健康コラム

no.98
テーマ:「春野菜」
2015年4月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

どことなく春の匂いを感じるようになってきましたね。

また、春野菜独特の苦みに、春の訪れを感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

冬の寒さに耐えて育った春野菜は、新しい生命のパワーに満ち溢れています。

旬の野菜はおいしいだけでなく、栄養の面でも注目したいところがたくさんあります。

ということで、
今日は春野菜をテーマにお話ししたいと思います。
【1】春野菜の苦み
「春の皿には苦味を盛れ」という言葉があるように、春野菜特有の苦味は心身に刺激を与え、身体機能を活発にすることで、体を春へと目覚めさせてくれるのです。

冬眠から目覚めたクマはまず最初にふきのとうを食べて、冬の体をリセットするそうです。

その苦味の正体は、“植物性アルカロイド”という成分で、春に芽を出す為の栄養や、冬の間害虫などから身を守る為の自己防衛手段として蓄えられているものだそうです。

“植物性アルカロイド”の中には、腎臓のろ過機能を高め、体内の老廃物や有害な物質を排出したり、肝臓の機能を高める働きを持つものもあります。

冬の間に溜まった老廃物を排出して新陳代謝を促すというデトックス効果も期待できるかもしれませんね。
【2】代表的な春野菜
では、代表的な春野菜の特徴をご紹介します。

■春キャベツ
原産種は古代ケルト人が栽培していた野生種のケールで、葉が発達して結球するようになったものが、現在のキャベツだそうです。

ビタミンCが豊富なことで知られ、葉っぱ2枚分(100g)で1日の必要摂取量の半分に達するほどです。

また、キャベツならではの重要な成分として、ビタミンU(キャベジン)が挙げられます。
胃潰瘍や十二指腸潰瘍の予防、さらには、傷ついた粘膜の修復や肝臓の機能回復にも効果があるとされています。

キャベツには食物繊維も豊富に含まれているので、便秘の改善や肥満予防などの効果も期待できます。

■たけのこ
ビタミンは少なめですが、カリウムやマンガンなどのミネラル、食物繊維の供給源となります。

また、旨味成分であるアスパラギン酸を多く含んでいて、これが、疲労物質である乳酸を早く燃焼させ、エネルギーに変える力を持つと言われています。
さらにアスパラギン酸には尿の排泄を促す働きもあり、古代エジプト時代には利尿薬として利用されていたそうです。

■アスパラガス
緑色のグリーンアスパラガスと淡色のホワイトアスパラガスがありますが、栄養価が高いのは、グリーンアスパラガスです。

たけのこと同じくアスパラギン酸を多く含むのが特徴で、疲労回復やスタミナ増強に効果があると言われています。

抗酸化作用に優れるビタミンA、貧血防止に効果的な葉酸、骨の健康に不可欠なビタミンKなどを多く含むので、アンチエイジングを目指す女性にとっても強い味方ですね。

■えんどう
えんどうは、豆が大きくなる前に収穫して、さやごと食べる「さやえんどう」と、さやの中の豆だけを食べる「グリンピース(実えんどう)」に大きく分けられます。
さやえんどうは、さやとさやがこすれると、衣ずれの音(衣類がこすれる音)に似ているところから、絹さやとも呼ばれます。

豆類に特徴的なたんぱく質と糖質を多く含んでおり、さらに、いちごと同じぐらいビタミンCが豊富です。
ビタミンCは、抗酸化ビタミンのひとつで、細胞の酸化を防ぐことによって、がん予防や、老化を予防する働きがあります。

また、コラーゲンを合成して血管や皮膚を健康に保ちます。

■いちご
春を告げるフルーツとして人気のあるいちごですが、実は野菜の仲間なのです。

栄養面でも注目したい効果がたくさんあり、最もよく知られているのがビタミンCの豊富さで、その量はみかんと比べて約2倍。

しかも、食物繊維を豊富に含み、カロリーも低めなので、ダイエット向きの食材としても人気があります。
さらに、美肌効果にも期待できます。
【3】春野菜の調理方法と保存方法
では、前項でご紹介した春野菜をおいしく食べるための調理方法と保存方法をご紹介します。

■春キャベツ
≪調理方法≫
キャベツに含まれるビタミンUの作用を有効に利用するためには、生食がベスト。
ですが、生野菜はあまりたくさん食べられないですよね。
スープや煮込み料理にすれば量もたくさん食べられるのでおすすめです。

≪保存方法≫
芯をくり抜き、水で湿らせたペーパータオルをその部分につめ、新聞紙で包んでから冷蔵庫の野菜室で保存します。

■たけのこ
≪調理方法≫
たけのこ独特のえぐみは、シュウ酸、ホモゲンチジン酸と呼ばれる成分によるもので、掘った直後からどんどん増加していきます。
昔から「たけのこを掘りはじめたら、お湯をわかしておけ」と言われるのは、このためです。

手早く下茹ですることがたけのこを美味しく食べるコツです。
たけのこがかぶるぐらいの水と米ぬか一握り(もしくは米のとぎ汁)、唐辛子を2本程度入れ、1時間ほど茹でます。
皮にはたけのこを柔らかくしてくれる成分が含まれているので、皮ごとゆでるのがポイントです。

≪保存方法≫
下茹でしたたけのこは、水につけて冷蔵庫で1週間はもちますが、なるべく早く使い切りましょう。

また、新鮮なたけのこの特徴は、切り口の断面が白く、頭の部分が黄色がかっているものです。
穂先が緑色のものは、えぐみが強いので避けた方がよいでしょう。

■アスパラガス
≪調理方法≫
アスパラガスに含まれるビタミンA・Kは、どちらも脂溶性の栄養素です。
油で炒めたり、油を使ったドレッシングで和えたりすることで、吸収率が高まります。
水溶性の栄養素も含んでいるので、茹でる際には、茹ですぎに注意しましょう。

≪保存方法≫
針で小さな穴を10数か所程あけたポリ袋に入れて、牛乳パックなどを利用し、立てた状態で冷蔵庫の野菜室で保存します。

■えんどう
≪調理方法≫
えんどうに含まれるビタミンCは水に溶けやすく、熱に弱い性質を持っているため茹ですぎや、火の通し過ぎは禁物です。
煮物などの場合は、火を止めてから加えるのがおすすめです。

≪保存方法≫
えんどうは、高めの温度で保存するとすぐに痛みます。
低温には強いので、ポリ袋やラップなどで包み、冷蔵庫の野菜室で保存します。

■いちご
≪調理方法≫
いちごの栄養をまるごと摂るには、生のまま味わうのが一番です。
酸味の強いものは、ピューレ状にしたり、ジャムやコンポートとして楽しむのもいいですね。

≪保存方法≫
水に濡れると痛みやすいので、洗わずにパックの上からラップやポリ袋で覆い、冷蔵庫の野菜室で保存します。
水洗いしてしまったいちごは、ヘタを取りいちごの3~4割の量の砂糖を加えて冷凍室で凍らせると、長期保存もできます。
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
春野菜を使った料理と言えば、炊き込みご飯、天ぷら、おひたし...など、独特の苦味や香り、食感を活かしたものがたくさんありますね。

今回はその中でも、春野菜のもつビタミンやミネラルなどの栄養素を、まるごと食べることのできる『ミネストローネ』をご紹介します。
ちなみに、ミネストローネとはイタリアの料理で具だくさんなスープのことです。

では作り方です。
お鍋で、春キャベツ・にんじん・玉ねぎ・グリンピース・アスパラガス・スナップえんどうなどをにんにくとオリーブオイルで炒めます。
トマト缶と水、調味料(塩・こしょう・コンソメ)を入れて煮込めば完成です。
お好みで、ベーコンやパスタ、マカロニなどを入れてもいいですね。

とても簡単ですし、煮込むことで野菜のかさが減るので、生野菜ではなかなか食べることの出来ない量の野菜が食べられます。

食材に特別な決まりがないのが特徴のミネストローネ。
実際にイタリアでも、地域や季節によって入れる食材は様々だそうです。
イタリア版「味噌汁」といったところでしょうか。

とても簡単に作ることが出来るので、春野菜を使ってオリジナルのミネストローネを作ってみてはいかがでしょうか。
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