健康コラム

no.128
テーマ:「卵」
2017年10月号
※内容は掲載当時の情報です。何卒ご了承下さい。

10月の第2月曜は「コロンブスデー」です。

これはアメリカの祝日で、1492年10月12日にクリストファー・コロンブスによるアメリカ大陸の発見および到着を祝うものだそうです。

そこで、みなさん。
コロンブスと言えば・・・?

「卵」ではないでしょうか。

今月は、コロンブスにちなんで「卵(鶏卵)」についてお話したいと思います。
【1】有精卵と無精卵
私たちが普段食べている卵には「有精卵」と「無精卵」の2種類があることはご存知でしょうか。

違いは、“受精している卵かそうでない卵か”です。

一般的にお店でよく売られている卵は無精卵で、つまり、温めてもヒヨコにはならない卵なのです。

しかし、ここで少し疑問に思うのが、なぜ受精していないのに卵が産まれるかということです。

それは、私たち人間は“産卵”と聞くと、=“出産”と思いがちですが、実は鶏にとっての産卵は、人間でいう排卵と同じだからです。

そのため、雄と雌を一緒に飼わなくても卵を産むことが出来るのです。

また、「有精卵」と「無精卵」を見分ける方法は、生卵を割り、黄身上にある直径3~4mmほどの薄くて白い輪を見てみてください。

これがはっきり、大きくなっていれば有精卵です。
ちなみに、「有精卵」と「無精卵」では味に大きな違いはありません。

栄養面においても明確な有意差は認められていないそうで、飼われている環境や餌、水などの影響を受けると言われています。
【2】卵アレルギー
食物アレルギーの中には、表示が義務化されている食品が7品目あります。
患者数の多い5品目と、重篤な症状に至ることが多い2品目からなり、卵はこの患者数が多い5品目の中に入っています。

また、小児アレルギーの中で最も多いのが卵アレルギーだと言われています。

では、どのようにしてアレルギー反応が起こるのでしょうか。

まず、人間の体には、体内に侵入してきた異物を攻撃し、それらから体を守る働きである「免疫」が備わっています。

卵アレルギーをはじめとする食物アレルギーは、アレルゲン(アレルギーの原因物質)を摂取したときに、免疫が過剰に働いてしまうことで引き起こされます。

卵の場合、そのアレルゲンになるのが、卵白に含まれる“オボムコイド”や“オボアルブミン”などのたんぱく質です。

これらが体の中で異物と認識されると、体内で「IgE抗体」というものが作られます。

この「IgE抗体」がアレルゲンと結合すると、アレルギー症状が引き起こされるのです。

特に“オボムコイド”の場合は、加熱や酵素による分解を受けても強いアレルゲン性を示すと言われています。

卵は、卵料理以外にも、揚げ物の衣や洋菓子などの菓子類、ウインナー、練り製品、パン、麺、マヨネーズなど様々なところで使われています。

とても万能で、毎日の食事に欠かすことの出来ない身近な食べ物である反面、十分な注意が必要だということが言えます。

ただし、卵アレルギーは必要最小限の除去から始め、専門医師の管理のもとで摂取量を適切に増やすことで、卵1個(約40g)を摂取可能である状態「耐性獲得」が期待できるそうです。
※自己判断で行うと危険です。必ず専門医の指示に従って行ってください。
【3】完全栄養食品
卵(卵黄)と聞くとコレステロールをイメージされる方が多いのではないでしょうか。

コレステロールは“体に悪い物”と思われがちですが、私たち人間をはじめ、動物が生きていくうえで、欠かすことの出来ない栄養素なのです。

コレステロールが不足すると、血管が破れやすくなったり、免疫機能が低下すると言われています。

さらに、卵黄にはレシチンという物質が含まれており、これは善玉コレステロールを増加させるために役立ちます。

もちろん、コレステロールの摂りすぎは体に良くありませんが、体に必要な役割も担っているのです。

その他にも卵には、体を作るために欠かせないたんぱく質や、体の器官や組織がスムーズに働くのを助けてくれるビタミンやミネラルがバランス良く含まれています。

また、たんぱく質を構成する20種類のアミノ酸のうち9種類は“必須アミノ酸”と呼ばれ、人間の体の中では合成出来ないため、食べ物から取り入れなくてはなりません。

卵には、そんなアミノ酸が理想的な割合で含まれ、アミノ酸スコア(※1)はなんと100です。
その数値は上限を100とし、数値が高いほどアミノ酸がバランス良く含まれており、栄養価が優れている食品であるということが言える。

こういったことから、卵は『完全栄養食品(※2)』だと言われています。

確かに、ヒヨコは人間のようにお母さんのお腹の中で育つのではなく、卵の中に含まれる栄養だけで成長しますよね。
そう考えると、どれだけ栄養が豊富に含まれているかが分かりますね。

※1 アミノ酸スコアとは、その食品の中でもっとも不足しているアミノ酸の割合を数値化したもの。
※2 健康を維持するために必要な栄養を豊富に含んだ食品
◇◆管理栄養士の独り言◇◆
日本では「卵」と言うと、一般的に鶏卵ではないでしょうか。

そのため、今回は卵の中でも鶏卵についてお話しましたが、世界では国や地域によって一般的に使われる卵の種類が異なります。

例えば「カモ」「ガチョウ」「ダチョウ」「カモメ」「アヒル」「ハト」「エミュー」など。

日本ではなかなか馴染みのないものもありますが、他国では一般的な卵として食べられています。
なんだか想像がつかないものもありますよね。

また、加熱していない卵はサルモネラ菌による食中毒の危険があることから、海外ではあまり食べる習慣がなく、日本人が生卵を食べていることに驚かれるそうです。

日本では、卵かけご飯なども当たり前のように食べていますよね。

実は、卵かけご飯は美味しいだけでなく、とても理にかなった食べ方だということをご存知でしたか。

お米には、必須アミノ酸の「リジン」と「スレオニン」が少々不足しています。
そこで、卵をプラスするとアミノ酸バランスが良くなるというわけなのです。

美味しい上に、栄養満点なんて一石二鳥ですね。

ちなみに、黄身を一晩お醤油につけたり、大葉やじゃこ、ゴマなどのトッピングもおすすめです。
是非試してみてください。
【コラムの無断転載は禁止させていただいております】