県の北部の一部でも食べられています。

●クジラ(長崎県)・・・湯引きやなますで食べる習慣があります。


多くの方は、名前も聞いたことがないものも多かったと思いますが、なかには、今まで普通に食べていたものが、ご当地のおせち料理だったのかと驚かれた方もいらっしゃったかと思います。

上記は一部ですので、気になられた方は、ご自身の住まれている地域のご当地おせちをぜひ調べてみてください。
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
子どもの頃は、親戚一同が祖父の家に集まり、祖母の作ったお雑煮・おせち料理を食べ、大人数で新年を祝っていました。

年が経つにつれ、各自の予定などにより、お正月の集まりはなくなり、それととともに、おせち料理を食べることは、ほぼなくなっていきました。

しかしここ数年は、子どもの頃にはわからなかったおせち料理の魅力に気づき、母と一緒に作っています。

作るまでは、「難しそう」と思っていましたが、実際に作ってみると、意外と簡単に作ることが出来ました。
また、加工済みの食品も上手に取り入れることで、見栄えの良いものを作ることが出来るので、毎年作るのを楽しみにしています。

大人数で大きなお重のおせち料理を一緒に食べるといった光景は時代の変化とともに失われつつあります。
しかし、宮中で供えられていた料理から始まり、現代まで続いてきたように、時代に合わせ、形は変わりながらも「おせち料理」という文化は今後も続いていけばいいなと思います。

今回の健康コラムを読んで、少しでも多くの方が「おせち料理」に関心を持っていただければ嬉しいです。
そして、おせち料理を食べながら、食材の豆知識やご当地おせちについて和気藹々と話し、楽しい新年を迎えられることを祈っています。

みなさんよいお年をお迎えくださいませ。
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