健康コラム

no.131
テーマ:「ノロウイルス感染症」
2018年1月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

新年のご挨拶を申し上げます。
2018年も、月刊ニックリ健康コラムをよろしくお願いいたします。

さてみなさん。
手洗い・うがいはきちんとしていますか?

患者数が1月にピークを迎える『ノロウイルス感染症』の予防には、手洗い・うがいが大切だと言われています。

近年、テレビでもノロウイルスについてのニュースや番組を見かけることも多くなり、その症状などについてよくご存知の方も多いのではないでしょうか。

今月は、このノロウイルス感染症について詳しくお話ししたいと思います。
【1】ノロウイルス感染症とは
ノロウイルス感染症とは、ノロウイルスを原因として引き起こされる急性胃腸炎のことです。

年間を通して発生しますが、主に冬場に多発し、1月頃にピークを迎えると言われています。

このノロウイルスは、手指や食品を介して経口で感染し、人の腸管内で増殖します。

乾燥や熱、アルコールなどの消毒剤に対する抵抗力があり、感染力も非常に強く、少量のウイルスでも感染・発症するのが特徴です。

さらに、長期に免疫が成立しないため何度も感染してしまう恐れがあります。

感染しても、健康な状態であれば軽症で済む場合もありますが、小さなお子様やご高齢の方、さらには免疫機能が低下している時には重症化してしまうケースもあるようです。

その主な症状は、【腹痛】【下痢】【吐き気】【嘔吐】で、潜伏期間は約12~48時間と言われています。

そして、症状が出ている時はもちろん、感染しているにも関わらず症状がでない「不顕性感染」にはさらに注意が必要です。

症状が出ていなくても便などにウイルスが排出されている場合があり、自覚のないまま感染源となっていることもあるのです。

特に食品を取扱う方では十分な注意が必要となります。
【2】ノロウイルスの対処法と処理方法
ここでは、感染してしまった時の『対処法』と『処理方法』をご紹介したいと思います。

まずは『対処法』です。
ノロウイルス感染症には有効な抗ウイルス剤がなく、対症療法が行われます。

対症療法とは、病気の原因を取り除くのではなく、病気によって起きている症状を和らげたり、なくしたりする治療法のことです。

ノロウイルスに感染すると、下痢や嘔吐によって脱水症状を引き起こす恐れがあるため、水分補給がとても重要になります。

特に、抵抗力の弱い乳幼児や高齢者の方は要注意です。

ただし、吐き気や下痢などにより水分補給が困難な場合には、医療機関で点滴を受けるなど適切な手当てを受けましょう。

また、下痢の症状がひどい時の下痢止め薬はかえって逆効果になることも…。

それは、無理に下痢を止めてしまうことでウイルスの排出が行われず、腸管内に溜めこみ、症状の回復を遅らせてしまうからなのだそうです。

一番大切なことは、自己判断せずかかりつけの専門医に相談することです。

次に『処理方法』です。

排泄物の処理をする際には、使い捨ての【マスク】【手袋】【エプロン】をしっかりと着用し、感染を防ぎましょう。

さらに、メガネを着用するとより良いでしょう。

まず、排泄物が付着していた床とその周辺を、0.1%次亜塩素酸ナトリウム(※)を染み込ませた布やペーパータオルで覆い、拭き取ります。

【注意】次亜塩素酸ナトリウムは金属を腐食させるため、金属部分で使用した場合は、10分程度経ったら水拭きしてください。
また、手指や人体に使用すると肌荒れを引き起こす場合がありますので、十分ご注意ください。

その後、速やかにビニール袋へ入れたら、しっかりと密閉して捨てましょう。

感染者の排泄物には1gあたり100万~10億個ものウイルスが含まれていると言われています。

その周辺の空気中には飛沫が浮遊している可能性があり、拭き取りと消毒が徹底されていない場合は、乾燥した後にウイルスが室内に拡散し、感染が拡大するおそれがあります。

換気を忘れずに行いましょう。

※0.1%次亜塩素酸ナトリウムの作り方
濃度5%の原液を使用した場合(市販の漂白剤はだいたい5%前後です)、1Lの水に原液を20ml入れるだけで完成です。
【3】ノロウイルスの予防法
ノロウイルス感染症では、食品取扱者や調理器具などからの二次汚染を防ぐことが大切です。

ここでは、その具体的な予防法をご紹介したいと思います。

まずは、『手洗い』です。

手を洗っていない状態では、100万個以上のウイルスが手についていると言われています。

そこから15秒間水(温水の方がより◎)で洗い流すと、約1万個程度までウイルスが減ります。

さらに、ハンドソープを使って10秒間もみ洗いし、15秒間洗い流すと数百個になり、これを2回繰り返すことで、さらに数個にまで減らすことが出来ます。

特に、調理を行う前・食事の前・トイレの後は必ず手を洗いましょう。

洗い方のポイントは、
□手のひらと甲
□指先、指の間、指のつけ根
□手首
の順番に丁寧に洗うことです!
特に親指とつけ根は、重点的に洗いましょう。

最後は、清潔なタオルまたはペーパータオルで水気を拭き取ればOKです。

そして次は、『消毒』です。
調理器具などは、洗剤を用いて十分に洗浄した後、前項でもお話しした次亜塩素酸ナトリウムでしっかりと拭くことで、ウイルスを失活させることが出来ます。

最後は『加熱』です。
一般的に、ウイルスは熱に弱いといった特徴があります。
ただし、ノロウイルスを失活させるために必要な加熱条件について、正確な数値はないそうです。

目安としては、同じようなウイルスであれば、85℃以上で、1分間以上の加熱を行えば、失活するとされています。

また、ノロウイルスの汚染のおそれのある二枚貝などの食品の場合は、中心部が85℃~90℃で90秒以上の加熱が望ましいと言われています。

※加熱によるウイルスの失活化には加熱温度と時間以外に、存在するウイルス粒子の数および環境によっても影響を受けます。
また、食品中に存在するウイルスはたんぱく質で保護されているため、失活化を確実なものとするには、より厳しい加熱条件が必要とされることが考えられます。
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
10年くらい前でしょうか。
ノロウイルス感染症が大流行し、テレビでも大きく報道されるようになりました。

その頃から、一気に“ノロウイルス”という名前が認知されるようになった気がします。

空気中に浮遊している微量のウイルスを吸い込むだけで、感染してしまうなんて、想像しただけでこわいですよね。

まして、アルコール消毒が効きにくいなんて…

しかし朗報です!
最近、ノロウイルスにも効果を発揮するアルコール消毒剤が販売されているのです!

これは、pHを調整することで、有効成分(エタノール)の効果を高めることができ、ノロウイルスのようなアルコール消毒が効きにくいウイルスなどにも対応出来るそうです。

他にも、“ノロウイルスを死滅させる新しい機能を持った給食カートを開発”というニュース記事を先日読みました。

こうやって少しずつ、ノロウイルス感染症の対策も進んできているんだな~と感じました。

まず私たちが今すぐ取り組める対策は『手洗い・うがい』です。

今までは、何気なくサササーっと済ませていた手洗いも、先ほどご紹介したポイントを意識して、少し丁寧に洗ってみてください。

手洗い・うがい、そして、元気な体でノロウイルスなんかに負けないぞ~!
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