健康コラム

no.115
テーマ:「あずき」
2016年9月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

まだまだ暑い日が続きますが、今日から9月ですね。

9月にはお彼岸がありますが、“暑さ寒さも彼岸まで”という言葉をご存知でしょうか。

これは、夏の暑さも冬の寒さも春と秋の彼岸を境に少しずつ和らぎ、過ごしやすくなるという意味の慣用句です。

またお彼岸といえば、春は「ぼたもち」、秋は「おはぎ」ではないでしょうか。

今回は、「ぼたもち」や「おはぎ」の材料となるあずきをテーマに健康コラムをお届けしたいと思います。
【1】あずきの歴史
あずきの歴史はとても古く、世界最古の中国の薬学書『神農本草経』にも登場しています。

日本へは3世紀頃に伝わったと言われ、古事記や日本書紀にもあずきのことが記載されています。

その後、8世紀頃には栽培が始まっていたのではないかと言われています。

当時中国や日本では、“赤”は太陽や火、血を象徴する生命の色で、魔除けの力があると考えられていました。

そのため、赤い色をしたあずきは、食べることによって邪気を払い、身を守る力があると考えられていました。

また、お祝い事の席で料理に使われることも多く、日本では江戸時代になると、おめでたいことがあった時にあずきを炊き込んだ赤飯を食べる習慣が広まったそうです。
【2】小さな粒に秘められたパワー
あずきはとても小さな粒ですが、実はあの粒の中には様々な栄養素がぎっしりと詰まっています。
その主な成分は糖質とたんぱく質です。

あずきのたんぱく質は、必須アミノ酸をバランス良く含んでいるのが特長です。
必須アミノ酸は体の中で作り出すことが出来ないため、食事からの摂取が必要となります。

その他には、
◎ビタミンB群
炭水化物のエネルギー代謝を助けるビタミンB1、脂質の代謝を助けるビタミンB2、たんぱく質の分解を助けるB6などが含まれています。

◎食物繊維
あずきは、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維のどちらも含んでいます。
不溶性食物繊維には、便秘の解消や大腸がん予防の効果が、水溶性食物繊維には、血糖値の上昇やコレステロールの吸収を抑制したり、動脈硬化の予防などの効果が期待できます。

◎ポリフェノール
ポリフェノールには、活性酸素から細胞を守る“抗酸化作用”があります。
あずきに含まれるポリフェノールは豆類の中でも特に含有量が多く、その量はなんと、ポリフェノールを多く含むことで知られる赤ワインの1.5倍もあります。

◎サポニン
サポニンは皮の部分に含まれていて、ポリフェノールと同様に抗酸化作用を持つとともにコレステロールや中性脂肪の増加を抑制します。
他にも体内の水分バランスを整える働きがあり、むくみの解消にも役立ちます。

◎ミネラル
細胞の生まれ変わりに必要とされる亜鉛、余分な塩分や水分を排出してむくみを予防してくれるカリウム、造血に欠かせない鉄、骨の原料となるカルシウムなど、ミネラルがバランス良く含まれています。

さらに、
血中コレステロールを下げる働きをもつリノール酸やリノレン酸、血行促進や抗酸化作用を持つビタミンEなど、様々な栄養素を含んでいます。

“美容大国”とも呼ばれるお隣の国、韓国では、一時期、【あずき汁ダイエット※】が流行したそうですが、このあずきのヒミツを知ればそれも納得ですね!
※ただし、これを飲めば痩せるというものではありませんので、ダイエットには、バランスの良いお食事と適度な運動を心がけましょう。
【3】あずきの様々な活用法
まずは、定番の茹であずきをご紹介いたします。

多くの豆は茹でる前に浸水させますが、あずきは他の豆類と違い、浸水させる必要がありません。
事前に吸水させると皮がはがれやすくなるためです。

加熱方法は、あずきの4~5倍の容量の水を加えて火にかけ、沸騰したら一旦茹でこぼし、新しい水を入れて再び煮ます。この工程を2回程度繰り返すと渋抜きが完了します。

3回目は、沸騰しても茹で汁を捨てずに、弱火にしてじっくりと約1時間煮て、指で豆がつぶれる程度になれば茹であずきの出来上がりです。

ここからさらにお砂糖などを加えて煮込み、あんこが作られます。

次は、あずきの意外な使い方についてご紹介いたします。

あずきは食べる以外にも、お手玉の中身として使われることは有名ですが、カイロとして使うことも出来るのをご存知でしょうか。

まずお手玉ですが、あずきで作ったお手玉で遊ぶことで、「シャリッという音」「やわらかい手触り」「瞬間的な判断」が、脳を刺激し、集中力アップや認知症予防が期待出来るそうです。

意外なところでもあずきのパワーが発揮されていますね。

続いてあずきを使ったカイロですが、これは、綿や麻などの布の中にあずきを入れて、電子レンジで温めるだけで完成です。

あずきは水分を多く含んでいるため、温めることで“湿熱”が発生します。

一般的なカイロなどの“乾熱”は、肌表面を温めてくれますが、“湿熱”は表面だけでなく体の奥まで届き、体の芯から温めてくれます。

カイロの他に湯たんぽ、ホットアイマスクといった使い方も出来ますので、是非試してみてください。
※あずきの温めすぎや火傷には十分ご注意ください。
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
近年では、春も秋も「おはぎ」という方もいらっしゃるそうですが、正確には春が「ぼたもち」で、秋が「おはぎ」です。

「ぼたもち」と「おはぎ」は、こしあんか粒あんかによって分けられますが、その理由はなぜでしょうか。

それは、あずきの種まき時期が春の4~6月で、収穫が9~11月。
秋のお彼岸は9月のため、収穫したてのあずきを使いおはぎを作ります。

採れたての新鮮なあずきは皮も柔らかく、粒あんとして食べることが出来ますが、春のお彼岸の時期まで保存していたあずきは、皮も硬くなってしまうため、皮を取り除き、こしあんとして食べたそうです。

また、名前の由来は、ぼたもちは春の花「牡丹」が、おはぎは秋の花「萩」が由来となっているそうです。

そのため、形もぼたもちは牡丹に似せた丸く大きな形で、おはぎは萩の花に似せて細長く小ぶりの俵型をしています。

「昔からそうだから」と何気なく行っている伝統も、理由を知るとまた一味違った楽しみ方が出来ますよね。

今年のお彼岸はぜひ手作りのおはぎに挑戦してみてください。
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