健康コラム

no.52
テーマ:「食中毒」
2011年6月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

じめじめとした雨の季節がやってきました。
今月は、この時期に気をつけたい「食中毒」についてお届けします。
梅雨から9月頃にかけては、高温多湿を好む食中毒菌にとって絶好の繁殖チャンス。
食材選びや保存、調理の段階で十分に気をつけ、安心・安全な食生活を送りましょう。
【1】夏場に増える細菌性食中毒
食中毒とは、「細菌やウイルスが付着した食品や有害・有毒な物質が含まれる食品を食べることによって起こる下痢や嘔吐、腹痛、発熱などの健康障害」のことを言います。

原因となる物質によって、細菌性食中毒、ウイルス性食中毒、自然毒食中毒、化学性食中毒などに分けられます。

食中毒は1年中どの季節でも発生するものですが、その中でも、これから夏場にかけて多く発生するのが細菌性食中毒です。

原因となる細菌には、サルモネラ菌や黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌、腸管出血性大腸菌などが挙げられます。

皆さんも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

冒頭でも触れたように、これらの細菌は高温多湿を好むため、夏場は特に細心の注意を払わなくてはいけません。

食中毒の発生で大きく騒がれるのは旅館や飲食店、学校給食などの場合がほとんどですが、一般家庭でも食中毒は発生しています。

次項では、家庭での食中毒対策についてお話します。
【2】今日からできる食中毒対策
食中毒予防の3原則は、

①菌をつけないこと
②菌を増やさないこと
③菌を殺す(消滅させる)こと

です。

食中毒菌は無味無臭。

食品に付着・繁殖しても、色やにおいにはほとんど影響を与えません。

目に見えないものだからこそ、普段から意識して衛生管理に努めましょう。

主なポイントをご紹介します。


①菌をつけないポイント

・購入した食品に肉汁や魚の水分などが付着しないように気をつける
 (ビニール袋などでそれぞれ分けて包むとよい)
・肉や魚は、冷蔵庫で保存するときにも他の食品に触れないようにする
・調理前、調理中、食事前などには丁寧に手を洗う
・手を拭くタオルは常に清潔なものを用意する
・調理中は扱う食品ごとに手や調理器具を洗う (肉や魚、卵を扱った後は特に念入りに)
・皿や容器も清潔なものを使う


②菌を増やさないポイント

・冷蔵や冷凍が必要な食品は買い物の最後にカゴに入れる
・買い物の後はすぐに帰宅し、生鮮食品は早めに冷蔵庫へ入れる
・食品は表示に従って保存する
・冷蔵庫は10度以下、冷凍庫はマイナス15度以下を目安とする
・庫内にものを詰め込みすぎない(全体の7~8割が目安)
・食品の解凍は冷蔵庫か電子レンジで行う(常温で長く放置しない)
・調理中、調理後の食品を常温で長く放置しない
・調理したものはなるべく早く食べる


③菌を殺す(消滅させる)ポイント

・加熱調理の場合は十分に加熱する(中心温度75度で1分以上が目安)
・残った食品を再加熱するときにも十分に加熱する
・包丁やまな板、ふきんなどは使った後すぐに洗剤と流水で洗う
 (まな板の側面や包丁の持ち手は洗い忘れることが多いので注意。一日の終わりには漂白・熱湯・煮沸などで消毒すると更によい)


※食中毒に関する情報については、厚生労働省や農林水産省のホームページに詳しく掲載されています。
【3】食中毒に負けない抵抗力をつけよう
同じ食事をしていても、食中毒になる人とならない人がいます。

もし食中毒になったとしても、症状の重い人と軽い人がいます。

一体なぜでしょうか?

それは、その人の持っている抵抗力が違うからです。

抵抗力の弱い赤ちゃんや高齢者が食中毒になった場合、重症化しやすいことも知られています。

抵抗力とは、「病気や病原体、環境の悪化などに耐え、健康を保ち続ける力」のことを言います。

私たちの体には、もともと菌などから体を守る力が備わっています。

例えば、唾液や胃液などにも殺菌・抗菌作用を持つ酵素が含まれていて、口から入った菌をやっつける働きをしています。

このような抵抗力を十分に発揮させるためには、疲れやストレスを溜め込まず、規則正しい生活を送ることが大切です。

新年度が始まって2ヶ月。

慣れない生活で疲れやストレスがたまっていませんか?

大型連休の後から生活リズムが崩れていませんか?

疲れやストレス、不規則な生活は、抵抗力低下の原因となります。

体の抵抗力を維持するためには、規則正しい生活習慣とバランスの取れた食事(栄養)、十分な睡眠(休養)が必要です。

食中毒にならないために、調理や食事のときの衛生管理を徹底することはもちろん、普段から体の抵抗力を高めておきましょう。


※「もしかして食中毒?!」と思ったら・・・

水様性の下痢や嘔吐が続いたり、発熱や激しい腹痛、血便などの症状がある場合には早めに専門の医療機関を受診しましょう。

水分を十分にとって、脱水症状にならないように気をつけましょう。
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
お弁当作りがライフワークとなっている人も多い今日この頃。

私も、健康と節約を兼ねてなるべく毎日お弁当を持参するようにしています。

しかしこの時期、調理してから食べるまでに時間のあいてしまうお弁当は衛生面が心配ですよね。

熱いおかずやご飯はきちんと冷ましてから詰める、水分の多いものや生のものを避けるなど様々な工夫がありますが、抗菌作用のある食材を使うのもポイントの1つです。

代表的なものでは、梅干し。

夏場のお弁当には、梅干しが入っているのをよく見かけます。

(実際には梅干しの周囲にしか抗菌作用は期待できないそうですが・・・)

他に、しょうがやみょうが、わさび、酢、大葉などにも抗菌作用があることが知られています。

梅干しや大葉を細かく刻んでごはんに混ぜたり、酢を含ませたキッチンペーパーなどでお弁当箱の内側を拭いたりするのも良さそうですね。

しかし、いくら抗菌作用のある食材を使っても過信は禁物。

なるべく涼しい状況で保存(冷蔵庫に入れる、保冷パックを使うなど)し、早めに食べるようにしましょう。
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